寄せ集め悪党集団が世界を救うって?スーサイド・スクワッド(自殺部隊)?バカ言っちゃあいけませんよあなた。誰がどう見たってこいつら全員いい奴でしょうが!
作品情報
『スーサイド・スクワッド』
Suicide Squad
- 2016年/アメリカ/123分
- 監督・脚本:デヴィッド・エアー
- 撮影:ローマン・ヴァシャノフ
- 音楽:スティーヴン・プライス
- 出演:ウィル・スミス/マーゴット・ロビー/ジャレッド・レト/ジョエル・キナマン/ヴィオラ・デイヴィス/ジェイ・コートニー/ジェイ・ヘルナンデス/アドウェール・アキノエ=アグバエ/カーラ・デルヴィーニュ
参考 スーサイド・スクワッド (映画) – Wikipedia
予告編動画
解説
小物の悪党どもがチームを結成し、感傷的な身の上話などにひたりながら、なんとな~く仲間意識を芽生えさせていくというアクション映画です。「DCエクステンデッド・ユニバース」シリーズの第3作。
監督は『フューリー』のデヴィッド・エアー。主演は『インデペンデンス・デイ2』を蹴ったウィル・スミス。共演にマーゴット・ロビー、ジャレッド・レト、ジョエル・キナマンなど。ちなみにケツアゴバットマンもチラチラと顔見せしておりますよって。
あらすじ
スーパーマン不在となった世界。第二のスーパーマンが人類の味方であるとは限らないという危機感をいだいた政府高官のウォーラー(ヴィオラ・デイヴィス)は、服役中の凶悪犯たちによる特殊部隊タスクフォースX、通称“スーサイド・スクワッド(自殺部隊)”を結成。
メンバーは百発百中のスナイパー、デッドショット(ウィル・スミス)を筆頭に、ジョーカー(ジャレッド・レト)の恋人ハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)など、いずれも札付きの悪党ばかり。
フラッグ大佐(ジョエル・キナマン)の指揮のもと、初めての出動をすることになったスーサイド・スクワッド。しかし彼ら全員の首には、命令に背いたり逃亡を図れば即座に起動する爆弾が仕込まれていたのだった……。
感想と評価/ネタバレ無
『マン・オブ・スティール』『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』に続くDCエクステンデッド・ユニバースシリーズの第3弾。DCコミックスに登場した悪役キャラクターたちを主役に据えた作品であります。
しかしアメコミに疎いボクなどは、ジョーカー以外は誰ひとりとして知らぬ存ぜぬの世界。ただ稀代の悪党どもがチームを組むんだろ?ってことはクレイジーなまでに美しく残酷なバイオレンス映画だってことだろ?汚物と臓物と鮮血が画面いっぱいに炸裂してんだろ?
だったら観ない手はないね!汚物にまみれ、臓物をあさり、人の生き血をすするボクのようなキチガイにはもう辛抱たまらん映画ってわけですわ!てなわけでさっそく観てきたので感想書きます。ステキな悪党どもの最凶最悪な活躍とはいかに!?
みんないい人だよ
え~とまあ、散々っぱら煽っといてなんですが、ボクがこの映画を鑑賞しているときの心持ちは「無」。ひたすら「無」。とにかく「無」。何がなんでも「無」でありました。劇場の真っ暗闇でなければ、周囲の親切な方々から「この人生きてるのかなぁ?」と心配された無表情だったことでしょう。
それぐらいボクの心はこの映画を観ているあいだ死んでいたのであります。なぜ死んでいたのか?それはこの映画には「心」がなかったから。あふれる汚物という、こぼれ落ちる臓物という、飛び散る鮮血という「心」がどこを探しても見つからなかったから。
代わりにこの映画に存在していたのが、後悔と、愛情と、感傷と、適当な仲間意識。これがはたして悪党の心意気なのだろうか?ここにステキな悪の「心」は存在していたのか?君たちってただのいい奴らじゃないか!仲間思いで、愛する人を忘れない、いい人じゃないか!
