『蜘蛛の巣を払う女』感想とイラスト 007への華麗なる転身

映画『蜘蛛の巣を払う女』クレア・フォイのイラスト(似顔絵)

カウンターとしての女性らしさを体現していた反ミソジニーの闘士であり闇の必殺仕置き人、背中に竜を背負った黒い天使リスベットが7年ぶりにスクリーンへと帰ってきた!……ってあれ?まさかの別人?あなた女版ジェームズ・ボンドではありませんか!

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作品情報

『蜘蛛の巣を払う女』

  • 原題:The Girl in the Spider’s Web
  • 製作:2018年/アメリカ/115分/PG12
  • 監督:フェデ・アルバレス
  • 原作:ダヴィド・ラーゲルクランツ
  • 脚本:ジェイ・バス/フェデ・アルバレス/スティーヴン・ナイト
  • 撮影:ペドロ・ルケ・ブリオッツォ
  • 音楽:ロケ・バニョス
  • 出演:クレア・フォイ/スヴェリル・グドナソン/シルヴィア・フークス/レイキース・スタンフィールド

参考 蜘蛛の巣を払う女 – Wikipedia

予告編動画

映画『蜘蛛の巣を払う女』予告2(2019年1月11日公開)

解説

背中に竜の入れ墨を持つ天才女性ハッカー、リスベット・サランデルが、アメリカのNSA(国家安全保障局)から全世界の核攻撃にかかわるプログラム奪還という大仕事の過程で、自らの過去に関係する呪われた再会を果たすというサスペンスアクションです。

スウェーデン発の世界的ベストセラー推理小説『ミレニアム』シリーズ第4作の映画化作品。デヴィッド・フィンチャーによる『ドラゴン・タトゥーの女』の続編にあたりますが、スタッフとキャストは一新。本作の監督を務めるのは『ドント・ブリーズ』のフェデ・アルバレス。

主役のリスベット役はルーニー・マーラから『ファースト・マン』のクレア・フォイへと交代。共演には『ストックホルムでワルツを』のスヴェリル・グドナソン、『ブレードランナー 2049』のシルヴィア・フークス、『ゲット・アウト』のレイキース・スタンフィールドなど。

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感想と評価/ネタバレ多少

2019年最初の劇場鑑賞作品は『蜘蛛の巣を払う女』となりました。原作シリーズは未読だし、映画化スウェーデン版三部作は第1作しか観てないし、デヴィッド・フィンチャーによるハリウッド版はあまり好きではない。そんなボクがなぜこの映画を観ようと思ったのか!?

それはほかに観たい映画がなかったから適当に決めたのだ!なんて言っては身も蓋もございませんので、『ドント・ブリーズ』で注目したフェデ・アルバレスが監督だったからということにしといてください。それでは新年一発目に適当に決めた映画の適当な感想始めるよ!

華麗なる転身

冬のストックホルム。女を喰い物にする男に制裁を加える天才女性ハッカー、リスベットのもとに、AIの世界的権威バルデル教授からある依頼が舞い込む。それは自らが開発した核攻撃プログラムをアメリカのNSA(国家安全保障局)から取り戻してほしいというものだった。

依頼を承諾したリスベットはNSAのコンピュータに難なく侵入し、目的のファイルを奪取することに成功するが、その直後、謎の襲撃者によってファイルを横取りされてしまう。実はその背後には彼女の呪われた双子の妹カミラの存在があったのだ……ってのが簡単なあらすじ。

唯一鑑賞済みなスウェーデン版ならびにハリウッド版の『ドラゴン・タトゥーの女』を常時ゆるんだ頭で思い起こしてみると、ボヤけた脳裏に浮かんでくるのはあまりに鮮烈なリスベットのパンチが効いた女性像と、とにかくダークで陰湿でひたすら長い世界観。

「それがいいんだよ~」という方にはきっと本作はお気に召さないだろう。そういうマイナー的要素を徹底して排除し、思いっきしエンタメ路線へと振りきれた「おいおい『007』かよ」的スパイアクションへと華麗なる転身を遂げたのが本作『蜘蛛の巣を払う女』なのだ。

謎が謎を呼ぶ深淵なミステリーを期待してはいけない。緊張感満点のサスペンス性はここにはない。重厚なドラマはほかをあたってくれい。ミソジニー?何それ?おいしいの?そういうややこしい問題は適当にサラッと流して、サクッとスカッと大爆発しているのが本作『蜘蛛の巣を払う女』なのだ。

大事なとこまでスッカスカ

てなわけで映画としてはそうとう観やすくわかりやすく物足らなくなっているやもしれません。そう、物足りないのだ。サクッと進行してスカッと明確でドカンと大爆発しているので、ダレ場もなく安心安全安定して観ていられるのだが、そんぶん何も心に引っかからない。

