『お嬢さん』(2016)感想とイラスト 男が最後に守るもの

映画『お嬢さん』チョ・ジヌンのイラスト(似顔絵)

和と洋が入り乱れた怪しい屋敷のなかで、何者かになりすまそうとした変態どもの騙し騙され化かし合いの果てに現出する真実の姿。わしゃ、わしゃただエロいことが好きなんじゃ!

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作品データ

『お嬢さん』
아가씨/The Handmaiden

  • 2016年/韓国/145分/R18+
  • 監督:パク・チャヌク
  • 原作:サラ・ウォーターズ
  • 脚本:パク・チャヌク/チョン・ソギョン
  • 撮影:チョン・ジョンフン
  • 音楽:チョ・ヨンウク
  • 出演:キム・ミニ/キム・テリ/ハ・ジョンウ/チョ・ジヌン

予告編動画

感想と評価/ネタバレ多少

日本統治下の朝鮮を舞台に、莫大な遺産を相続することになる日本人令嬢と、その遺産を狙い侍女として彼女に近づいた少女がたどる驚愕の運命を描いたエロティック・サスペンスです。監督は『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』のパク・チャヌク。

ヒイデタオウチュクシサ

いや~とんでもないエログロバカ映画が登場してきたもんです。こだわり抜かれた映像美と官能性、政治的正しさ、二転三転する脚本・構成の妙が非常に高く評価されていると思うのですけど、ボク的評価ポイントはそこじゃありません。「お前バカだろ?」の一点です。

とりわけこのバカっぷりは我々日本人を狙い撃ちしているのではないか?と思えるような限定的攻撃性で、「ヒイデタオウチュクシサデゴジャイマシュ」と観音開きに連呼したくなる恍惚にとらわれるのは必至でありましょう。

日本統治下の朝鮮を舞台に、日本人になろうとしている朝鮮人と、日本人のふりをしている朝鮮人、幼くして朝鮮へとやって来た日本人などが主人公ということもあって、セリフの大半がカタコトの日本語で埋め尽くされておるのですが、この絶妙な違和感の破壊力がまあ大変。

真面目な観客はこの違和感をマイナスとしてとらえてしまうようですが、不真面目な観客にとっては「こんな笑かせ方があったのか!」と目から鱗だったことでしょう。客観的に聞けば平均点以上の発音であるものの、ネイティブにとっては聞き逃せない絶妙のむず痒さ。

この恍惚を味わえるのは我々日本人だけであり、この映画の神髄を理解できるのもおそらくは日本人だけ。乙女の口から「朕宝」「満壺」を聞かされたいい年こいたおっさんの赤面内股悶絶ぶり。「コ」ではなく「ポ」をチョイスしているあたりに明確な攻撃性がうかがえます。

そう、この『お嬢さん』という映画は世界的には美とエロスと解放を謳った壮大なミステリーなのかもしれませんが、我々日本人限定では単なる秀でた朕宝満壺ご開陳映画でしかなくなるのです!すべての意味を破壊し、吹き飛ばし、我々を朕宝と満壺の虜にしてしまう悪魔の映画なのであります!

見えない価値

とまあ大上段に構えた妄言をのたもうたあとでなんですが、ボクはあんまりこの映画好きではないのですよね。いや、前述しましたとおり日本人を狙い撃ちしたかのようなカタコト隠語教室は最大限に舐め回しましたけど、どうにも物語のほうには乗れなかったのですよね。

まず三部構成が好きではありません。騙す側である珠子(スッキ)の視点で上月家の異様な世界と彼女の心の揺れを追った第一部は面白かったのですが、今度は騙されていると思っていた側、秀子お嬢さまの視点でそれを繰り返すまだるっこさがどうにも好きではないのです。

第一部の時点でそれぞれの心の動きはだいたい読めておりましたので、第二部におけるサプライズも「あ、やっぱりね」って感じで驚くことはなかったですし、朕宝によって支配されてきた女性の解放、反乱という政治的な正しさにも安易さの一因があるかと思われます。

