『サザン・コンフォート』感想とイラスト 不思議の国の州兵さん

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映画『サザン・コンフォート』のイラスト

全盛期のウォルター・ヒル唯一の日本未公開作品。戦争映画?それともお得意の男臭いアクション映画?いやいや、これは得体の知れない恐怖を描いた異界映画なのですよ。

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作品データ

『サザン・コンフォート』
Southern Comfort

  • 1981年/アメリカ/106分
  • 監督:ウォルター・ヒル
  • 脚本:マイケル・ケーン/ウォルター・ヒル/デヴィッド・ガイラー
  • 撮影:アンドリュー・ラズロ
  • 音楽:ライ・クーダー
  • 出演:キース・キャラダイン/パワーズ・ブース/フレッド・ウォード/ブライオン・ジェームズ

予告編動画

感想と評価/ネタバレ有

訓練中に湿地帯へと迷い込んだルイジアナ州兵の一分隊が、現地民のケイジャンとの些細なトラブルから人間狩りの恐怖を味わうというアクション・スリラーです。監督は『ザ・ドライバー』『ウォリアーズ』のウォルター・ヒル。

得体の知れないスリラー映画

1970年代後半から1980年代前半にかけて隆盛を極めたウォルター・ヒル唯一の日本未公開作(のちに1995年の『ワイルド・ビル』も日本未公開)として、ファンのあいだではなかば伝説と化していた『サザン・コンフォート』。ずっと気になっていたので初鑑賞してみました。

昨年HDマスターによるBlu-ray盤が発売されたのですけど、貧乏暇なしなのでクソきったね~旧盤DVDでの鑑賞です。テレビの深夜枠などで放送されたときの邦題は『ブラボー小隊・恐怖の脱出』。ビデオタイトルは『ダーティアーミー/対決!悪魔のカルト集団』。

すでになんの映画なのかよくわかりませんが、本編を観て納得いたしました。戦争映画でもアクション映画でもない、何やら得体の知れない恐怖を描いたスリラー映画。ヒルのフィルモグラフィでもかなり異質な作風で、結局みんなどう扱っていいのか頭を悩ませたわけね。

不思議の国の州兵さん

物語は訓練中のルイジアナ州兵が、沼地で迷子になって現地民(ケイジャン)のカヌーを黙って拝借。それが見つかって「わりーなバ~カ」と空砲で面白半分に威嚇。怒ったケイジャンたちから人間狩りの標的にされて「ほひ~」となるという心温まる人間賛歌。

ちなみにケイジャンとは、カナダ南東部の旧フランス植民地アカディアからルイジアナ州へと移住してきたフランス系アメリカ人のこと。無知なボクにはよくわかりませんが、アメリカという国家に帰属せず、独自の文化を守っている人たちなのでしょうね。

この映画の下敷きになったと思われるのは、アメリカのど田舎でブヒブヒ泣きながらカマを掘られるジョン・ブアマンの『脱出』で、そこに『地獄の黙示録』的エッセンスをぶち込み、最終的にジャンルを破壊する奇怪な異世界迷宮映画へと仕上げたヒルの手腕はお見事です。

「市民の平和を守るのが州兵の務めです」なんて言いながら、弱者を力で支配し、搾取する阿呆どもが浴びせられた声なき者たちからの反逆の狼煙。ヘラヘラ笑っているところをいきなり脳天吹き飛ばされるピーター・コヨーテのスローモーション。ああ~なんたる眼福。

自分たちのマウントポジションを絶対だと信じていた阿呆たちに突きつけられる形勢逆転。指揮官を失い、道もわからず、不気味な沼地のなかをあてもなく徘徊しながら、見えないケイジャンの姿に怯え、仲間割れを起こし、阿呆な醜態をさらしつづける州兵さんたち。

キース・キャラダインにパワーズ・ブース、そして『トレマーズ』のフレッド・ウォードといった州兵メンバーに加え、ケイジャン側には『48時間』のブライオン・ジェームズ、『プレデター』のソニー・ランダムという良いブサメンが揃っているのもポイント高し。

こんな暑苦しいブサメンどもが一堂に会して、ジメジメしたぬかるみのなかで繰り広げる出口のない追いかけっこ。正式な訓練を受けてきた州兵が、怪しい森のなかで現地民からいいように追いつめられ、狩られていく姿は明らかにベトナム戦争の再現でしょう。

この州兵たちが規律とか、正義とか、協調とはかけ離れたボンクラ集団なのも象徴的です。そんな彼らがまさに敵の巣のなかで、真綿で首を絞められるかのごとく追いつめられ、不安と恐怖、疑心暗鬼にかられ、発狂していく姿は滑稽であると同時にとにかく恐ろしいのです。

どこまでも続くこの地獄

得体の知れない恐怖。恐怖の対象は「ケイジャン」という明確な存在であるにもかかわらず、どこかこちらの理解を超えた存在、この世ではない異界に迷い込んでしまったような感覚があり、ライ・クーダーによるけだるいサウンドもその違和感に拍車をかけてきます。

それが最高潮に達したのは、唯一生き残ったキャラダインとブースがたどり着いた、一見平和そうに見えるケイジャンの村でのお祭り騒ぎでしょう。一見すると平和そのものの楽しげな雰囲気に映るものの、いちど芽生えた恐怖と猜疑心はけっして消えることがない。

森という異界を抜けた先もまた新たな異界でしかなかった。陽気な民族音楽も、村人たちの踊りも、彼らの視線も、解体されるブタさんも、すべては得体の知れない恐怖の続きである。恐ろしいのはこの異界がベトナムなどの他国ではなく、アメリカ本土に存在したということ。

極めつけはラストのほぼバッドエンドとしか思えないハッピーエンドでしょうね。スローで映し出されるヘリ、軍用車に書かれた「USA」の文字、そして米軍の星印には、まったくもってこれっぽっちも助かったという安堵感はない。この先も地獄は、異界は続くのか?

地味さと不気味さ、そして爽快感のかけらも存在しない不穏なエンディングなどによって、おそらくは日本公開が見送られたと思われる『サザン・コンフォート』。マイナー映画として埋もれさせておくのは惜しい怪作ですので、未見の方はぜひともご鑑賞ください。

旧盤とBlu-ray盤では画質が雲泥の差のようですので、これはキレイなBlu-ray盤でも観てみたいなぁ。思いきって円盤買っちゃうかな?

個人的評価:7/10点

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