『ハードボイルド 新・男たちの挽歌』感想とイラスト 帰れジョン・ウーあの頃へ

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映画『ハードボイルド 新・男たちの挽歌』トニー・レオンのイラスト

『男たちの挽歌』ってタイトルが付いてるけど、監督と主演が同じだけで、なんの関係もないんだよね。いわゆる『沈黙の…』と一緒。ってんなもんと一緒にするんじゃねえ!こっちゃ問答無用の傑作だい!

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作品情報

ハードボイルド 新・男たちの挽歌

  • 原題:辣手神探/Hard Boiled
  • 製作:1992年/香港/127分
  • 監督:ジョン・ウー
  • 脚本:バリー・ウォン
  • 撮影:ウォン・ウィンハン
  • 音楽:マイケル・ギブス
  • 出演:チョウ・ユンファ/トニー・レオン/アンソニー・ウォン/テレサ・モウ/フィリップ・チャン/フィリップ・コク

参考 ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌 – Wikipedia

解説

警察とヤクザのちょっと火薬の量を間違えたド派手な抗争の渦中で、無関係な一般人が一種のショーのように巻き添えで死んでいく、鬼畜香港ノワールです。

監督は『男たちの挽歌』シリーズのジョン・ウーで、ハリウッド入り直前に撮られた香港映画界への置き土産。主演は『友は風の彼方に』のチョウ・ユンファと、『非情城市』のトニー・レオン。

共演には『エボラ・シンドローム 悪魔の殺人ウィルス』のアンソニー・ウォンが悪役としてキレッキレの演技を披露し、日本からは若き日の國村隼が『哭声/コクソン』に先駆けて海外参戦。セリフはありませんがかなりの怪演ですよ。

あらすじ

密輸された大量の銃器によって暴力団同士の抗争が激化した香港。それを阻止すべく武器取引現場へと踏み込んだ香港警察のテキーラ(チョウ・ユンファ)だったが、激しい銃撃戦の末に同僚を失い、さらには潜入捜査官まで射殺してしまう。

事件解決に執念を燃やすテキーラは、最大勢力であるホイ(クワイ・ホンサン)の組織と対立するジョニー(アンソニー・ウォン)へと揺さぶりをかけるが、そこでトニー(トニー・レオン)と呼ばれる男と衝突することになる……。

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感想と評価/ネタバレ多少

ジョン・ウーという監督。『男たちの挽歌』シリーズで男気アクションの様式美を塗り替え、ハリウッドに渡って作品ごとに大味度を強め、本国に帰って制作した『レッドクリフ』2部作によって馬脚を現す。ボクにとってはそのようなイメージで、正直もうなんの興味もありませんでした。

ただ、香港時代の作品には未見のものがチラホラと残っており、やたらと評価の高いこの『男たちの挽歌』シリーズではない『男たちの挽歌』を試しに観てみようかと思った次第なのですが、いやはやなんとも、とてつもない傑作ではありませぬか!

燃えるアクション!泣けるドラマ!

もうオープニングから飛ばしまくりです!小鳥がチュンチュン鳴いておる飲茶屋で、民間人を巻き添えにしながら蹴りまくり、撃ちまくり、滑りまくり、粉まみれになりながら謎の日本人である國村隼の脳天を撃ち抜く。

なんとまあステキに酷い、しかし超絶カッコいい幕開けでありましょうか!物語としてはね、もうはっきり言ってどうでもいいんですよ。燃えるアクションと泣けるドラマさえあれば。この作品にはその両輪が見事に揃っております!

盛って盛って盛りまくる!

圧巻の幕開けから、武器庫でのバイク乱れ飛び、火薬多すぎの大乱戦、そしてクライマックスの『ダイ・ハード』もビックリの限定空間アクション。この都合3回行われた大銃撃戦の燃えっぷりは半端なく、とりわけ最後の病院を舞台とした、まさに戦場のごとき血みどろ掃射爆破祭りは最高なのであります!

