最低最悪のゴミクズ映画として誉れ高い迷作『ショーガール』。20年ぶりに観たらもしかして違った評価になるかも?そう思って観てみたの。観てみたのだけど……。
作品情報
『ショーガール』
Showgirls
- 1995年/アメリカ/131分
- 監督:ポール・バーホーベン
- 脚本:ジョー・エスターハス
- 撮影:ヨスト・ヴァカーノ
- 音楽:デヴィッド・A・スチュワート
- 出演:エリザベス・バークレイ/ジーナ・ガーション/カイル・マクラクラン/グレン・プラマー
予告編動画
解説
ショービジネスの都ラスベガスを舞台に、スターダンサーとしての栄光をつかもうと邁進する女性の闘いを描いたエロティック人間ドラマです。
監督はエロティックサスペンス『氷の微笑』をヒットさせて乗りに乗っていた頃のポール・バーホーベン。主演は本作の酷評後に一時行方知れずになっていたらしい『エニイ・ギブン・サンデー』のエリザベス・バークレイ。
共演には『キラー・スナイパー』のジーナ・ガーション、『ブルーベルベット』のカイル・マクラクラン、『スピード』シリーズのグレン・プラマー、『グーニーズ』のロバート・デヴィなど。
感想と評価/ネタバレ有
その年の最低映画を決める1995年度のゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)において、最低作品賞、最低監督賞、最低主演女優賞、最低新人俳優賞、最低脚本賞、最低主題歌賞の6部門に見事輝いた最低最悪のクズ映画として名高い迷作であります。
ラジー賞史上初、受賞者が登壇してトロフィーを受け取るという珍事が発生したのも有名な話ですね。これだけでポール・バーホーベンという監督の愛すべきキャラクターがうかがえますが、「蝶々が芋虫になった気分だ」なんてコメントにはファンとしては悲しいかぎり。
しかし彼の作品を偏愛していたボクにしても、さすがにこの作品だけは擁護しかねる出来であったのも確かな事実。ほんでまあ何を血迷ったか、長らく封印していたこの珍作をおよそ20年ぶりに再鑑賞してしまったのですよね。「もしかしたら…」という一縷の望みのもとに。
最低映画は真に最低なのか?
まあ結論から申し上げてしまいますと、大きく評価は変わらない「ダメだこりゃ」映画だったのですけど、昔よりも笑って観てられたというか、言うほど最低最悪映画でもないかなぁというのが正直な感想ですね。年とって寛容になっただけかもしれませんけど。
物語はノエミという変な名前の流れ者ダンサーがラスベガスにたどり着き、ゲロって喚いて泣いて脱いで絡んでぶん殴りながら、スターダンサーの階段をのぼり詰めていく少女漫画のようなノリで、ここには深みもテーマも面白味もへったくれもありゃしません。
ショービジネスの裏側というか、そこで男によって搾取される女性という構図もあるにはあるものの、そこでなんとしてもトップへと駆け上がるという決死の覚悟はありませんし、そういうゆがんだ構図に怒りの鉄槌を下すという革命も起こりません。
このノエミという主人公はそういう汚れた世界を覗き見て、途中で怖くなって神輿を飛び降りただけ。なんの覚悟ももたないまましょうもない夢を見ていただけなのです。男への復讐として、ぶらんぶらんをちょん切るまで突っ込んでいたらバーボーベンの面目躍如でしたのにね。
バーボーベンの必殺技であるエロとグロも確かにありますが、お下劣すぎてなんの官能性もないのは痛いところ。『氷の微笑』のような悪女系サスペンスではこれが良い相乗効果となっていたものの、エロ単体としては実はまったくエロくなかったという事実が露呈していました。
ノエミを演じたエリザベス・バークレイのアホキャラも関係しているかもしれません。ジーナ姐さんとカイル・マクラクランの変態性は悪くなかっただけに、余計にこの娘の下品な軽薄さが際立っていました。最低主演女優賞&最低新人俳優賞のW受賞も致し方なし。
でもね、物語を一瞬たりとも停滞させないハイスピード演出はちゃんと健在で、とりわけ舞台裏の喧騒をテンポよく見せていく演出と編集はさすがのバーホーベン節。テンポが良すぎて一夜にしてノオミがトップスターに躍り出ている描写は少々やりすぎですけどね。
てなわけで、演出はね、こと演出に関してはそれほど間違いは犯していないと思うのですよ。ってあれ?結局のところ良かったところってここだけかな?う~ん、豪華絢爛なショーもボク的には趣味ではなかったし、う~ん、え~と、う~ん…………。
個人的評価:4/10点
コメント
ショーガールのラスト、主人公はラスベガスからハリウッドに向かったんですよ
だから逃げたというよりは、さらに上を目指した感じです!!
匿名さん、コメントありがとうございます!
何をしてでも、何を捨ててでもトップになる!という気概のもとにラスベガスで頂点を極め、次なる高みとしてハリウッドへ向かったというのならそれも理解できますが、ショービジネスの暗部や感情に任せて担がれた神輿を降りたわけですから、やはり逃避だと思うのですけどね。ヒッチハイクでつかまえた車がまたオープニングの男ってところがけっこう象徴的で、結局ハリウッドへ行ったとしても同じことの繰り返しになるだけなのではないでしょうか?
是非是非ポールバーホーベンの最新作
Elle エル をレビューして下さい!
通りすがらない奴さん、コメントありがとうございます!
『エル ELLE』は絶対に観たくて狙っておったのですけど、ちょうど公開時に体調を崩して遠出ができず、現在へと至っております。それでもまだチャンスはあります!絶対とのお約束はできませんが、タイミングが合いましたら必ず観て感想を書く所存ですので、どうぞ、どうぞしばしお待ちを!(劇場鑑賞の機会を逃したとしても、必ず自宅鑑賞はするでしょうし)
私はこの映画好きです。なんでかって言われてもわかんないんですけどね。
バーホーベン監督はスターシップトルーパーズも、トータルリコールも、押し並べてグロかったり暴力的だったりするんですが、何故か不快感が少ないというか、うあぁ。。。って思ってもまた見返したくなるんですよね、個人的に。
なんででしょね?
本作の登場人物の清々しいクズっぷり、唯一性格の良い黒人の子が不条理な暴行にあってしまう酷さ、悪趣味をあげたらキリないんですが。
でもなんか、それを見つめる監督の撮り方?なのかな。人間愛を感じるというか。
ストリッパー小屋のオヤジと太った女性が会いに来るとこなんか、好きなシーンでした。この時のエリザベスバークレーの表情も良かったと思います。
戸惑い、情にほだされそう、でも突っぱねる、、、みたいな。
基本的に残酷描写は苦手ですが、この監督さんはなんか平気だし、なんか好きです。