『レディ・ガイ』感想とイラスト 大事なアソコのちょん切り合い

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デカ鼻つけヒゲぶらんぶらんを引っ提げて、どこからどう見ても男装した女にしか見えないミシェル姐さんの努力をちょん切った、シガニー姐さんの大事なアソコもぶった切ってやる!

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作品情報

『レディ・ガイ』

  • 原題:The Assignment
  • 製作:2016年/アメリカ/96分/R15+
  • 監督:ウォルター・ヒル
  • 脚本:ウォルター・ヒル/デニス・ハミル
  • 撮影:ジェームズ・リストン
  • 音楽:ジョルジオ・モロダー/ラネイ・ショックニー
  • 出演:ミシェル・ロドリゲス/シガニー・ウィーバー/トニー・シャルーブ/アンソニー・ラパリア/ケイトリン・ジェラード

参考 レディ・ガイ – Wikipedia

予告編動画

解説

性別適合手術によって男から女に変えられてしまった殺し屋の、怒りの復讐劇を描いたサスペンスアクションです。

監督は『ストリートファイター』『ウォリアーズ』などで知られる男臭いアクション界の巨匠ウォルター・ヒル。主演は『ワイルド・スピード』シリーズのミシェル・ロドリゲスで、男性時代も特殊メイクによってミシェル本人が演じております。

共演は『エイリアン』シリーズのシガニー・ウィーバーで、監督ウォルター・ヒルとはもう長い付き合い(ウォルター・ヒルは『エイリアン』シリーズのプロデューサー)。ほかには『1408号室』のトニー・シャルーブ、『アナベル 死霊人形の誕生』のアンソニー・ラパリアなど。

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感想と評価/ネタバレ有

凄腕の殺し屋がマッドサイエンティストの手によって女性の体へと改造されちまった!?という頭おかしいとしか思えない設定がキラキラまぶしく期待大だったのですが、残念ながら期待したような珍作ではなく、普通にダメなほうの珍作でおおいにガッカリ。

「ウィルター・ヒル復活!」と一部では絶賛された前作『バレット』もボク的にはさっぱりだったので、「もうこの人映画撮らなくてもいいんじゃね?」なんて思っている次第。昔は大好きだっただけに、これ以上老醜をさらしてほしくはないのですよね。

姐さんのぶらんぶらん

凄腕の殺し屋フランク・キッチン。マフィアのボス、オネスト・ジョンからの殺しの依頼に彼の街を訪れたフランクだったが、実はその依頼はフランクをおびき出すための罠であり、不意を衝かれた彼は気絶させられ、オネスト・ジョンに拘束されてしまう。

どこかの安ホテルで目を覚ましたフランクは、すぐに自らの体の異変に気づく。あるはずのものがなく、ないはずのものがある!どっからどう見ても女の体だ!なんと眠っているあいだに彼の体は性別適合手術によって女性へと変えられてしまっていたのだ!

う~んなんと素晴らしく阿呆なプロットであろうか。素敵に狂った珍作臭がプンプンにおってきそうですが、実際の中身はすかしっ屁程度。確かにくせーことはくせーが目にくることはない。鼻止まり。っていうか珍作好きとしてはこの中途半端な臭さは逆に印象悪いよね。

たとえば本作の主演ミシェル姐さんは、デカ鼻つけヒゲ立派なイチモツまでぶらんぶらんさせてやる気満々の男役を演じているわけですが、何をどう見ようが男装した女性にしか見えない現実と理想とのギャップが見るに堪えなくて、頑張れば頑張るほどスベっている有り様。

普通の男だった頃の全身は見せないか、CGによってうまいこと処理したほうが鼻で笑われることもなかったとは思うのですが、1970年代を主戦場としてきた意地として生の質感にでもこだわったのですかね?それによってリアリティラインが総崩れしては元も子もないのだが。

喋ってばかりで職務怠慢

まあ阿呆な設定と間抜けな男装を逆手にとった生々しいバイオレンスへと振りきれていたら、「いよ!ウォルター・ヒル!」との掛け声のひとつもかけられたのですが、アクションというよりかはヘタクソなサスペンスにしかなっとらんのはなんなんじゃろね?