何もない世界
正直なところ、ウィル・スミスが主演を張るという時点である程度の予想はついておりました。彼が真の悪人を演じるわけがないものね。きっとまたステキなパパさんなんだろうと思っていたら、予想を上回るいいパパぶりにボクの顔と心はおそらく完全なる「無」と化していたことでしょう。
そんな実はただのいい人だったり、悲しい過去があったり、単なるコソ泥である彼ら小悪党を紹介していく編集のぶつ切り感。テンポの悪さ。挿入歌の雑な使い方。何も上がらないし下がらない。つまりは「無」。すべてを「無」が支配する世界。
悪と呼ぶにはおこがましい小悪党を適当に見繕い、なんとなくチームを結成させ、なんだかよくわからない作戦に従事させ、知らないあいだに仲間意識を芽生えさせ、気づいたらラストバトルが終わっている。「無」である。おそろしいほどの「無」の境地である。
デヴィッド・エアーの敗北
この映画最大の失敗は、悪党どもを主役に据えているのにまったく悪の心、魅力が存在していなかったこと。大多数の方が期待をしたのは、壮絶な悪と悪とのキチガイバトルだったのではないでしょうか?それをダークに描くか、ポップでコミカルに描くか。
しかしこの映画に我々が求めた悪はいなかったし、ダークでもポップでもコミカルでもなかった。しつこいようですが「無」であります。ここにはなんにもありません。適当にヴィランを見繕ってぶつ切りの編集で意味不明な世界の危機を描いた普通のスーパーヒーロー映画。
誰もこんなものは望んでおりませんぞ。だいたいレイティングがG指定という時点で志が低すぎます。最低でもR15+だろうが!G指定でいったいどんな悪の魅力が、汚物が、臓物が、血みどろが描けるというのだ!デヴィッド・エアーがこんな生ぬるい映画撮ってどうする!
本編完成後の再編集やらなんやらで、やれ予告編詐欺だ、ジョーカーの出演シーン大幅カットだと騒がれていたようですが、仮にディレクターズカット版が存在したとして、その出来には大きな違いはないように思います。ダメなものはダメなのです。
それはあのジョーカーが単なるチンピラヤクザに成り下がっていたという時点で明白でありましょう。誰が編集しようが改変しようが、この映画にボクが求めた悪の醍醐味はきっと存在していないはず。これは要するに、デヴィッド・エアーの敗北を意味するのです。
ハーレイ・クインは女の子
ほかにもキャラクターの能力バランスの悪さ。今後のメタヒューマン取り扱い注意に対する伏線なのだろうが、あまりに中身のない今作のヴィラン。マッチポンプ事件。工夫のない戦闘シーン。雑魚キャラ飽和状態。決めショット皆無など、文句をあげていけばキリがありません。
無数の文句には目をつぶって、「ハーレイ・クインだけは最高最凶だ!」と絶賛されている方が多数おられますが、ボク的には彼女に対しても特段なんの感情もいだきませんでした。女の子だね~って感じ。ジョーカーとの結婚を夢見てるシーンなんてドン引きでしたね。
こういう点でもこの映画は「悪」を描く気なんてさらさらなかったということ。彼女は単に愛に生きるちょっとぶっ飛んだおてんば娘だっただけですわ。そういう意味ではこの映画で唯一「悪」を体現してくれていたのは、部隊の責任者であるウォーラーただひとりでしょうね。
『マン・オブ・スティール』『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』、そして今回の『スーサイド・スクワッド』。ここまで3作が製作されてきたDCエクステンデッド・ユニバースですが、先行するマーベルとの差は開いていく一方ですな。
2017年の夏に公開予定の第4弾『ワンダーウーマン』。ここでもつまづくようだといよいよ窮地に陥りそうな気配ですが、メタヒューマンを主役に据えた映画ってどうなんでしょうね?ボク的には文字どおり能力が人間離れしすぎていまいち乗れんのですけど……。
個人的評価:2/10点
DVD&Blu-ray
VOD・動画配信
『スーサイド・スクワッド』が観られる動画配信サービスはU-NEXT、TSUTAYA TV、。おすすめは毎月もらえるポイントによって視聴可能なU-NEXT(2018年12月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください)。
コメント
今見てきました。おなじような感想です。ハーレイにはもっともっとぶっ飛んでもらいたかった。
hidenemさんコメントありがとうございます!
ボクのつたない感想に同意していただいてたいへん恐縮であります。設定やネタとしては面白いのに、非常に残念な中途半端さでしたよね。ハーレイ・クインも確かにかわいいのですけど、もっと最凶にぶっ飛んでいるほうが絶対に魅力的でしたね。そのうえでのセンチメンタルなら納得できた!
