犬と人を秤にかけりゃ、犬が重いがおいらの掟。てめえらそれと知らずにおいらのやる気スイッチを押しちまったな。二度とお天道様は拝めねえぜ!
作品情報
『ジョン・ウィック』
John Wick
- 2014年/アメリカ/101分/R15+
- 監督:チャド・スタエルスキ/デヴィッド・リーチ(クレジットなし)
- 脚本:デレク・コルスタッド
- 撮影:ジョナサン・セラ
- 音楽:タイラー・ベイツ/ジョエル・J・リチャード
- 出演:キアヌ・リーヴス/ミカエル・ニクヴィスト/アルフィー・アレン/ウィレム・デフォー/エイドリアンヌ・パリッキ
予告編動画
解説
犬の命は人の命で償わなければならない厳しい掟を描いたバイオレンス・アクションです。
監督は『マトリックス』などでスタントマンを務めてきたチャド・スタエルスキで、これが監督デビュー作。共同監督には『デッドプール2』のデヴィッド・リーチ。主演はこの映画によって待望の復活を果たしたと絶賛された『ノック・ノック』のキアヌ・リーヴス。
共演は『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』のミカエル・ニクヴィストに、『アンチクライスト』のウィレム・デフォー、『サマー・オブ・サム』のジョン・レグイザモ、『アイ,ロボット』のブリジット・モイナハンなど。なにげに脇が豪華ですな。
あらすじ
愛する妻を病気で失い、深い悲しみのなかで生きる目的を見失いかけていたジョン・ウィック(キアヌ・リーヴス)。そんな彼のもとに、そうなることを予期していた亡き妻からの最後の贈り物として、一匹の子犬が届けられる。
デイジーと名付けられたその子犬と心を通わせることにより、徐々に生きる力を取り戻しつつあったジョンだったが、彼の愛車69年式マスタングを狙ったロシアン・マフィアによって、無残にもデイジーの命は奪われてしまう。
怒りに燃えるジョンはすぐさま復讐のために動き出す。それを知ったロシアン・マフィアのボスであるヴィゴ(ミカエル・ニクヴィスト)は恐怖に震える。なぜならジョンは、かつて裏社会にその名をとどろかせた伝説の殺し屋だったのだ!
感想と評価/ネタバレ多少
ベンチに座ってひとりでパンを食す哀愁。地下鉄でさりげなく女性に席を譲るやさしさ。ホームレスと親交を深める偏見のなさ。お気に入りの靴をガムテープで補修して履き続ける節約精神。ラーメン好きというハイセンス。etc.
そんなキャラクターをネット民から愛されているキアヌ・リーヴス。しかし、『マトリックス』以降は目立ったヒット作に恵まれず、俳優としてはやや落ち目にあったのも事実。そんな彼の復活作として一部で絶賛されているのがこの作品であります。
「ガン・フー」とはなんぞや?
この映画で最大の売りとなっているのが、カンフーとガンアクションとを融合させた「ガン・フー」なる接近銃格闘術。C.A.R.(Center Axis Relock)なる近接戦闘用の射撃スタイルと、ロシアの軍隊式格闘技システマなどの実践系武術の融合。
ということなのですが、基本的にカンフーはあんまし関係ありませんから。銃を構えた両腕を体へと近づけた射撃スタイルで、狭い室内で効率よく標的を射抜き、時に投げ技や絞め技を駆使しながら並みいる敵を駆逐していく。
基本ひとりに対してぶち込む弾丸は2発。確実に敵の生き根を止めてみせる。確かにこれは実践的だと思わせる説得力はありましたね。
わかりやすい物語
「舐めてた相手が実はガチでヤバい殺人マシンだった!」という、『96時間』や『イコライザー』などの系譜の内容で、マフィアのバカ息子のせいで最悪の事態が引き起こされるというのも、今年公開の『ラン・オールナイト』を想起させます。
つまりは非常にわかりやすい物語でありまして、余計なことは考えずにキアヌの無双ぶりに集中できるという、単純ゆえの物語の利点があったとも思います。
興味深い裏社会
単なる裏社会に生きる男たちの血で血を洗う死闘を描いたノワール映画ではなく、知られざるというか、ややリアリティを逸脱した裏社会の仕組みを描いた設定もたいへん興味深いです。
裏社会の殺し屋たちが集まる謎のホテルと、それを取り仕切る組織。そこで定められた厳しい掟。事態の後処理を任される掃除屋などなど。
リアリズム一辺倒ではない一種のファンタジー的要素。これがこの作品の魅力の一端を担っていたのは疑いようのない事実でしょう。ボクにとってはこれこそがこの映画の最大評価ポイントだと思っています。
で、面白かったの?
ではボクにとってこの映画は面白かったのか否かと問われれば、悪くはないけど良くもないというのが正直な評価ですね。ガン・フーは確かに実践的リアリズムを有していたとは思うものの、それゆえにアクション的ケレンを失っていたのもまた事実。
これは結局のところ趣味の問題になるのでしょうけど、ボク的には『リベリオン』のガン=カタのほうがはるかにインパクトが大きかった。バイオレンス風味が足らないのも惜しい。
『96時間』『イコライザー』『ラン・オールナイト』を否応なく想起させるわかりやすい物語も、やはり先例には及ぶべくもなく、唯一裏社会の奇妙な設定が目をひく程度。あと動機が犬だってとこかな。
しかしこの動機となる犬の存在にしても、デイジーの愛らしさには鬼畜なボクも相好を崩すものの、肝心の心温まる交流、絆の形成がぞんざいなのは頂けない。それは亡き妻との深い愛情に関しても言えることで、やはり大本となる動機が弱すぎるか?
まあこれはその動機自体にはたいした意味はなく、殺人マシンである「虎の尾を踏んだ」結果ってことなんでしょうけどね。
実存感のないキアヌ
あとこれは根本的な問題なのですけど、主演であるキアヌの実存感のなさと申しましょうか、やはりいつ見てもリアル世界の住人には見えないのです。
出世作である『スピード』は除外したとして、映画の出来不出来にかかわらず、やはりキアヌのハマり役はSFかファンタジーに限られてしまうのですよね。前述した浮世離れした本人の資質か、『マトリックス』のイメージなのか、やはり彼の魅力は荒唐無稽な漫画的世界でこそ発揮される。
そういう意味においてこの映画のリアリティラインはやや中途半端なのですよね。これが『リベリオン』まで突き抜けていたら傑作になっていたかもしれない。っていうか『リベリオン』にしたらよかったのに。ああ~『リベリオン』がまた観たくなってきた。よし!『リベリオン』を観よう!
個人的評価:4/10点
DVD&Blu-ray
VOD:動画配信
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