もうね、マシンガン掃射!ロケットランチャー発射!手榴弾炸裂!ショットガン人体貫通!と、オープニング以上の民間人巻き添え阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されており、この火薬の多さと出血多量とスローモーション乱発と死体の山に燃えない男は男じゃない!よく撮影中に死人が出なかったもんです。

大ボスを務めるアンソニー・ウォンの外道っぷり、片目の殺し屋を演じたフィリップ・コクの無双ぶりと悪党の仁義。やはりいい映画にはいい悪役がつきものなのですね。エレベーターを通過してのワンシーンワンカットの銃撃戦なんてとんでもないこともしちゃってます。

さすがに盛りすぎちゃって、赤ん坊のくだりは必要だったのかとか、残弾数は無限増殖するのかとか、はっきり言ってツッコミどころには事欠かないのですけど、そんなちっちぇことを気にしていては真の男ではありません!面白ければ、熱ければ、燃えればよいのです!

トニー!あんた最高だよ!

先にも申しましたとおり、はっきり言って物語的にはどうでもよいのですけど、両輪のもうひとつであるドラマの熱さには燃えちぎってしまいますね。それを一手に担っておるのが香港の名優トニー・レオンなわけです。

ユンファよりレオン。そう、この映画の真の主役はトニー・レオンだったのであります!香港電影金像奨で「俺は助演じゃねえ!」とキレたのにも納得の熱演です。

のちの傑作『インファナル・アフェア』の元ネタになったと思われる、過酷な潜入捜査官の苦悩を演じておるのですけど、彼の善と悪、義理と人情のはざまでもがき苦しむドラマが本当にたまらんのですよ。

これを観てしまうと、「なんだ『インファナル・アフェア』ってパクリだったんだ」と思ってしまいますね。それぐらい熱くて、せつなくて、カッコいい男の生きざまなのです。

この映画のラストをどうとらえるか?バッドエンドなのかハッピーエンドなのか、どちらとも取れる描き方をしていますけど、これはもうそうであってほしいという願望の表れですよね。あれを額面どおり受け取っておられる方もいるようですけど、残念ながらそうではないと思います。ただ、ボクもそう思いたい!

個人的評価:9/10点

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コメント

  1. らびッと より:

    本当この頃のジョン・ウーは熱かったですよね。
    この作品とブロークン・アロー、フェイス/オフは今だに偏愛してやまない3本です。
    その後の作品はジョン・ウーの色づけをした別物というイメージです。
    リュック・ベッソンと同じようにあの頃に戻ってくれないかなと思っている監督です。

  2. スパイクロッド より:

    らびっとさんコメントありがとうございます!
    『男たちの挽歌』シリーズからハリウッドの初期までは非常に熱かったですよね、ジョン・ウーは。ハリウッドデビュー作である『ハード・ターゲット』も良作です。凋落のきっかけはやはり『M:I-2』からですかね?これ以降のジョン・ウー作品にはまったく心惹かれるところがありません。別人か?って感じですね。

  3. らびッと より:

    ハード・ターゲットもなかなかの佳作でしたね。
    M:I-2、ウィンドトーカーズ、ペイチェックどれも嫌いじゃないんですが、フェイス/オフを観せられた後なのでどうしても期待してしまうんです。
    ちなみにブロークン・アローのオープニングシーンは今まで観た映画の中で1番好きです。
    そういえば、ドルフ・ラングレン主演のTV映画ブラックジャックまだ観てなかったな..。

  4. スパイクロッド より:

    らびっとさんコメントありがとうございます!
    『フェイス/オフ』は香港時代からジョン・ウーがやってきたことの集大成的作品ですからね。そういう意味ではあれでスッカラカンになってしまったのかもしれません。『ブロークン・アロー』のオープニングといえばボクシングですね!確かにあれはよかった!