『イミテーション・ゲーム』感想とイラスト 抹殺された人工知能の父

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映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』ベネディクト・カンバーバッチのイラスト(似顔絵)

我々が現在あたりまえに使用しているコンピュータの基礎を作り、大戦中も多くの人命を救ったアラン・チューリングという男。彼の偉業は、功績は、なぜ後世に広く伝えられなかったのか?話せば長くなるのです。

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作品情報

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

  • 原題:The Imitation Game
  • 製作:2014年/イギリス、アメリカ/115分
  • 監督:モルテン・ティルドゥム
  • 原作:アンドリュー・ホッジス
  • 脚本:グレアム・ムーア
  • 撮影:オスカル・ファウラ
  • 音楽:アレクサンドル・デスプラ
  • 出演:ベネディクト・カンバーバッチ/キーラ・ナイトレイ/マシュー・グード/チャールズ・ダンス/マーク・ストロング

参考 イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 – Wikipedia

予告編動画

解説

第二次大戦中のイギリスを舞台に、政府の極秘チームへと召集された困った天才ちゃんの隠れた偉業と忘れられない想いを描いた戦争伝記ドラマです。

監督は『パッセンジャー』のモルテン・ティルドゥム。本作の脚本は映画化されていない優秀な脚本を発掘するプロジェクト「ブラックリスト」2011年版の第1位に輝いており、晴れて今回映画化される運びとなりました。

主演は『ドクター・ストレンジ』のベネディクト・カンバーバッチ。共演には『危険なメソッド』のキーラ・ナイトレイ、『ウォッチメン』のマシュー・グードなど。おっさん俳優好きとしては、『チャイルド44 森に消えた子供たち』のチャールズ・ダンスと『キングスマン』のマーク・ストロングの渋さがたまりません。

あらすじ

1951年。数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)の家が何者かによって荒らされ、ふたりの警官が捜査に当たることに。取り調べを受けるチューリングは、ブレッチリー・パークで働いていた衝撃の過去を語り始める。

1939年。ドイツ軍と戦う連合軍にとって敵の暗号機“エニグマ”解読は勝利への絶対条件であった。エニグマ解読のためにMI6に集められたさまざまな分野の精鋭たち。そのなかに若き天才数学者アラン・チューリングの姿もあった。

しかし協調性に欠ける彼は共同作業に加わろうとせず、暗号解読装置“クリストファー”の設計に没頭する。彼の唯一の理解者といえる女性ジョーン(キーラ・ナイトレイ)の計らいにより、なんとか周囲の協力を得、エニグマ解読へあと一歩と迫るチューリングだったが……。

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感想と評価/ネタバレ有

ナチス・ドイツによる難攻不落の暗号器“エニグマ”。その解読へと成功したイギリスのチームの苦難と努力と葛藤、スリルとサスペンス、たまにはアクションもあったり?なんてエンターテインメント大作を想像しておったのですけど、実際はさにあらず。

不勉強ながらまったく存在を知らなかったアラン・チューリングという孤独な天才の、あるふたつの問題に起因した困難な人生を描いた悲喜劇だったのですね。笑える面白さもあるんですけどけっこう痛いですよ、これは。

アラン・チューリングとは?

それではアラン・チューリングとはどういう人物だったのでしょう?1912年のイギリスに生まれ、若い頃から数学と科学に抜群の才能を発揮。1936年に論文「計算可能数について―決定問題への応用」で仮想機械“チューリングマシン”を発表。

大戦中はドイツ軍によるエニグマの暗号解読に従事。戦後もさまざまな大学で研究を続けるが、1952年にある罪で逮捕。2年後の1954年、42歳という若さで死去。青酸中毒による自殺と断定された。

とまあこんな感じの人物だったのですけど、さっそくのネタバレをお許しください。このチューリングが抱えるふたつの問題とはつまり、アスペルガー症候群とホモセクシャル。彼が逮捕されたある罪とは同性愛の罪だったのです!

驚くべきことに、当時のイギリスでは同性愛者は風紀を乱す犯罪者だったのですね。現代では考えられない罪状ですが、これが当時の現実なのです。これにより、彼の偉大な功績は闇へと葬り去られることとなります。

参考 アラン・チューリング – Wikipedia

苦難の天才の成長物語

それでは映画の話に戻りましょうか。コミュニケーションとセクシャルの両面で問題を抱えていたアラン・チューリング。

そんな彼が他者との接触でドン引きの困ったちゃんぶりを披露しながらも、周囲との摩擦のなかで人を知り、知ったがゆえにより苦しみ、忘れられない過去への想いの渦のなかで、不寛容な社会から抹殺される。そんな、そんな悲しいお話なのです。