おそらく主題としてはリスベットの呪われた過去との対峙が筆頭に来るだろう。狂った父親による加虐のトラウマと、救えなかった妹への自責の念。呪われた血脈。エキセントリックな彼女を形成した家族という呪縛との対峙と落とし前が本作の主題。それ以外には何もない。

再会したミカエルとの淡いロマンスも、世界的危機ともいえる核攻撃プログラムの問題も、すべてはリスベットとその双子の妹カミラとを激突させるためのマクガフィンにすぎない。それはそれで別に構わないのですが、だったらここだけはもっとちゃんとしとこうよって話。

『007』のタイトルバックをパクって遊んでる場合ではねーですよ。んなことよりもっと大事なことがあるじゃろうが。カミラ初登場の腑抜けた演出で「こりゃダメじゃ」って思っちゃったもんなぁ。そこは大事だからサクッとスカッとサラッと流しちゃいかんってば。

最初がこれではその後も推して知るべし。どれだけハッキングの全能性でピンチを打開しようが、ド派手なカーチェイスと肉弾戦と突然スナイパー覚醒でその場を盛り上げようが、肝心の屋台骨がこんなスッカスカのカッスカスでは何も心に引っかからないのですよね。

黒も白もボヤけとる

そういう意味ではスウェーデン版ならびにハリウッド版『ドラゴン・タトゥーの女』は、好き嫌いは別としてなんとも心に引っかかる映画ではあった。その核となったのがノオミ・ラパス、そしてルーニー・マーラが演じたリスベットというキャラクターのエキセントリックさ。

本作のリスベットにその魅力が備わっていただろうか?ほぼ全能化したハッキング技術ですべてを操り、図体のデカい男たちと大立ち回りを演じ、プロ級のドライビングテクニックを披露し、もはや不死身の女ジェームズ・ボンドと化した『蜘蛛の巣を払う女』版リスベット。

それと同時に行われたのがもろくてヤバくて壊れそうなエキセントリックさの脱色。これを彼女の成長と好意的に見ることもできるだろうが、つまりは我々凡人への接近であり、もっと彼女のエキセントリックさはそのままに成長を描けんかったかなぁ、と個人的には残念無念。

そんなリスベットと本作で対を成す双子の妹カミラのキャラクター、心理、ビジュアルすべてが貧弱なのも痛恨の極み。初登場時のサラッと加減時点で「なぁ~」となったのは前述したとおりですが、なんとも薄っぺらい復讐キャラで本作唯一の主題を台無しにしていた張本人。

彼女もかわいそうな被害者のひとりにしてしまったのは脚本最大の失策でしょうな。それも含めた狂気のアルビノとして描かなければリスベットとの対決が盛り上がりません。偶然再会したのか、それともすべて彼女が仕組んだ蜘蛛の巣の罠だったのかよくわからないのも難点。

だいたい衣装が「赤」というのが個人的には絶対に納得いかん。そこは「白」でしょう!リスベットの「黒」と対を成す「白」でしょう!純白の魔女でしょう!そういう狂気があの安易な「赤」によってスポイルされ、すべてがボヤけてしまっていたような気がするのですよね。

変態を喜ばせなさいよ!

とまあ散々文句ばっかり書き連ねてまいりましたが、書いた文句ほどつまらなかったわけではなく、サクッとスカッと大爆発しているエンタメ系スパイアクションとしてはまあまあこんなもんかな?と。何も心には残らないがそういう映画として観ればいちおうの及第点。

これまでの『ドラゴン・タトゥーの女』像を打破し、新たに女ジェームズ・ボンドとして生まれ変わったリスベットを中心とした新展開の幕開けとしては悪くないのかな?それも次があったらの話ですけど。本国での評判はそうとう悪いようなので、もしかしたら次はないのかな?

次が心配だと言えば監督のフェデ・アルバレスも。まあ人間向き不向きというものがある。ひとつ当たったからってなんでもかんでも大作を撮らせりゃいいってもんではない。本作でも随所で彼の手腕が光る部分はあったのだから。ただ絶対に許せんことがひとつだけある。

全身ラバースーツによる圧縮窒息悶絶プレイに狂気もフェティシズムも官能性もま~るで感じられん!おじさん予告編でこれを観てからめちゃくちゃ期待してたのよ!何よバカ!やるならやるでもっと恥も外聞もかなぐり捨てて振りきれなさいよ!変態を喜ばせなさいよ!

といった変態の魂の叫びを吐露したところで今回の適当な感想もおしまい。お~い皆さ~ん、そんな汚物を見るような目してないでまた遊びに来てよね~♡

個人的評価:4/10点

DVD&Blu-ray

VOD・動画配信

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