『特攻大作戦』感想とイラスト 真正自殺部隊

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映画『特攻大作戦』リー・マーヴィンのイラスト(似顔絵)
悪魔の指揮官のもとに集ったきったね~十二使徒。奴らが狙うはにっくきナチスの首。毒をもって毒を制す。悪をもって悪を倒す。俺たちゃ真のスーサイド・スクワッドよ!

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作品情報

『特攻大作戦』
The Dirty Dozen

  • 1967年/アメリカ/150分
  • 監督:ロバート・アルドリッチ
  • 原作:E・M・ナサンソン
  • 脚本:ナナリー・ジョンソン/ルーカス・ヘラー
  • 撮影:エドワード・スケイフ
  • 音楽:フランク・デ・ヴォール
  • 出演:リー・マーヴィン/チャールズ・ブロンソン/ジム・ブラウン/ジョン・カサヴェテス/ドナルド・サザーランド/テリー・サヴァラス/クリント・ウォーカー/リチャード・ジャッケル/アーネスト・ボーグナイン/ジョージ・ケネディ/ロバート・ライアン

参考 特攻大作戦 – Wikipedia

予告編動画

解説

きったならしい十二使徒が極悪指導者のもと、にっくきナチスを火だるまにするという傑作戦争映画です。原作はE・M・ナサンソンが1965年に発表した同名小説。

監督はけっして折れない骨太B級映画界の巨人、『カリフォルニア・ドールズ』のロバート・アルドリッチ。主演は個人的男前俳優のひとり、『ブラック・エース』のリー・マーヴィン。

共演にも『北国の帝王』のアーネスト・ボーグナイン、『ウエスタン』のチャールズ・ブロンソン、『SF/ボディ・スナッチャー』のドナルド・サザーランド、『殺人者たち』のジョン・カサヴェテスなどのいい顔が揃っておりますよ。

あらすじ

ノルマンディー上陸作戦を目前に控えた1944年のイギリス。アメリカ陸軍のはみ出し者ジョン・ライズマン少佐(リー・マーヴィン)に、上層部から「大赦作戦」という、実刑の決まった札付きのワルどもを編成したある秘密作戦の指揮が任される。

それは、占領下のフランスでナチス士官たちが集まるパーティに潜入、襲撃をかけるという非常に危険な任務だった。狂気の命令を下す上層部に反感を覚えながらも、恩赦を餌に12人の凶悪犯どもを優秀な兵士として鍛えに鍛え上げるライズマン。

目の前にぶら下げられた恩赦と、ライズマンへの反抗心から徐々に団結し、部隊としての結束を固めていく12人。そしてついに大赦作戦は発令され、ナチス士官どもを皆殺しにするためフランスへとパラシュート降下するライズマンたちだったが……。

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感想と評価/ネタバレ有

みんな大好きクエンティン・タランティーノの『イングロリアス・バスターズ』。その元ネタのひとつとされるのがこの『特攻大作戦』。原題は『The Dirty Dozen』で、つまりは「汚い12人」。極悪指導者のもとに集まったきったねー十二使徒の活躍を描いた映画というわけ。

『飛べ!フェニックス』『北国の帝王』『カリフォルニア・ドールズ』などで知られる反骨の骨太B級巨人ロバート・アルドリッチの傑作のひとつで、ボク的には『何がジェーンに起ったか?』『傷だらけの挽歌』と並ぶ彼のベスト3映画の一角を占める思い入れのある作品です。

ワッシュさん主催による「戦争映画ベストテン」に参加するにあたり、何か一本観直しておこうと選び出したのがこの『特攻大作戦』。前回感想をアップした『この世界の片隅に』とはまったく異なるテイストの戦争映画ではありますが、わしゃこういうのが好きなんじゃい!

