『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』感想とイラスト 寄る年波には勝てぬ

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映画『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』トム・クルーズのイラスト(似顔絵)
正体不明な正義のさすらいアウトロー、ジャック・リーチャー。ついにあいつが帰って来た!ってあれ?何これ別人?前もあんたホントはいい人だったけど、今度はもう生粋の善人やん!「家族ごっこ」でほんわかしてんじゃねーよ!

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作品情報

『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』
Jack Reacher: Never Go Back

  • 2016年/アメリカ/118分
  • 監督:エドワード・ズウィック
  • 原作:リー・チャイルド
  • 脚本:リチャード・ウェンク/エドワード・ズウィック/マーシャル・ハースコヴィッツ
  • 撮影:オリヴァー・ウッド
  • 音楽:ヘンリー・ジャックマン
  • 出演:トム・クルーズ/コビー・スマルダーズ/ダニカ・ヤロッシュ/パトリック・ヒューシンガー/オルディス・ホッジ

参考 ジャック・リーチャー NEVER GO BACK – Wikipedia

予告編動画

解説

どこにも属さない、何ものにも縛られない流れ者の「いい人」が、さらなる「いい人」ぶりを見せつけるサスペンスアクションシリーズの第2弾です。

監督は前作のクリストファー・マッカリーから『ラスト サムライ』のエドワード・ズウィックへとバトンタッチ。主演は前作に引き続きトム・クルーズ。共演は『アベンジャーズ』のマリア・ヒル役でのクールビューティぶりが注目されたコビー・スマルダーズ。

原作はリー・チャイルドによる全米ベストセラー小説『ジャック・リーチャー』シリーズ。映画化作品としてはこれが第2作目ですが、原作小説の『Never Go Back』はシリーズ第18作目だという摩訶不思議(前作の『アウトロー』も原作では第9作目)。

あらすじ

元陸軍憲兵隊のエリート捜査官にして現在は一匹狼の流れ者、ジャック・リーチャー(トム・クルーズ)。ある事件を通して知り合った現在の陸軍憲兵隊指揮官スーザン・ターナー少佐(コビー・スマルダーズ)に会いに、ワシントンを訪れたリーチャー。

しかし彼女は身に覚えのないスパイ容疑で逮捕、拘束されており、この裏にきな臭い陰謀の存在を嗅ぎとったリーチャーはすぐさま行動を開始。その矢先に自分自身も逮捕されたリーチャーだったが、このピンチをチャンスへと変え、ターナーとともに軍刑務所を脱獄。

執拗に迫る追手をかわしながら、ふたりは事件の裏側で暗躍する巨大な軍需企業の存在を突き止めるが、実は敵もリーチャーの弱点を見つけていた。それは彼の娘かもしれない15歳の少女の存在だった!

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感想と評価/ネタバレ有

どこにも属さない流れ者のアウトロー(無法者)感ゼロが評判を呼んだサスペンス・アクション第2弾です。前作は批評・興行ともにあまり芳しいものではなかったのですけど、続編が製作されたのはひとえにトム・クルーズの意向でしょうか?お気に入りなのでしょうか?

しかしこの続編のスタートにも暗雲が。北米興行成績での初登場首位を逃し(2位)、Rotten Tomatoesでの評価も散々(10段階で5.1)。いまや『ミッション:インポッシブル』以外は当たらなくなってしまったトムちん。かくいうボクも前作は嫌いです。

しかし予告編が非常に面白そうでしたので、「来週あなたの奥歯を引っこ抜くよ」という無慈悲な歯医者からの宣告に戦々恐々としながらも、その恐怖を少しでも忘れようとこうして観に来た次第。さて、抜歯の恐怖を打ち消す映画だったのか否か?それではさっそく感想をば。

なんか違うぞ?

映画冒頭で映し出されるのは、予告編でいい感じを出していた例のダイナーでの一幕です。IDのくだりに一抹の不安を覚えるものの、これは予告編での印象どおり悪くない。ジャック・リーチャーという男の正体不明な凄みを感じさせる良い演出です。これは期待できるかな?

と思った矢先、情報を提供した憲兵隊のターナー少佐が女性だとわかったとたん、すぐに口説きにかかるリーチャーの軽さに暗雲が立ち込めてくる。その暗雲は言うが早いか、気づいたら彼女のいるワシントンへとやって来ていたリーチャーのやる気まんまんによって土砂降りに。

あんたってこんなガツガツしたキャラだったけ?女は一夜限りのはずなのになんか鼻息荒すぎない?顔も見たことない女性に会いにわざわざワシントンまで来るなんて。なんか違う。なんか違うぞこれは。前作に輪をかけてアウトローではなくなってるんじゃないの?

