あのトロマが認めたインディーズ映像制作集団“アストロン6”。彼らの名を一躍世界のボンクラどもへと叩きつけた傑作Z級映画『マンボーグ』。脳ミソ腐ってる奴らは必見だぞ!
作品情報
『マンボーグ(日本劇場公開特別版)』
Manborg
- 2011年/カナダ/64分+25分/PG12
- 監督:スティーヴン・コスタンスキ
- 脚本:スティーヴン・コスタンスキ/ジェレミー・ギレスピー
- 撮影:スティーヴン・コスタンスキ/アダム・ブルックス
- 音楽:ブライアン・ウィアセック/ジェレミー・ギレスピー
- 出演:マシュー・ケネディ/アダム・ブルックス/メレディス・スウィーニー/コナー・スウィーニー/ルドウィグ・リー/ジェレミー・ギレスピー
予告編動画
解説
人類と地獄との最終決戦“ヘルウォーズ”が勃発した近未来を舞台に、人造人間“マンボーグ”としてよみがえった男が、世界を救うために地獄軍に決死の戦いを挑む姿を描いたSFアクションコメディです。
監督は『ファーザーズ・デイ/野獣のはらわた』と『ザ・ヴォイド』のスティーヴン・コスタンスキ。製作は彼が所属するカナダの映像制作集団“アストロン6”。トロマのロイド・カウフマンからも熱烈なラブコールを送られているというZ級映画界期待の星です。
感想と評価/ネタバレ多少
「未体験ゾーンの映画たち 2018」で絶賛公開中の『ザ・ヴォイド』が観たくて観たくて気が狂いそうなものの、バカみたいな上映回数の少なさに思わずテロ行為が頭をよぎり、平静を保つために未見であった『マンボーグ』を借りてきたらほっこり心が洗われた次第。
いや~これは心温まる良い映画ですよ。ここには愛と、情熱と、夢があります。金がなくても映画は撮れるのです(なんと予算はたったの8万円!)。100億かけたひたすら眠たいだけの映画もあれば、8万円でも心底笑って魂が浄化される快作が生まれる場合もあるのです。
日本独自編集
ロジャー・コーマンやトロマの愛すべきクソ映画精神を引き継ぐという、カナダのインディペンデント映像制作集団“アストロン6”のフェイク予告で幕を開ける本作。なんの予備知識も入れずにこの映画を観ましたので、「もしかしたらこれが1時間続くのか?」と思いました。
しかしこれは日本で公開するための独自編集であり、実際はアストロン6製作によるフェイク予告や短編で本編『マンボーグ』を挟み込んだ構成になっていたのです。ですので『マンボーグ』64分+フェイク予告と短編25分=およそ90分が正しい上映時間となります。
ファイヤーマン
最初に登場するフェイク予告は、「ホットな映像の連続」「サスペンス」「腰を抜かす興奮」「エロチックな駆け引き」が炎のようなうなりを上げる『Fireman!(ファイヤーマン)』。これはどうやら『バーニング』のパロディのようで、まんまの植木ばさみシルエットも登場。
しかしフェイク予告のネタとしてはアリだと思いますが、映画としては確実にすってんころりん大惨事なニオイがプンプンします。頼むからこれを映画化しようなんて早まるなよアストロン6!焼けクソにはなるなよ!
レーザー・ゴースト2 レーザー・コーブへの帰還
続いて登場するのは、『ゴーストバスターズ』をちょっと意識したような9分にも及ぶ長編フェイク予告(?)『Lazer Ghosts 2: Return to Laser Cove(レーザー・ゴースト2 ゴースト・コーブへの帰還)』。このフェイク予告はチョー傑作なのでチョー観たい!
復活した凶悪ゴースト“アインシュタイン”を倒すため、奇妙な3バカトリオがピュンピュンレーザー光線で戦いを挑むSFホラーアクションの第2弾!パート2と銘打っているのにパート1は本編も予告も存在していないというのが笑いどころなので、皆さん笑ってやりましょう。
幽霊たちとの息詰まる死闘を、ピュンピュンスケールの日本刀でチャンバラしながら『男たちの挽歌』ごっこまでやらかした、お色気あり、友情あり、涙あり、いいところに段ボールありの鼻血垂れ絶倫級傑作ホラーアクションのはずで、癌には用心しますのでまぢ観てーっす!
