年々、体もアゴも巨大化の一途をたどるハリウッドNo.1アゴメン俳優ベン・アフレック。そんな彼が新たに挑んだ「地味な会計士が実は無敵の殺人マシンだった系」映画。その真髄は、てめえひたすらかわいいじゃねーか!
作品情報
『ザ・コンサルタント』
The Accountant
- 2016年/アメリカ/128分
- 監督:ギャヴィン・オコナー
- 脚本:ビル・ドゥビューク
- 撮影:シェイマス・マクガーヴェイ
- 音楽:マーク・アイシャム
- 出演:ベン・アフレック/アナ・ケンドリック/J・K・シモンズ/ジョン・バーンサル/シンシア・アダイ=ロビンソン/ジョン・リスゴー
予告編動画
解説
頭脳明晰な天才会計士にして天下無敵の殺人マシンというふたつの顔をもつ謎の男の正体は、美女の隣にすら座れないかわいいコミュ障もちだったというクライムサスペンスです。
監督は『ウォーリアー』のギャヴィン・オコナー。主演は新生ケツアゴバットマンことベン・アフレック。共演に『マイレージ、マイライフ』のアナ・ケンドリック、『セッション』のJ・K・シモンズ、『ベイビー・ドライバー』のジョン・バーンサルなど。
あらすじ
田舎町で小さな会計事務所を営む、他者との接触を最小限にとどめる孤独で寡黙な男クリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)。そんな彼には裏社会の帳簿を仕切る闇の会計士と、百発百中の凄腕スナイパーという別の顔もあり、その素性も目的も謎に包まれていた。
そんな彼に、大手家電メーカー“リビング・ロボティックス”から財務調査の依頼が舞い込む。同社の経理担当デイナ(アナ・ケンドリック)とともに使途不明金の調査へと乗り出し、重大な不正の証拠を発見した矢先、調査は一方的に打ち切られてしまう。
何事も途中でやめることができないウルフには納得できなかったが、その日を境に何者かから命を狙われることに。そして謎の暗殺者の魔の手はデイナの身にまで及ぶのであった……。
感想と評価/ネタバレ多少
ただのしがないコミュ障会計士だと思っていた人物が、実は天才的頭脳と戦闘スキルを有した怪物だったという、「舐めていた相手が実は無双キャラだった」系の作品です。掃いて捨てるほどある設定ですが、掃いて捨てるほどあるということはそれだけ需要もあるということ。
そんな定番キャラクターに今回挑戦したのは、愛すべきケツアゴバットマンことベン・アフレック。掃き捨てキャラクターに彼が今回どんな命を吹き込んだのか?はたまた吹き込めなかったのか?それではさっそく『ザ・コンサルタント』の感想です。
メタボな脚本
この手の映画で常に問題となってくるのは、「実は凄かった」謎の人物の過去をいかに描くかということ。ここにちゃんとした説得力がないとただの掃き捨て映画になるのですけど、この映画はそれだけにはとどまらない謎の大量投入という暴挙に出ておるのですよね。
映画冒頭で映し出されるギャングのアジトへの殴り込みの謎。異なる時間を雑多に映し出した主人公の過去の謎。彼の行動、目的、正体の謎。彼の正体を暴こうとする財務省捜査官の謎。大企業リビング・ロボティックス社の使途不明金の謎。殺し屋の謎。協力者の謎。
これらの謎と伏線を思わせぶりにばら撒きながら進行していくこの映画。正直なんでもかんでも詰め込みゃいいってもんではなく、視点や興味が分散しすぎて結局は散漫な印象しか残らなかったというのは残念。謎の真相も言うほどたいしたものではありませんしね。
余計なエピソード、主人公ウルフの身元を捜査することになる女性捜査官の過去とか、ウルフの過去の取捨選択とか、クライマックスの「なんたる偶然!」なんかはもうちょっと熟考する余地があったかと思います。謎や含みを残したままのほうが良い場合もあるのですし。
確かにこのばら撒かれた伏線が回収されていく過程には一定のカタルシスがあるのですが、これらすべてがきちんと機能、物語上必要であったかについては疑問符が付き、ぶくぶく太った肥満映画ではなく、余計なぜい肉をそぎ落とした痩身映画を目指すべきではなかったかと。
