およそ20年ぶりに公開される続編。また新たな独立記念日が上書きされるのであろうか?つい先日にはイギリスさんも勝手に独立記念日を叫んでおったな。むむむ。このままでは毎日が独立記念日になってしまうぞ!?
作品情報
『インデペンデンス・デイ』
Independence Day
- 1996年/アメリカ/145分
- 監督:ローランド・エメリッヒ
- 脚本:ディーン・デヴリン/ローランド・エメリッヒ
- 撮影:カール・ウォルター・リンデンローブ
- 音楽:デヴィッド・アーノルド
- 出演:ジェフ・ゴールドブラム/ビル・プルマン/ウィル・スミス/ランディ・クエイド/ジャド・ハーシュ/マーガレット・コリン/ヴィヴィカ・A・フォックス
解説
ヒューマンミューティレーションされた親父のトラウマと復讐心は巨大空母をも呑み込むという、まさに窮鼠猫を噛むを地で行ったSFアクション超大作です。
監督は続編である『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』が控えるローランド・エメリッヒ。主演は『ザ・フライ』のジェフ・ゴールドブラム、『ロスト・ハイウェイ』のビル・プルマン、『スーサイド・スクワッド』のウィル・スミス。
あらすじ
アメリカの独立記念日を間近に控えた7月2日。直径24キロメートルにも及ぶ巨大な円盤型宇宙船が世界中の主要都市上空へと出現。合衆国大統領ホイットモア(ビル・プルマン)は異星人との交信を試みるも失敗に終わり、世界中は大混乱へと陥る。
そんななか、ケーブルテレビの衛星技師デイヴィッド(ジェフ・ゴールドブラム)は衛星信号に紛れ込んでいたノイズが、異星人間での攻撃指令、つまりはカウントダウンであったことを発見。そのことを大統領へと報告するものの、時すでに遅しだった。
ついに始まった一斉攻撃によって主要都市は壊滅。戦闘機による反撃も敵のバリアーに阻まれ、ロサンゼルスへと向かった海兵隊航空部隊もヒラー大尉(ウィル・スミス)を残して全滅。絶体絶命の状況のなか、世界は7月4日を迎えるのであった……。
感想と評価/ネタバレ多少
国民投票によってEUからの離脱が決まったイギリス。離脱派の中心人物であるイギリス独立党のファラージ党首は、「我々の歴史的な独立記念日(Independence Day)だ!」と勝利の雄たけびをあげておりました。
この結果がイギリスにもたらす事態、世界中に与える影響はとりあえず置いといて、自由と独立はある意味において人類永遠のテーマ。先行き不透明とはいえ、この国民投票の結果には素直に「すげえ!」と思ってしまった次第。
というわけで、やや強引ながら自由と独立映画『インデペンデンス・デイ』の感想です。20年ぶりの続編である『リサージェンス』への復習も兼ねて再見したのですけど、なんか思いがけずタイムリーな鑑賞になってしまいましたね。
エメリッヒにとってのSFとは?
地球の主要都市上空に不気味な雲とともに出現した首が折れそうになるぐらい巨大な円盤型宇宙船。この圧倒的ビジュアル。『エクス・マキナ』の感想で「SFとはすなわち画である」と書きましたが、実はエメリッヒもそのことをよく理解している。
『エクス・マキナ』のように静謐でエロチックな画づくりとは真逆と言ってもよいでしょうが、SFとして魅せるべきところ、やりたいことが非常に明確でわかりやすい。つまり、誰も見たことのないようなでっかい映像を撮りたい!
巨大な宇宙船(シティ・デストロイヤー)群。質量が月の1/4にも達するマザーシップ。そして破壊!破壊!破壊のかぎり!誰があそこまで粉々に吹き飛ばされるホワイトハウスを想像した?こんな映像、誰も見たことなかっただろ?