同じく悪党ではなかったのが最大の不満です。レビュー、超同意します。
全速力キチガイであるジョーカーでは話を纏められないなら話題作りのためなんかに出すべきじゃなかった……。もったいない。
これならリーダー役を悪事も善行もコイントスで決めるトゥーフェイスと入れ替えて、ファーストコイントスで協力を決めて、ラストコイントスで首輪爆弾の解除しないお上への報復を決意する、そんなベタベタな方がマシだったです。
トゥーフェイスならバットマンともキャラクター対比しやすいし。なぜなら初期の彼はバットマンのような暴力ではなく、法に則って犯罪者を検挙までもっていき、一時ブルースにバットマンより彼こそが街には必要なんやないか、と悶々とさせるキャラクターだし。
(その後ギャングの報復で顔面半分が爛れて、コインの表裏で行動を決める白スーツの怪人トゥーフェイスになりました)
協力する理由付けが酷い。気まぐれコイントスのがマシだい。
極めつけの悪党という触れ込みなのに超協力的でコントロールしやすそうなのが、超悪党で悪党をぶちのめす!という設定根幹を破壊しちゃってますもの。危うさが永遠の0でした。
演出もヌルくてカッコ良くないし、とほほー、です。
(눈_눈)さん、コメントありがとうございます!
そうですよねぇ、ひたすらぬるくてがっかりでしたよね。悪党がさらなる巨悪へと仕方なしに挑んでなんだか世界を救っちゃう!って感じを期待してたんですけど。体制の中に取り込まれた骨抜きの小物ばかりでまったくハジけませんでしたね。ジョーカーが常に物語の外側にいるのは収拾がつかなくなるからだったのかな?だったらハーレイ・クインの回想シーンだけにとどめて、あんな中途半端なかたちで出すべきではなかったと思います。
おっしゃるとおりトゥーフェイス案のほうが面白かったかもしれませんね。あんましアメコミには詳しくないのですけど、『ダークナイト』のあの人ですよね?ただのいいパパにすぎないウィル・スミスのデッドショットよりははるかにマシだったと思います。
こんにちは、楽しく読ませて頂いております。
ジャレッド レト氏の新生jokerを期待して観に行った自分としては、とても残念な映画でしたね。
今迄jokerを演じた俳優陣と、どれだけ違う演技・活躍・表情を見せてくれるのか。。。
そんな期待は水泡に帰したjokerの扱いでしたね。
OGAWATORYさん、コメントありがとうございます!
ジャレッド・レトは頑張っていたと思うのですよね。これまでとは違う新たなジョーカー像の創造。この難題へといつもながら体当たりで挑戦していたと思います。しかしいかんせん先代ふたりが偉大すぎた。我々がいだくジョーカー像とかけ離れたこの小物感は、編集による大幅な出演シーンカットという弊害もあるでしょうが、やはり期待外れとしか言いようがない。圧倒的な悪の象徴から、ちょっとタガが外れた危ない奴程度へと堕してしまっていた。ここからどのような軌道修正を図るのか?これからの命題となりそうですね。
公開日に見ました。
北米では大ヒット、しかし評判はいまいちということで若干の不安はありました。
それが見事に的中してしまったやるせなさといったら・・・。
僕はアメコミ映画に関しては邦訳された原作も読んでいる場合が多く本作も原作は読んでいました。
spikerodさんの意見と全く同じで「あれこの人たち案外いい人たちじゃん」
あんまり原作と違う!なんてこと言いたくないんですが、原作の方が数倍ゴア描写が上だし悪人らしいミッションの達成の仕方なんですよね・・・。
あるドーム会場でウィルス事件が起きて化け物に変化していく一般人達をスクワッドの連中が容赦なく殺して、アリバイ工作としてスクワッドの仲間をデッドショットが事件の犯人に仕立て上げ濡れ衣を着せ殺し、世間にはウィルス騒ぎがばれないようそのビランのせいにするという展開があります。こういうハードな展開を少しでも期待したのですが・・・。
えるぼーロケッティアさん、コメントありがとうございます!
ボクはえるぼーロケッティアさんほどアメコミには詳しくありませんけど、この看板と中身の大きな齟齬には本当に落胆してしまいました。こんな仲間思いのいい奴らの共闘を観たかったわけではなかったのだけどなぁ……。原作の中身はいま知りましたけど、それに忠実に映画化していたらかなり面白いものができたと思いますけどね!そういう映画を観たかった!R指定で!