最大の売りともいえるお嬢さまキム・ミニと珠子キム・テリの体を張った百合描写にしても、「お!頑張っとるなぁ」とは思うものの個人的にはそこにエロスは感じず、どちらかといったら執拗な奥歯シコシコや覗き視線のほうに「はあはあ」言っておった次第。

これはもうその手のAVにもなんらピンコとこないボク自身の性癖のなせる業でしょうが、なんというか全体的に見せすぎなような気がしますよね。あんまりどストレートに見せられるとピンコピンコこない奥ゆかしい想像する変態でありまして、見えないものにこそ価値を見いだしてしまうのですボクは。

男として守るべきもの

今年公開された『哭声/コクソン』『アシュラ』などと比類する傑作として高く評価されている本作ですが、ボク的には残念ながら前の2作ほどはハマりませんでした。どうにも昔から百合映画とは相性が悪いのですよね。

この『お嬢さん』を観ていて想起した映画に、ウォシャウスキーがまだ兄弟だった頃の出世作『バウンド』がありますが、実はあれもあまり好きではない。その原因は主人公の女性ふたりよりも、男の暴力性と情けなさと哀れさを体現しているシーザーの暴走のほうに目が行ってしまったから。

それはこの『お嬢さん』にしても同様で、ボク的にはヒデタマ百合劇場よりも、上月のおじきのすべてをエロへと帰結してしまうド変態魂と、なりきり藤原伯爵の珍宝ディフェンスに心奪われてしまった。彼らの男としてのどうしようもなさのほうに共感してしまった。

とりわけ詐欺師としての本分を忘れ、本気で秀子お嬢さまに恋をしてしまったことによりその身を破滅させていく藤原伯爵の末路には、男としていかに生き、いかに死ぬかのすべてが詰まっております。男が最後に守るべきものはなんなのかを誠実に示してくれております。

男としての最後の砦を見事に守りとおした彼の辞世の句には、同じ男として感激の涙を禁じえません。男たるものこうありたいもんです。最後まで間抜けで、阿呆で、朕宝な男の男根的矜持には、情けない男の愛らしさがあふれておったのではないでしょうか?

個人的評価:5/10点

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コメント

  1. らびッと より:

    パク・チャヌク監督の映画は毎回楽しみにしているので今作も存分に楽しませて頂きました。(1番好きな韓国映画はJSAです)
    僕は見やすい映画が好きなのでヘイトフル・エイト(あちらは6部構成ですが)にも少し似た3部構成はよかったです。
    日本語で喋ってるとこにも字幕をつけてほしいくらいでしたが多少分からなくてもストーリーは追えました。
    それよりおっしゃられているようにあのカタコトの日本語のなんとも言えないニュアンスを楽しめるのは日本語が分かる僕らの特権ですね。
    しかし日本語が分からないからって(多分)子供にあんなの読ませるなんてパク・チャヌクお前も変態だよと思いました。
    そういえば、アシュラだけまだ観てないので時間があったら見てみようと思います。

    • スパイクロッド より:

      らびッとさん、コメントありがとうございます!

      ボクはあまりパク・チャヌクの映画とは相性がよろしくないようで、手放しで称賛できるのは『オールド・ボーイ』ぐらいなのですよね。あとはこの『お嬢さん』と同じくどっか引っかかって乗れないのです。面白いことをしてるとは思うのだけどどっか乗れない。まあそういう監督って何人かいますよね。実はクエンティン・タランティーノもそのひとりで、『ヘイトフル・エイト』も面白いとは思いながら最後まで乗れなかったのですよね。

      でもホント、このパク・チャヌクという監督は尊敬すべきド変態で、この『お嬢さん』における日本語の使い方には見事にしてやられましたよね!あの微妙なニュアンスもさることながら、超絶早口言葉や、いきなりの東北弁なんかにも明確な攻撃性が感じられて、まんまと爆笑してしまいました。あの朗読会にしても、我々日本人にとっては淫靡というよりも滑稽ですよね。けっして流暢とはいえない日本語であんな文章読まれたらそら笑いますよ!日本語を理解しない外国の方があのシーンを観てどう思うのか、非常に興味があるところです。

      あ、『アシュラ』はボク的にはマジおすすめですので、ぜひ観てみてください!

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