誰も見たことのないスケールのでっかい映像。それがすなわちエメリッヒにとってのSFであり、映画なのです。確かに現在の感覚では粗さも目立ちますが、やはりこの破壊のスペクタクルには確固たるエクスタシーが備わっている。またはオーガズムが。
思わずイッちゃいそうになるぐらいの性的快感を伴った破壊映像。不謹慎な話ながらこれこそがこの映画の醍醐味。でもそれだけだと叩かれちゃうので、ご無体な破壊のかぎりを帳消しにする言い訳もちゃんと用意されておるのです。
言い訳ヒューマニズム
ご無体ハリウッド超大作におけるエクスキューズ。簡単に要約してしまうと取ってつけたようなヒューマニズムと相成ります。『プライベート・ライアン』なんかを思い出してもらうとわかりやすいかな。実はエメリッヒの映画はこれの宝庫なのです。
これの味つけに失敗すると例のディザスタームービー群のようになってしまうのですけど、この『インデペンデンス・デイ』はけっこう悪くない。っていうかちょっとグッとくる。群像劇のかたちをとった家族の愛と絆のドラマ。
想いはあるのに別れてしまった元夫婦の復縁。軍人とストリッパーとの愛。思いがけず信心を取り戻すぶつくさ親父。愛する子供たちに華々しい雄姿を見せ、現実か妄想か知れない復讐心を晴らした呑んだくれ親父。そして大統領家族の別れ。
これの味つけがどれもこれも間違ってない。っていうかいい。特にホイットモア大統領とその夫人との別れはこれが意外と上品な演出なの。娘の使い方も涙を誘う。いやホントに。恥ずかしながらおじさんもうちょっとで泣くとこだったのよ。
胸熱演説映画
そしてその後の演説映画の流れを作ったと言っても過言ではない、ビル・プルマン演じるホイットモア大統領による胸熱の名演説。これは吹き替えではなく絶対の絶対に字幕版で観るべき名シーンですね。危うくどこぞへ出撃しそうになってしまいます。
指導者の演説。良きにつけ悪しきにつけ、カリスマ的魅力をもった指導者の演説は民衆の心を鼓舞する。先日の広島でのオバマ大統領しかり。『帰ってきたヒトラー』で現代によみがえったヒトラーしかり。『パシフィック・リム』のペントコスト長官しかり。
この映画におけるホイットマン大統領、ビル・プルマンにそれだけのカリスマがあるとはとうてい思えませんが、この瞬間、最後の「インデペンデンスデイ!」の瞬間、彼は世界の偉大な指導者として光り輝いていた。この瞬間だけですけどね。
大味を極める
圧倒的スケール感、破壊のエクスタシー、言い訳のドラマ、胸熱の演説。傑作になりえる条件は揃っていた。しかしこの作品は傑作にはなれなかった。その理由はあえてここに長々と書くこともないでしょうね。基本的な物語があまりに大味すぎた。
突っ込みどころが贅沢すぎて、映画としてのリアリティが瓦解してしまっておるのですよね。加えて莫大な予算をかけた完全無欠のA級作品だというのに、それをそう感じさせないB級感が作品全体を包みすぎている。要するにスチャラカ映画。
近年の『ホワイトハウス・ダウン』なんかでもその傾向は顕著でしたけど、良い意味でも悪い意味でもこれがエメリッヒ作品の特徴。大味を極めたスチャラカさ。でもそれゆえにとっても観やすいのも事実。大味で、お気楽で、B級で何が悪い?
つまりはどんなに突っ込みどころが満載でも映画に愛嬌があるということ。来月公開の続編『リサージェンス』。海外メディアではすでに「惑星がぶつかるほどの時間と金の無駄」などと叩かれておるようですけど、だから何?
お前らエメリッヒの映画に『2001年宇宙の旅』『ゼロ・グラビティ』『インターステラー』のような壮大な芸術性でも期待してるの?エメリッヒの映画は壮大な時間と金の無駄を楽しむものでしょう?んなこと百も承知で映画撮ってんのよあの人は。
個人的評価:6/10点
DVD&Blu-ray
VOD・動画配信
『インデペンデンス・デイ』が観られる動画配信サービスはU-NEXT、Hulu、TSUTAYA TV。おすすめはともに定額見放題のU-NEXTとHulu(2018年12月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください)。
コメント
この前字幕版を再見したんですが、初見(吹き替え版)の記憶よりよっぽど楽しめました。
ホント、愛嬌のある作品ですよね~。私も家族ドラマにはウルっときたクチです。
演説シーンも何気に熱くて、ツッコミどころやご都合主義満載でもいいじゃない!と思えてきます。
最新作も模型を使ってるんでしょうか。やっぱりフルCGかな?
娯楽作として楽しめればどちらでもいいけどね。
宵乃さんコメントありがとうございます!
