『アブノーマル・ウォッチャー』感想とイラスト 彼はきっといい変態

この記事は約5分で読めます。


いまやこの世は監視社会。みんな知らずに、この瞬間でさえ、どこぞの誰かに覗かれているやも。知らぬが仏。知るは楽しみ。このパラダイスを管理するのは覗きの神。俺の世界を汚す野郎は誰だって容赦しねえ!

スポンサーリンク

作品情報

『アブノーマル・ウォッチャー』
Slumlord/13 Cameras

  • 2015年/アメリカ/90分
  • 監督・脚本:ヴィクター・ザーコフ
  • 撮影:ジェス・ダンラップ
  • 音楽:ポール・コーク
  • 出演:ネヴィル・アーチャムボルト/ブリアンヌ・モンクリーフ/P・J・マッケイブ/セーラ・ボールドウィン

参考 13 Cameras (2015) – IMDb

予告編動画

解説

郊外のプール付き一軒家へと引っ越して来た新婚夫婦。しかし待望の新居には見るからに怪しい大家によって膨大な数の監視カメラが取り付けられていたというスリラー映画です。「未体験ゾーンの映画たち2017」上映作品。

監督はこれが長編デビュー作となるヴィクター・ザーコフ。主演はムキムキキモメン俳優の新星ネヴィル・アーチャムボルト。ザーコフ脚本、アーチャムボルド主演による続編『14 Cameras』が2018年に製作された模様。

スポンサーリンク

感想と評価/ネタバレ多少

さまざまな理由から日本での劇場公開が見送られた怪作ばかりを上映する企画、「未体験ゾーンの映画たち」。タイミングが合えばぜひとも観たい作品が多数あるものの、上映期間は非常に限定的でとにかく合わないのが玉に瑕。結局まだ一本も観れてません。

仕方がないのでレンタルしてきたのが今回ご紹介する『アブノーマル・ウォッチャー』。新婚夫婦が引っ越して来た新居には、変態大家による無数の隠しカメラまで完備された素敵なお城だったという、なんとも心温まる現代のおとぎ話であります。

覗きこそ我が人生

「過去10年間で3000万台以上の監視カメラが売られ、昨年だけで8000人以上が盗撮被害に遭っている」という防犯啓蒙意識が超高いこの映画。いわく、「庭に人を埋めてそうで全身から汚物のにおいを発散させているキモい大家には気をつけろ」とのこと。

これからお世話になる大家をそう形容したのは妊娠中の妻クレアで、夫のライアンはそんな姉さん女房の尻に敷かれている模様。どうやら夜の営みも長いことお預けのようで、辛抱たまらんライアンは仕事のアシスタントである巨乳美女ハンナともっか不倫中。

そんな彼らの夫婦生活、自宅で行われるライアンの不倫現場を、ティッシュ片手に大量の汗と吐息を放出しながらPCで凝視し続ける大家のジェラルド。「俺は神だ。すべてを見通す神なのだ!」と、ピーピング神としての誇りを胸にシコシコ忙しいジェラルドさん。

正直、新婚夫婦の裏事情が延々と続く下世話な展開には少々退屈を覚えますが、恐怖というよりかは観る者を不快にさせる、キモさ100パーセントなジェラルド氏のキャラによってかなり救われている映画でしたね。っていうか頼みはそこしかないって感じでしたけど。

クレアに形容されたように見るからに全身臭そうな風貌。ダサい眼鏡。荒涼とした頭髪。くぐもった声。大量の発汗。そして極めつけは筋骨隆々の肉体。全身全霊キモいです。そんな彼は風貌のみならず行動もキモい。まあ賃貸物件に隠しカメラ仕込んでる時点でキモいですが。

夫婦の留守を狙って家中を徘徊し、バスタオルをクンクン、クレアの歯ブラシでゴシゴシ、そしてとどめの一撃として繰り出された妊婦のお腹ワシワシ事件。妊婦のお腹を他人が触れる行為についてはいろいろと物議をかもしておりましたが、ジェラルドは絶対ダメ!

あの恐怖とおぞましさにひきつるクレアの顔といったら。おまけに「女の子だ」と謎の予知能力まで発動する始末。誰が見てもキモい、ヤバい、危ないジェラルド。でもね、なんか意外と悪い奴じゃない、けっこういい変態なのかも?と思ってしまったのはボクだけかな?

ライアンの愛を独占しようと、ついに彼らの愛の巣、ジェラルドにとってのピーピングパラダイスへと不法侵入して来たハンナを、こちらも負けじと不法侵入して実力行使に出る彼の姿は明確なホラーですが、同時にこの安定した状況を守ろうと務める守護天使とも言えます。

要するにジェラルドの求めている欲望とは、彼ら夫婦の安定した生活と、それを永遠に覗き続けられる夢の楽園の実現というわけです。おそらくそれ以上の行為は何も望んでいなかったのでは?覗きのプロにとっては、覗きを継続していけることこそが最上の喜び。

そんな楽園へと闖入してきた不穏分子の排除により、物語の歯車は楽園の崩壊へと雪崩れ込んでいきます。グロを志向した映画ではないのでそのへんの展開や描写はたいしたことありませんが、「俺はただ覗きてぇだけなんだよぉ!」という魂の叫びは聞こえてきそうですね。

結局のところ「覗く」という行為に特化した映画だったわけですから、もっと覗きの視点にこだわってもよかったとは思うし、後半の展開もひねりのないド直球で面白味はありませんが、例の予知能力を伏線としたラストだけはあまりに素晴らしくて震えました。

やっぱジェラルドっていい奴だ!いい変態だ!ボクの仲間だ!となんか親近感がわいてきて、思いがけずほっこり終われる映画ではなかったかと思います。いや、マジでね。

個人的評価:5/10点

DVD&Blu-ray

覗き映画の感想ならこちらも

『ナイトクローラー』感想とイラスト ゲスの極みギョロ目
映画『ナイトクローラー』のイラスト付き感想。ネタバレ多少。ゲスの人生哲学。お前のものは俺のもの。他人の不幸は蜜の味。死人に口なし。金は三欠くに溜まる。これを実践できれば晴れて君たちも我がVPN(Video Production News)の一員だ!

ホラー映画好きにおすすめ

失禁御免!心底怖いおすすめホラー映画ランキング
怖くないホラー映画なんぞに存在価値はなーい!恐怖こそ至上!恐怖こそ正義!恐怖こそ勝利!そんな夜中に小便ちびるぐらい恐ろしい超絶おすすめホラー映画ランキングの発表じゃい!

コメント