フランクのぶらんぶらんを勝手にちょん切った張本人、Dr.レイチェルの取り調べによる回想形式で物語の詳細を見せていく本作。にしては視点が散漫で、フランクとレイチェルのダラダラしたひとり語りと面倒臭い自分語りが交錯しながらすべてをセリフで説明していく芸のなさと鬱陶しさよ。

んなウダウダしたお喋りはええから早よ血みどろアクション見せんかい!と温厚を絵にかいたようなボクもイライラで汚い言葉をまくしたててしまうのですが、待てど暮らせど期待した血みどろバイオレンスアクションはとんと顔を見せない。撃って、吹っ飛んで、死んでるだけ。

たいしたピンチすらない始末で、これでは女性の体へと性別適合手術された設定がまったく活かされておらん。ピンチ、敗北、はたまた複数の男によってやられちゃうとかいう屈辱からの逆襲がないと嘘でしょ。オスであることの誇りを蹂躙されるまでいかないとぬるいでしょ。

アイデンティティのちょん切り合い

オスであることを自らの誇りとして暴力を飯の種としてきた男(そういう過去の描写が希薄なのも難点)が、その象徴であるぶらんぶらんを狂った女医によってちょん切られ、生きづらい女へと変えられ、彼女の復讐に対する復讐返しを行使する映画、それが『レディ・ガイ』。

だとしたらちょん切られたことによる変化、苦悩、葛藤、そして受容を描かないとならないのに、どうにもこの映画はそのへんが中途半端。愛した女の裏切りとか、出会った犬とか、そっち方面で活用できそうなアイテムも用意していたというのに、ただあるだけで終わる始末。

だったらアクションぐらいは魅せてくれよと思っても、前述したとおりたいしたピンチもないままただ撃って、吹っ飛んで、死んでるだけ。じゃあこの映画にいったい何があるの?と申したら、自らのアイデンティティのちょん切り合いによる喪失感だけ。

オスである誇りをちょん切られたフランクと、医者である誇りをちょん切られたDr.レイチェル。その誇りをちょん切られた先に残るのは自分が女であるという事実だけ。要は、女性であることが生きづらさへとつながる現代社会を浮き彫りにしようとしていたわけね。

常に男の格好をしているDr.レイチェルには何か秘密でもあるのかな?と思っていたら、女であることを理由に正当に評価されないことへの反抗とコンプレックスだった。つまりこの映画はアクションでもなければサスペンスでもない、ジェンダー論映画だったというわけ。

このテーマに関して異論はないし、男臭いアクション映画を得意としてきたウォルター・ヒルがこれをやる意義も認めるのですが、映画として面白くなければその裏テーマも水泡に帰す。政治的正しさと映画的面白さはまた別の話。映画とはまず何より面白くなくちゃね。

個人的評価:3/10点

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コメント

  1. star より:

    更新お疲れ様です。

    最近あまりコメント出来ず申し訳ありません。
    というのも、スパイクロッドさんのレビューは基本ネタバレ全開なので(笑)、
    出来る限り自分が観てからレビューを拝見しようと思っていたら、中々鑑賞作品に出会えずという体たらくでありまして。

    ちなみに、この作品も実は未見なのですが、当初はそのぶっ飛んだ発想に鑑賞予定でいたのですが、余りの評判の悪さにまあ観なくてもいいやとなってしまいまして。

    レビューを拝見する限り、やっぱり微妙だったようですね。
    おっぱいの付いたイケメンことミシェルの兄貴を男から女に作り替えられた存在にするのであれば、やはり内容や展開ももっと突き抜けてぶっ飛んだものにすべきですよねえ。

    • スパイクロッド より:

      starさん、コメントありがとうございます!

      いろいろ書きたいことを考えるとどうしてもネタバレになってしまうので、なんか最近は「ネタバレ有」があたりまえのようになってしまいました(笑)。反省しつつもこの方針はたぶん変わんないでしょうね。そんなボクでも今後ともお付き合いいただけたら幸いです。

      で、この『レディ・ガイ』という映画なのですが、まあ記事本文でも書いたとおり設定負けしちゃったような尻すぼみ映画で、こんなバカバカしい設定なのに全然バカバカしい方向へと振りきれない!どゆこと!?って感じでいまいち乗れませんでした。ミシェル姐さんがヒゲやら鼻やらぶらんぶらんを付けてミシェル兄貴になる、しかもどっからどうみても「女」って時点でほぼギャグ映画なんですから、それに見合った方向へと突き抜けてほしかったもんですわ。