ボクも何度も観ているというのに、実は吹き替え版でしか観たことがありませんでした。ですので字幕版で観たのは今回が初めてなのです。結果は大正解でしたね!字幕版で観たほうがはるかに面白い!特に大統領の演説シーンは胸熱でしたね。そういう肝心なシーンをしっかりと作っているから、細部(ではないような気もするが…)の突っ込みどころも許せてしまいます。
続編である『リサージェンス』の日本公開もいよいよ迫ってきましたが、本国アメリカでの評価、ならびに興業は惨憺たる有り様のようですね。でも観ますけどね。大爆笑できるかもしれないし(笑)。
こんばんは! 私この映画ははるか昔に見てるのですが、ビル・プルマンが息子に「さぁ、これで友達に堂々とお父さんは俳優だ!って言えるぞ」と言ったという逸話の方がめっちゃくちゃ印象に残ってます。
というのも20年くらい前以上のビル・プルマンっていかにもいい人っぽいのですが、「いい人いい人どーでもいいひと」を地でいくような、情けない役が多かったのですよね。
「めぐりあえたら」では婚約者をトム・ハンクスにもっていかれるし、「ラストセダクション」では妻にそそのかされてヤクの運び屋までやったのに、全部妻に持ち逃げされ妻を追い詰めたと思ったら殺されちゃうし。
「あなたが寝てる間に」で主役のサンドラ・ブロックとくっついた時には思わず良かったね~~と落涙しそうになりましたよ。
なんとなくビル・プルマンは気になるので、リサージェンスも観に行こうかと思ってますが、一作目もおさらいしておこうかなぁ。
あ、ちなみに(続投スミマセン)私はオバマ氏が広島訪問した翌日、彼のツイッターにOMDのエノラ・ゲイのPVを投稿したひねくれもんです。 もちろん、トランプさんにも投げつけておきました。
広島の高校の吹奏楽部がエノラ・ゲイでも演奏して出迎えればいいのにと思いました。オランダの地方自治体がロシアのプーチン出迎えるのに信号から横断道路まであてつけで虹色にしたように。
なんか素直になり切れませんでした。
れんかさんコメントありがとうございます!
ビル・プルマンってホントにそんなイメージでしたからね。『冷たい月を抱く女』なんかもそんな役どころでした。でもこの『インデペンデンス・デイ』の戦う大統領役でブレイクしちゃったもんだから、今度はそのイメージに引っ張られすぎて、結局のところはこの一本で終わったという印象しか残らないこれまた悲しい結果に。でも続編の『リサージェンス』ではヒゲを生やし、髪形も変え、なんともいえないやさぐれ感があってけっこうよかったですよ。映画自体はあまりおすすめできる仕上がりではありませんが、どうぞビル・プルマンの雄姿だけでも拝みに行ってやってください(笑)。
オバマ氏やトランプ氏へのOMD投下事件。いやいや、お気持ちはわかりますよ。どのツラ下げて?っていうかまず謝罪だろ!という気持ちはボクにもありますが、時のアメリカ大統領が最後の花道を飾るためのパフォーマンスだったとはいえ、直に広島を訪れ、明確な謝罪ではなかったものの犠牲者への哀悼の意を示し、被爆者の方と抱き合われる。これだけでも十分に意味があったし、勇気ある行動だと思いました。これをきっかけに広くアメリカ国民にも広島・長崎への原爆投下の真実が伝わればよいのですけど、次の候補があれじゃなぁ……。
もう20年も前の作品ですかぁ…。
ハリウッド映画は、その当時の米国の政治文化がもろに反映されますが、この作品の当時はまだ米国も冷戦勝利・湾岸戦争勝利の余韻に酔いしれてますね。
この後、911、リーマンショック、イラク戦争、中露台頭…。20年で、思えば遠くまで来たもんだ…。そんな感慨を覚えます。
続編かぁ…。地上波で見るかも(苦笑)。
ハリーさんこちらにもコメントありがとうございます!
時のたつのは早いもので、もう20年もたっちゃったんですよ。そらボクも年取るはずだわ(笑)。この時代は何やら強い大統領像、戦う大統領像というものが求められていたのでしょうかね?同時期に公開されたウォルフガング・ペーターゼンの『エアフォース・ワン』なんかもそうでした。この頃ははまだ政治に、指導者に夢と理想を託すことができたのでしょうね。それがハリーさんおっしゃるところのさまざまな新たな戦争を通過し、ついにはトランプみたいな輩まで出てきてしまった。はてさてこの先アメリカさんはどうなっていくことやら。続編はそうですね、地上波で十分だと思いますよ(笑)。
追伸
トランプが大統領になったら、「ニューヨーク1997」「エスケープフロムLA」の軍国アメリカが笑えなくなりそうです(汗)
ハリーさん、それはそれでちょっと見てみたいような気も(笑)。いよいよスネークが活躍できる世界が到来するわけですからね!って危ない危ない(笑)。