『ホワイト・ゴッド少女と犬の狂詩曲』感想とイラスト　ジャンル映画を舐めるな！

理不尽な社会への、ゆがんだ白人至上主義への批判を落とし込んだ現代的寓話。マイノリティたちの怒りの咆哮がいま響き渡る。ってあれ？まさかラッパごときで懐柔されちゃうの！？

作品情報

『ホワイト・ゴッド少女と犬の狂詩曲』
Fehér Isten／White God

孤独な少女リリと愛犬のハーゲン。ふたりが引き裂かれたことによって起こる犬たちの反乱を描いた現代の寓話です。第67回カンヌ国際映画祭にて「ある視点」部門グランプリ、そしてパルム・ドッグ賞（優秀な演技を披露した犬に贈られる賞）の二冠に輝いております。

監督はカンヌの常連で俳優としての活躍でも知られる『ジュピターズ・ムーン』のコルネル・ムンドルッツォ。主演はハンガリーの子役ジョーフィア・プショッタ。共演に『サウルの息子』のシャンドール・ジョーテールなど。

冒頭、まるで世界の終わりが到来したかのような静寂と、人っ子ひとりいない街中を自転車で走る少女と、突如としてわいてくる無数の犬畜生どもという、「借りる映画間違えたかな？」と錯覚させるSFスリラーのごとき画は抜群に良かったですね。

しかしこちらの頭部を金槌でぶん殴ってきたのは結局このオープニングだけでした。世界に居場所のない孤独な少女と、彼女の唯一の理解者といえる愛犬。そんなふたりが無理解な大人によって引き裂かれたことによって起こる悲劇。

捨てられたハーゲンが体験する、信頼していたはずの人間＝白い神から受けるご無体な仕打ち。そして復讐の悪鬼と化し、仲間の犬たちを引き連れて起こすテロリズム。リアリズムからは大きく逸脱した、まさに現代の寓話といえる説教臭さです。

一言でこの映画を要約すると、「アートぶったアニマルパニック映画」となりますでしょうかね。アートとしては中途半端だし、アニマルパニックとしても正直ぬるい。この宙ぶらりん感覚ゆえ、結局のところ犬たちの名演技ぐらいしか印象に残らんのですよね。

この映画で最大の見せ場だと言える「250匹わんちゃん大行進」にしても、文字どおり大量のわんちゃんがちょっと街中で暴れ回ってるぐらいにしか見えないというのは致命的。個別の復讐残酷描写はけっこう突っ込んで描いているのに、どうにも詰めが甘いのです。

詰めが甘いといえば、主人公リリの世界との折り合いのつけ方もまたしかり。そしてまさに寓話的な逃げだとしか思えないラストにしても同様です。だいたいここでのリリの態度がボクは気に入りません。全然ハーゲンのこと信じてないじゃんお前！

これなら『エスパー魔美』の傑作エピソード「サマードッグ」のほうがはるかに切実で、痛々しくて、考えさせられます。ジャンル映画のなんたるかも理解してしていない説教ゲイジツ野郎は、藤子・F・不二雄先生の爪の垢でも煎じて飲みやがれ！

個人的評価：4／10点

『ホワイト・ゴッド少女と犬の狂詩曲』が観られる動画配信サービスはNetflix、、プライム・ビデオ。おすすめは定額見放題のNetflix（2018年12月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください）。