もちろん、ドイツ軍最高の暗号装置エニグマ突破の過程を描いた、スリリングなエンタメ作品としても十分評価に値しますけど、やはりこの作品はチューリングという孤独な天才の苦難の日々にこそ意味があるのです。

当時はまだ認識されていなかったアスペルガー症候群という障害。それを抱えるチューリングの言動の破天荒さ、変化、成長を面白さの上にかわいさを上乗せながら、物語の展開を握るキーとして作用させる。

エニグマ突破のきっかけも、他者との距離感や、人の心の機微を理解したからこそのものですし、突破以降の苦渋の決断もまたしかり。このへんの関連づけは非常にうまかったですよね。

我が青春のクリストファー

ところで、彼がエニグマ解読を通して真に解明し、理解したかったこととはいったいなんだったのでしょうか?

あたりまえのことを理解できない彼が、誰にも解けない暗号を解読する。その先に求めていたものは、普通の人なら誰もがもっているであろう共感能力。要するに、「人の心」だったのではないでしょうか?

そう、自分に何も告げずに彼方へと去った、あの人の気持ちを知るために。

この届かぬ想い、忘れられぬ過去のせつなさこそがこの作品のミソですよね。どんな偉業を成し遂げようが、困ったちゃんであった自分を受け入れてくれる友人を手に入れようが、彼の心をとらえて離さなかったのはただこの一点のみなのです。

ああ~我が青春のクリストファー。

現代的多様性

と、ここまでは褒めて上げて讃えてまいりましたけど、この作品に唯一の不満を述べるとすれば、やはり画の弱さでしょうね。

脚本の精緻さに比して、どうしても映像の凡庸さが目についてしまう。映画の良し悪しはドラマではなく画の力にあると勝手に思い込んでおりますので、傑作だとする評価にはとりあえず異を唱えておきます。

現代の我々が日常的に使っているコンピュータの基礎を作り、エニグマ突破によって1千万人以上の人命を救ったアラン・チューリング。彼の功績が広く世間に知られるようになったのは近年になってからですが、ボクのようにこの映画で知る人も多いことでしょう。

およそ罪とは思えない罪によって抹殺された彼の名誉を回復する。確かに不満はありますが、これは実に現代的な映画だったのではないでしょうか?

個人的評価:7/10点

DVD&Blu-ray

VOD・動画配信

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コメント

  1. ダムダム人 より:

    この作品は偶然公開をしりました。
    かなり昔、ヤングジャンプに彼の功績を描いた作品を
    観たことが有ったので、かなり楽しみにしていました。
    彼の苦悩を描きながら、エニグマへの対抗マシンを作るという
    展開は私的にはちょっと物足りない感じでした。
    (もう少し解決の糸口に対する話を描いて欲しかったのですが
    それだとあまりにも堅苦しいから無理でしょうね?)
    とは言えかなり満足しましたが…
    見終わった後、サントラが販売されていたので、
    お金を下ろして買いました。
    (マッドマックスも欲しかったのですが、国内版はなかった様です)
    ところで、livedoor プロフィールに使われているイラストは
    イレイザーヘッドの「スパイク」でしょうか??

  2. スパイクロッド より:

    ダムダム人さん、再度のコメントありがとうございます!
    なるほど、そんな漫画があったのですね!知りませんでした。
    ボクも想像していた映画とはかなり違った内容でしたけど、
    アラン・チューリングという人物に焦点を絞ったこの内容も、
    少なからず不満はあるものの十分に満足でしたね。
    レンタルも解禁されましたので、もう一度観ようかと思っております。
    ボクの自画像に関しての質問ですが、
    ご指摘されたとおり『イレイザーヘッド』のスパイクであります。
    本当はHNもスパイクだけで行こうと思っていたのですけど、
    以前のブログではすでに使われておりましたので、
    スパイクにちなんだおもしろい単語はないかと探した結果、
    「釘バット」という意味のスパイクロッドになった次第であります。
    ちなみに『イレイザーヘッド』はマイフェイバリットムービーなのです。

  3. ダムダム人 より:

    やはりそうでしたか!
    この作品についても、かなり語りたい事があるのですが、
    それはいずれ。
    この作品のお話もいつかされるのを楽しみにしています。
    ※私的には「新婚さん」と「妊婦さん」には絶対見せては
     いけない作品だと思っています。

  4. スパイクロッド より:

    ダムダム人さん、コメントありがとうございます!
    やっぱりわかる人にはわかるみたいですね♪
    ボクもこの映画については山ほど語りたいことがあるので、
    いずれこのブログでも取り上げるつもりです。
    どうぞその時まで気長にお待ちください。
    ※情けない男の逃避以外の何ものでもない作品ですからね、
    やはり新婚さんと妊婦さんは観るべきではありません。
    隣の旦那のことが信用できなくなりますから(笑)