それではこの『ザ・コンサルタント』は見苦しく肥え太ったメタボ映画として掃き捨てるべきなのでしょうか?いえいえ、掃いて捨てるにはちょっともったいない魅力があったのもまた事実。それは何かと申しましたら「萌え」。まさかの萌え要素なのであります。
ケツアゴ萌え
いったい何に萌えるんだって?なもんあーたケツアゴに決まっているでしょうが。昼はしがない田舎の会計士だけど、裏の顔は天才的頭脳と無敵の戦闘スキルを有した掃き捨て超人クリスチャン・ウルフ。彼を演じるケツアゴの天使ベン・アフレックに萌えるのです。
40過ぎのゴツいケツアゴが演じる掃き捨て超人のどこに萌え要素があるんだ?と思っているあなた。思い出してみてください。世に超人と呼ばれる方々の奥底に隠されているコンプレックスの存在を。この映画の主人公クリスチャン・ウルフにももちろんそれは存在します。
「自閉症スペクトラム」。こういう現代的問題をキャラクター設定に加えたことにより、この『ザ・コンサルタント』は凡百の掃き捨て映画とは一線を画する結果を生み出したのです。それがつまりは萌え要素。舐めていた相手が実は無双「萌え」キャラだったという新ジャンル。
無表情、ぶっきらぼう、ルーティン、こだわり。彼が劇中で主に対人関係で見せるこれらの自閉的特徴が、とにかくかわいくて萌えるのです。自閉症患者を「かわいい」などと表現することが適切かどうかはさておいて、これをゴツい40過ぎのケツアゴが演じているのがミソ。
見た目はマッチョないかつい親父なのに、眠っている女性を起こせずにモジモジしちゃうとこなんて、「いや~んケツアゴきゃわゆい♡」ってなもんです。その後に彼女と逃亡先のホテルへとしけこんだときも、隣に座ることすらできない純情奥手ぶりがたまりません。
ほかにも事件に巻き込まれて死ぬ思いをした夫婦に対する「じゃ」や、最後に黒幕と対峙したときの「知らん」など、自閉症ゆえのその場にふさわしくない言動が何やらこの映画を普通ではないものへと変換させており、適切かどうかは置いといてとにかく萌えちゃうのです。
近年を代表する自閉症的主人公映画の代表例としては、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』と『マッドマックス 怒りのデス・ロード』がありますが、この2作に勝るとも劣らずの萌えっぷりで、思わず「頑張れ!」と応援したくなっちゃうのですよね。
そして自閉症スペクトラムをただ面白かわいく描いて笑いを誘うだけではなく、それを物語のテーマとして機能させようと悪戦苦闘しているところが、この映画のなかなか偉いところ。まあそれがちゃんと機能していたかどうかについてはちょっと難ありなのですけど。
続編に期待!
自閉症という問題と闘ってきた主人公が、どんな環境で、何を教えられ、このやさしくない社会で生き延びるすべを見つけ出したのか?自閉症を抱えながら、真に求めていることとはなんなのか?萌えと同時にこれらの問題へとなんとか切り込もうとしていたのは評価できます。
まあそれに納得できるかといったら納得できないので、評価はするけど支持はしないにとどまるのですけどね。親父さんとのくだりなんて本当に問題が多すぎて複雑です。善と悪、良きことと悪しきことが複雑に絡み合ったなんともヘンテコリンな映画だと思います。
舐めていた相手が実は無双キャラだった系のなかに、自閉症という新たな武器を叩き込んで、萌えに笑いに謎に社会問題を過剰に詰め込んでぶくぶくに太った破綻寸前、突っ込みどころ満載、荒唐無稽ギリギリのヘンテコな映画だとは思いますが、ボクは好きですよ。
無表情なベンアフが。笑わないベンアフが。棒で足のすねをグリグリするベンアフが。両の指をふーふーするベンアフが。モジモジするベンアフが。百発百中のベンアフが。シラットを使いこなすベンアフが。不器用に笑うベンアフが。ベンアフの引き出しがボクは大好きです。
思いっきし続編も意識した作りとなっておりますので、ヒットの如何によっては近いうちにまたかわいいケツアゴと再会できる日が来るやもしれませんね。そのためにも皆さんどうぞこの映画を観てやってください。そして思いっきりベンアフのケツアゴに萌えてやってください!