汚い12人

何が好きだって、男汁100パーセントのギットギトに濃ゆい暑苦しさですよね。こういう男臭い映画を撮らせたらアルドリッチは鬼に金棒、虎に翼、獅子に鰭、百戦百勝の天下無敵なのです。ライズマンときったねー12人が初対面するタイトルバックからくっせー男汁全開です。

ナチス士官どもを血祭りにあげるために集められた12人の猛者たちは、殺人、レイプ、強盗などによって、死刑や長期禁固刑を言い渡された札付きの凶悪犯揃い。彼らの氏名、罪状、刑の重さを順番に紹介していくこのタイトルバックのベタなカッコよさときたらもう!

チャールズ・ブロンソン、テリー・サヴァラス、ドナルド・サザーランド、そしてジョン・カサヴェテスといったゴロツキどものいい顔を、ひとりひとり値踏みするかのように凝視していくリー・マーヴィン演じるライズマン少佐の圧倒的なる男の凄み。

毒をもって毒を制す。悪をもって悪を倒す。ナチスという巨悪に対抗するためには、自分たちにもそれ相応の悪の道が要求される。ゆえに選ばれた汚い男たち。彼らの不良的感性を更生させるのではなく、そのまま利用するという無茶なプロットに痺れますよね。

ヤンキーの修学旅行

そんなきったねー12人は、指揮官であるリー・マーヴィンを除くと凶悪犯というよりかはチンピラ然とした小物感満点のゴロツキどもなのですけど、このどこか憎めない田舎のヤンキー的ダサさがすこぶる魅力的なのです。ヤクザになりきれないお人好しの悪ガキどもって感じ?

寡黙なリーダー格のチャールズ・ブロンソン。喧嘩の弱いパンク小僧みたいなジョン・カサヴェテス。終始ヘラついているドナルド・サザーランド。イカれたテリー・サヴァラス。そんな彼らの訓練生活はさながら高校の修学旅行のように光り輝いております。

教師(上官)に反抗し、消灯時間が来てもお喋りを続け、夜中に脱走をたくらみ、仲間の訓練をやんややんやと囃し立て、タバコを吸い、酒を飲み、女子とダンスを踊る。お前ら完全に田舎のヤンキーやがな!悪ぶってんだけど根は純粋で、バカで、わかりやすくて、お人好し。

きっとあなたの学校にもこんなボンクラ男子が数人いたのでは?確かにどうしようもないワルなんだけどどこか憎めない愛嬌をもったバカども。得てしてそんな奴らは仲間意識も強い。厳しい訓練生活のなかで敵対と衝突、反抗を繰り返しながら、自然と彼らはチームとして結束していくのです。

真の汚物をあざ笑う

そんな不良生徒どもを厳しくも温かい目で見守る生活指導の体育教師、もとい指揮官であるジョン・ライズマン少佐。自分に対する反抗心をもとにチームとしての結束をうながし、同時に自身の強さ、大きさ、権力をもってチームの信頼をも勝ち取る見事な策略家。

優秀な軍人であり、指揮官でもあるライズマンだが、実は彼自身も命令不服従と独断専行で煙たがられる軍のはみ出し者なのである。ゆえにこの手のチンピラどもの扱いはお手の物。そして彼らに対するシンパシーもおそらくはあったのでしょう。つまりは似た者同士。

司令部にとってはライズマンも汚い12人も単なる捨て駒。作戦が成功すれば御の字。失敗してもバカの始末ができたと高笑い。真に汚いのはこいつらだ。しかしライズマンたちとてそんなことは百も承知。承知で死地へと赴く覚悟。ナチスにも貴様らにも目にモノ見せてやる!

そんな裏事情はアーネスト・ボーグナイン演じるウォーデン少将も、ジョージ・ケネディ演じるアンブラスター少佐も理解していたのでしょうね。ゆえに彼らの模擬戦闘におけるルールを無視したハチャメチャ作戦を、同じ心持ちで嬉々として眺めていたのでしょう。

無能な司令部を象徴するロバート・ライアン演じるブリード大佐をコケにする姿を。徹底的にあざ笑いながら。この模擬戦闘、そして訓練シーンの愉快さ、痛快さは本当にアルドリッチの面目躍如で、こんなに笑える戦争映画があっていいものかと思うぐらい。

これが戦争だ!