ファンタジー・ビヨンド
続いての登場は、美術館とおぼしき場所で繰り広げられる絵に取り憑いたバケモノとギター戦士との戦いを描いた、ストップモーションアニメによる短編作品『Fantasy Beyond(ファンタジー・ビヨンド)』。スティーヴン・コスタンスキの職人ぶりがうかがえる8分間です。
ですが、ボクの趣味的にはいまいちでしたね。けっこうちゃんとしたヒーローもので、せつない別れなんかもあったりして魅せてくれるのですけど、なんかちょっとちゃんとしすぎているのが玉に瑕。でもボク以外のちゃんとしている人には好評な一編だと思います。
マンボーグ
そしてようやく、満を持して、ようやっと本編『Manborg(マンボーグ)』の始まり始まり。
人類と地獄との最終決戦“ヘルウォーズ”において、地獄軍の総大将ドラキュロン伯爵に単身で戦いを挑んだ勇気ある戦士がいた。戦いには敗れ、命を落とした彼だったが、実は秘密裏に彼の遺体は回収され、人造人間“マンボーグ”として復活したのだった!
てな感じのSFホラーアクションなのですが、前述したとおり予算はたったの8万円しかないチョー貧乏映画です。そんな映画に多くを期待してはいけません。スティーヴン・コスタンスキとジェレミー・ギレスピーが『パシフィック・リム』に参加していたからといって、あの興奮の再来を望んではいけません。
でも「俺たちの撮りたい映画を撮る!」という熱い想いは同じなのです。ただ金がないだけ。だったらどうするか?安かろうが、ダサかろうが、笑われようが、んなもんは百も承知でとことんチープに、バカバカしく、全身全霊でクソ映画街道を驀進するのみ!
確かに脚本は突っ込みどころだらけだ。映像は朝の天気予報レベルだ。ギャグの大半はスベり倒しとる。だからどうした!ここには1980年代のB級映画に対する愛と、映画を撮る喜びと、それを深夜にひとりでニヤニヤしながら鑑賞する幸福があふれておるではないか!
こまけーことは言わねえ。ボクと同じ脳ミソ半分腐ってる奴はとりあえず観てみろ!ボクのおすすめは唐突に登場する半裸の筋肉不審者No.1と、人間にせつない恋をした目ん玉つぶれてお口も乾きっぱなしの中ボス男爵だ!No.1の筋肉に燃えて男爵の花束に涙しろ!
バイオコップ
そしてエンディング後のおまけフェイク予告として最後に登場するのが、あの『マニアック・コップ』に盛大なオマージュを捧げたホラーコメディ『Bio-Cop(バイオコップ)』なのだ!この『マンボーグ(日本劇場公開特別版)』最大のヒットは間違いなくこいつだ!
何かの実験の失敗によって全身が溶け出した警官が、全身ドロドロのまんまで現場復帰して、情緒不安定に緑のゲロと目ん玉を撒き散らしながら死にたい一心で大活躍をする、溶けちゃうほどホットな人体破壊と友情物語。何がなんでもアストロン6はこいつを映画化すべきだ!
てなわけで、アストロン6製作による『マンボーグ(日本劇場公開特別版)』の感想でした。しかしこれを観ると余計に『ザ・ヴォイド』が観たくなったなぁ。ああ~観たい観たい!会社をズル休みしてでも観たい!爆破してでも観たい!よし!いっちょ新聞にでも載ってやるか!
個人的評価:6/10点
コメント
これ面白いですよね!
80年代に観まくってたB級“ビデオ”の香りがそこはかとなく漂ってきてたりして。
フェイク予告の「バイオコップ」が一番笑いましたがw
あと、すでにご覧になってるかもしれませんが、
「野獣のはらわたファーザーズデイ」も最高です。
https://www.amazon.co.jp/ファーザーズ・デイ-野獣のはらわた-Blu-ray-アダム・ブルックス/dp/B00IPRV6TO
たけしさん、コメントありがとうございます!
たけしさんやボクのように、あの時代のレンタルビデオ屋を主戦場としていた人間にはなかなかたまらないものがある作品でしたよね。なんの情報もなしに、ジャケットとタイトルだけを頼りに毎週2本ずつ借りてドキドキワクワクしていたレンタルビデオ時代。山のようなカスも引きましたが、そんなカスの中でキラリと光る作品と出会ったときの興奮はもういまはないものですよね。
今回アストロン6の作品はこれが初鑑賞でして、『ファーザーズ・デイ/野獣のはらわた』はまだ観ておりません。でも近いうちに観る予定ですよ。そのときはまだ遊びに来てやってください!