個人的評価:6/10点
コメント
私も期待して鑑賞したけれど、あれでは続編がなければ全く不完全な内容ですよね。
コミュニケーションが苦手な割には、ディナには結構ペラペラ話すし、ルーティーンが
崩れてもいいらしい。
それともう一人の殺し屋の正体が、出てきて早々にわかっちゃう展開も気になりました。
でもベン・アフレックの風体が精神的な病を抱える男にマッチしていたのはびっくり。
ミス・マープルさん、コメントありがとうございます!
けっこう手厳しいですね。確かにいろいろ盛り込みすぎた結果、不完全な仕上がりになってしまったきらいはありますけど、ボクは意外と好きですよ、この映画。特にベン・アフレックがすこぶる良かった。自閉症の方はコミュニケーションは苦手だけどしたくないわけではないと思いますので、自分の興味がある分野やこの人ならわかってくれると思うと、わりとベラベラ喋るのではないでしょうか?あとベンアフの無駄にでかいがたいにもそれなりの説得力がありましたよね。あれはあれで彼なりの武装なのだと思います。
体もアゴも巨大化の一途をたどるハリウッドNo.1アゴメンで爆笑(笑)
なかなか面白く読ましてもらいました。
単なる無敵の殺し屋系かと思ったけど、自閉症スペクトラムも混ざっているとは驚きました。自閉症スペクトラムの子供に関わることが多いので気になります。
ドクターストレンジよりこっちの方に行った方が良かったなあ。
いごっそう612さん、コメントありがとうございます!
楽しんでいただけたようで幸いです。変な映画ではありますけど妙な面白さのある映画だと思われますので、ボク的にはおすすめですよ。確かいごっそう612さんは医療関係にお勤めだったと記憶しておりますので、なおさらおすすめかもしれません。「舐めていた相手が実は無敵の殺人マシンだった」系の映画というよりかは、むしろ自閉症スペクトラム要素のほうが大きい映画なのですよこれ。そういう問題、というか現実へとなんとか切り込もう、そしてそれをエンタメ化してしまおうという、なんとも野心的な映画だったわけですね。この『ザ・コンサルタント』を観ていごっそう612さんがどのような感想をもつのかも気になりますので、ぜひとも鑑賞していただいて、また感想を読まさせてください。ではでは。
僕はこの映画嫌いになれないというか好きです。
イコライザー的なものを期待していったのですが、確かにテイストはそうだけどまた別種のもののように感じました。
一つは意外と人間ドラマパートが長いこと。
アクションはその手のジャンルの映画としてはかなり少ない方ですよね。
主人公の境遇について時間を割いてる印象でした。
身近にアスペルガーの映画好きの知り合いがいますが、劇中のベンアフレックの特徴と一致する点がいくつかありおお!となりました。
ラストにある人物と再会するシーンですが主人公は言葉とは裏腹に顔は無表情、
それに対して相手は「久しぶりに会ったのに昨日あったみたいな挨拶するな!」
と怒っていましたが、僕の知り合いもまさにそういうことがあるそうです。
数年ぶりに会った友達に無感動な感じの挨拶をしてガッカリされるんだとか。
えるぼーロケッティアさん、コメントありがとうございます!
確かにいろいろと問題点も多い映画だとは思うのですけど、ボクもこの映画嫌いになれません。っていうか同じく好きです。ただのアクション映画というよりも、自閉症スペクトラム患者を主役としたアクション映画として非常に面白かった!この『ザ・コンサルタント』の主題、売りとなっているのはアクションよりもむしろこっちのほうなのだと思います。ですのであれだけの時間を割いたのでしょう。身近に自閉症スペクトラムの方がいると「おお!」となる映画のようですが、自閉症当事者の方はさらに「おお!」となるようです。自閉症当事者の方がこの『ザ・コンサルタント』の感想を書いている素晴らしい記事を発見しましたので、追記でリンクを張っておきますね。ぜひえるぼーロケッティアさんも読んでみてください。「おお!」となりますから。
イラストで思わず笑っちゃいました。『よーくふーふーしてね』てのが最高でした。
ぱんたさん、コメントありがとうございます!
もうあのベンアフの仕草が最高にかわいくてね!「よ~し、いっちょ始めるか!」ってときにはボクもあのルーティンを採用したいと思いつつ、いざというときには忘れているという次第であります(笑)。