早すぎたサプライズ

そう、前作も決してアウトローとは呼べない「いい人」の物語でしたが、この第2弾ではもはやアウトローのアの字もなくなった普通に「いい人」による普通のアクション映画へと成り下がっておったのです。しかもまさかの疑似家族形成ものというほんわか路線。

予告編でもまったく触れていなかった一種のサプライズとして、リーチャーの娘かもしれない少女の存在があるのですけど、彼女も連れた3人での逃亡劇がこの作品の核となっておるのですよね。父(リーチャー)、母(ターナー)、娘(サム)という三角形なわけ。

これをやっちゃいかんというわけではありませんが、まだジャック・リーチャーというキャラクターも定着していない段階でやるのは明らかな失敗。おそらくは原作がそういう話なのでしょうけど、原作の『Never Go Back』はシリーズ第18作目ですよ。

ここまで来たら新たなネタとしてありでしょうけど、まだ映画版は第2作ですよ?これによって定着できていないキャラクターがブレにブレて、いったい誰の話なのかなんともよくわからんことに。ジャック・リーチャーが主役じゃなくてトム・クルーズにしか見えんよこれじゃ。

トム・クルーズ54歳

しかもこの娘かもしれないサムの存在によって物語もブレまくり。ヒロインであり、ともに戦う同士であったはずのターナーの存在は後景化し、かなりの強敵に思えた悪役のパトリック・ヒューシンガーの狂気はスポイルされ、ミステリー的要素はなかったことにされてしまう。

つまりはぬるいぬるいぬるま湯映画。エドワード・ズウィックによるアクション演出も予想どおりキレないときては、もはや何ひとつ見るべきところはない。御年54歳のトム・クルーズのアップにも哀愁が漂います。ほうれい線が!顎が!やめて!映したらんといて!

そういや劇中でもなんか年齢というか老いを感じさせる描写が多かったですよね。冒頭の事件の時点でもう疲れきっておりましたから。ため息つきながらへたり込みそうな感じ。ある意味ではリアルでいいと思いますけど、無理してる感がちょっと痛々しいかな。

『マラソンマン』を観る!

往年のアクションスターとしての輝きに陰りが見え始めた54歳トム・クルーズ。ならばと挑戦した定番の疑似家族形成ものの不発。アクションの雑さ。ミステリー皆無。よくある軍需企業陰謀ものの適当な脚本。こんなしょうもないB級アクション腐るほど観てきたよ!

前作の数少ない評価ポイントであった1970年代的味つけも失われ、ジャック・リーチャーという男のツンデレや大真面目な間抜けさもなかったことにされたこの映画。北米での興行成績の不信、批評家からの酷評も納得の実にしょうもない続編映画でしたね。作る意味ねーよ。

だいたい娘かもしれない存在との出会いがテーマだというのに、その「かも」が弱すぎますよね。「ああ~違うな」ってすぐわかっちゃうし、すぐバラしちゃう。もうちょっとここで引っ張ってもよかったのではないですか?やるならやるでね。もっと真剣に。

ラストの「たぶんやるだろうな」と思った振り向きダッシュからの抱きつきには、ヘタクソなベタが嫌いなおじさんは「うえ~げえ~」とえづいてしまいましたよ。サムを演じたダニカ・ヤロッシュのかわいげのなさも好きではありません。なんか愛嬌がないのよね。

というわけで、来週に迫った抜歯の恐怖を忘れさせてくれるような映画などでは断じてなく、今も恐怖に打ち震える哀れなボクちん。ああ~怖い。おお~嫌だ。逃げたい。今すぐ逃げ出したい。この現実から逃避するすべはただひとつ。そうだ!『マラソンマン』を観よう!

個人的評価:3/10点

DVD&Blu-ray

VOD・動画配信

『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』が見放題なおすすめ動画配信サービスはプライム・ビデオ(2018年12月現在。最新の配信状況はAmazonのサイトにてご確認ください)。

前作の感想はこちら

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コメント

  1. (눈_눈) より:

    まったくもって微塵も予想を裏切らない駄目映画でした(笑)
    サプライズ娘はいらなかったというか原作だと18本目の話なんですね。
    せめてコラテラルくらいの無慈悲さが欲しかった今日この頃。

    が、やはりなんだか「おー、トム・クルーズやんけ」というノリで何故か楽しめたです。話はカスなんでまったく面白くはないんですが。
    知人にジャッキー映画は見えてる地雷でも必ず劇場へ行くって方がいるんですが、今までは理解できなかったけど、よくよく思い返せば僕にとってはトム・クルーズがそれやったか!と発見した十一月でした。
    歳取ってたなあ。

    • スパイクロッドspikerod より:

      (눈_눈)さん、コメントありがとうございます!

      トムもジャッキーも我々の青春時代を色鮮やかに彩ってくれたアクションスターではありますが、両者ともやはり寄る年波には勝てませんな。年齢を考えればもうすでにふたりとも限界。引退勧告間近ですからな。そう考えると御大クリント・イーストウッドは早々と先を見越して先手を打っていたのかな?やはりあのお方は器が違いますなぁ。トムちんもプロデュース能力には長けていると思うので、これからいかに自分をプロデュースしていくかですね。もしくは死ぬまでこのまま突っ走るか!