『コブラ・ヴェルデ』感想とイラスト 狂気の天才たちの終着点

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映画『コブラ・ヴェルデ』クラウス・キンスキーのイラスト(似顔絵)
「俺はコブラだ!」そんな戯言をほざいて槍をフガフガさせているおじさんには近づかないのが賢明です。「俺はスパイクロッドだ!」と奇妙な名前で変なブログを運営しているハゲ頭にも近づかないのが得策です。両者ともに狂っておりますから。

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作品情報

『コブラ・ヴェルデ』
Cobra Verde

  • 1987年/西ドイツ/111分
  • 監督・脚本:ヴェルナー・ヘルツォーク
  • 原作:ブルース・チャトウィン
  • 撮影:ヴィクトル・ルツィカ
  • 音楽:ポポル・ヴー
  • 出演:クラウス・キンスキー/キング・アンパウ/ホセ・レーゴイ

参考 Cobra Verde (1987) – IMDb

解説

あまりやる気がなさそうに見える女性の群れのなかで、怪優クラウス・キンスキーがただひとり奇声をあげて槍をフガフガさせている歴史ドラマです。

監督は『小人の饗宴』のヴェルナー・ヘルツォーク。主演は『アギーレ/神の怒り』『ノスフェラトゥ』『ヴォイツェク』『フィツカラルド』でコンビを組んだ怪優クラウス・キンスキー。残念ながらこれがこのコンビによる最後の作品となってしまいました。

DVDタイトルは『コブラ・ヴェルデ 緑の蛇』。

あらすじ

19世紀初頭のブラジル。自らを“コブラ・ヴェルデ”と名乗る山賊のフランシスコ・マヌエル(クラウス・キンスキー)は、放浪の末にある農園の奴隷監督の職に就くが、農園主の娘を次々と孕ませたかどにより、奴隷商人としてたったひとりでのアフリカ行きを命じられる。

野心からそれを引き受けたコブラ・ヴェルデだったが、アフリカの大地で彼を待っていたのは想像もしない運命のうねりであった……。

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感想と評価/ネタバレ多少

2013年に立て続けにBlu-ray&DVDで復刻されたヘルツォークとキンスキーのコンビ作。『アギーレ/神の怒り』『ノスフェラトゥ』『ヴォイツェク』『フェツカラルド』は観たものの、なぜかこの作品だけは観ていなかったことに気づき、あわててレンタルしてみた次第。

ヘルツォークとキンスキーという、複雑な愛憎関係にあった天才ふたりの最後のコンビ作。狂気と狂気のぶつかり合いは、はたして最後に何を残したのでしょうか?

圧倒的なのに圧倒されない

巨大な自然の力と格闘する狂気の男。『アギーレ/神の怒り』や『フィツカラルド』でヘルツォークが繰り返し描いてきたテーマです。この『コブラ・ヴェルデ』も同系統の作品であり、アフリカへと渡った狂気の男が圧倒的自然と対峙する姿が描かれております。

ヘルツォークの武器とはやはり物語よりもイメージであり、大海原のすべてを飲み込む力強さや、圧倒的人間の物量作戦には目を見張るものがありまして、そういうイメージの強烈さは今作でも健在です。

しかしいまいち面白くない。あんまり乗れない。いつものようには圧倒されない。それはいったいなぜなのでしょうか?

寄る年波には勝てぬ?

イメージの強烈さは健在だと前述しましたが、では過去の傑作と比較した場合はどうなのか?ヘルツォークのあの圧倒的なパワーは?キンスキーの狂気は?

ヘルツォークのパワーもキンスキーの狂気も健在です。ですが、イメージと同じく過去の傑作と比較した場合はどうか?要するに、イメージもパワーも狂気も健在なものの、全盛期と比較してしまうと若干のパワーダウンは否めない。

イケイケの頃はけっこう適当な物語をその圧倒的パワーによって押しきれていたものが、押しきれるだけのパワーが失われてしまうと途端に物語としての粗が目立ってしまう。これまで誤魔化せていたものが誤魔化しきれなくなり、悪循環へと陥る。つまりはそういうことなのだと思います。

戦う前から負けている

具体的な例を述べさせていただくと、やはり画の力、特にロングショットのインパクトが大きく減退している印象です。ちょっとグッと来たのは旗を使った無駄に大掛かりな伝令ぐらいですかね。あとはわりと普通。群衆も数はいるけどけっこうみんなやる気がない。

キンスキーの狂気も以前のような強大な何かにガムシャラに立ち向かうというものではなく、その根底には虚無感のような運命に身を任せる諦観があり、闘うというよりかは流されている感じ。唯一やる気のない女戦士のあいだで槍をフガフガさせている姿が際立っていたぐらい。

山賊から有力な農園主へと取り入り、奴隷商人としてアフリカの地へと渡って、果ては共和国総統にまで成り上がった末にあっけなく転がり落ちる。戦って喰らいついてなんとか這い上がったわけではなく、やはり流れ流されその結果として最後も波打ち際で流されている。要は最初から負け戦というわけですな。

残念です!

衰えたなと感じさせるのは、この作品の隠れたテーマである奴隷制度の描き方についても言えることです。この問題の是非なんてものは疑いようのない犯罪なわけですけど、それを最後にキンスキー自身の口から言わせてしまうのはいかがなものか?

言葉にすることによって明確にメッセージは伝わりますけど、そのぶん安っぽくなってしまいますし、何より唐突感が否めない。え?そういう映画だったの?ていうかあんた普通に奴隷売買してたやん!元締めやん!ってな話です。

ラストで現地の少女たちが幸福そうに合唱する姿。歌の素晴らしさと映像のリアリズムはこの映画中でも屈指のものだとは思いますが、これが奴隷解放の喜びとストレートに結びつかないのも惜しい。途中でテーマがすり替わってしまっているのでなんともわかりづらいのです。

やりたいこと、やろうとしたことをある程度は理解できるものの、ピースの配置を誤って散漫な印象だけが残り、それを押しきるだけの映像と狂気のパワーも減退していたことがこの作品の失敗の要因というわけですな。

ヘルツォークとキンスキー。ふたりの狂った天才が残した最後の作品がこれとは、やはり残念で仕方がありません。

個人的評価:4/10点

DVD&Blu-ray

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