愉快痛快軍隊キャンプを締めくくるのは、ライズマンをキリストに見立てたきったねー最後の晩餐。ここで何度も繰り返される作戦の確認がそのまま実戦へとなだれ込む編集の素晴らしさよ。そしてここを転換点に、この映画の様相はガラリと変わってしまうのです。

いよいよ始まった無謀なナチス士官皆殺し作戦。ここで繰り広げられる潜入の緊張感、あっけない作戦の破綻、ド派手な戦闘シーン、次々と倒れていく仲間たち、そして迫られる非情な決断。愉快で痛快な軍隊コメディから一転して映し出されるあまりにリアルな戦場の現実。

地下壕へと閉じ込められたナチスの士官たち。しかしそこにはパーティに参加していた女や一般人も多数紛れ込んでいた。目の前で部下を殺されたライズマン。怒りに震え、復讐の炎が彼の目に宿る。無数の武器が眠る地下壕へとさらに手榴弾を投げ込み、ガソリンを注ぎ込む。

「焼き尽くせ!これが戦争だ!」

戦争に英雄なんていやしないよ

このあまりに衝撃的で非情な決断に、ドン引きしちゃった心やさしい方も多数おられるでしょう。しかし個人的な意見を述べさせていただくと、これがあったからこそこの映画は傑作になった。これをやるのがロバート・アルドリッチ。これこそが戦争の現実。

反骨心をむき出しにした歴戦の勇士ライズマン。彼のもとに集められた汚い12人の服役囚。彼らが厳しい訓練のなかで見せた愉快さ、人間臭さ、成長、そして連帯感。ボクらはそんな12人と+αがいつしか大好きになっていた。彼らのことを頼もしく、愛おしく思い出していた。

そんな彼らが戦争の狂気を体現し、単なる虐殺者へと変貌する瞬間。にっくきナチスを倒すために女や非戦闘員もお構いなく火だるまにし、爆殺するという残虐殺戮ショー。好きになってしまった彼らが憎むべきナチスと同類になってしまった瞬間です。

戦争に良いも悪いもない。いい奴もただの人殺しに変わるのが戦争だ。その数が千、万にのぼればそいつはもう英雄だ。唯一生き残ったライズマン、ジョセフ、ボーレン軍曹にかける少将の言葉がそれを端的に表しております。自分の手は汚さないこいつらこそ真に汚い極悪人だ!

このナチス火だるま爆殺地獄を撮らなければ、アルドリッチはこの年のアカデミー監督賞に輝いていたという話。しかしそんな賞よりも映画としてもっと大事なことがある。アルドリッチはそれを守ったのです。汚名を受けても戦争の真実を、狂気を描くことを選んだのです。

今年、大きな期待をもって公開された『スーサイド・スクワッド』。あの映画が目指すべきスタイルはこれだったはずなのです。感傷や、恋や、絆に逃げるのではなく、描くべきはひたすらドライな悪党の心意気。俺たちこそ真のスーサイド・スクワッド!自殺部隊だバカ野郎!

個人的評価:9/10点

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コメント

  1. ハリー より:

    こんばんわ。
    おお!懐かしいですね。
    確かに、最後の虐殺行為で、この映画は真の戦争映画になったんでしょうね。「フューリー」なんかもそうですが、戦争に行儀なんか無い。もっと峻烈なものだと。「騎士道?ジュネーブ条約?なにそれ?皆殺しだよ」みたいな戦争の本性が垣間見えますね。

    • スパイクロッドspikerod より:

      ハリーさん、コメントありがとうございます!

      この『特攻大作戦』の素晴らしいところは、服役囚のゴロツキ兵士どもが、過酷な訓練生活を通してチームとして結束し、人間的魅力を発散し、いつしか観客の心をとらえた時点で、そんな彼らが戦争の渦のなかであっけなく戦死し、憎むべきナチス以上の残虐行為に手を染めるというあまりに非情な現実を描き出している点ですよね。行儀のいい戦争もなければ、後味の良い戦争なんてものも存在しない。常に戦争というものは峻烈なのですよね。