いろいろ抜けてるヘタレな私立探偵と、腕力ですべてを解決する異形の示談屋。そんな凸凹バディのツッコミ役を担うのがおませな13歳、私立探偵の娘ホリー。なんか“アンガーリー・ライス”って名前もいいよな!
作品情報
『ナイスガイズ!』
The Nice Guys
- 2016年/アメリカ/116分/PG12
- 監督:シェーン・ブラック
- 脚本:シェーン・ブラック/アンソニー・バガロッツィ
- 撮影:フィリップ・ルースロ
- 音楽:ジョン・オットマン/デヴィッド・バックリー
- 出演:ラッセル・クロウ/ライアン・ゴズリング/アンガーリー・ライス/マット・ボマー/マーガレット・クアリー/キム・ベイシンガー
予告編動画
解説
1970年代のロサンゼルスを舞台に、さえない私立探偵と暴力で何事も解決する示談屋の凸凹コンビが、ひょんなことからある巨大の陰謀の渦中へと巻き込まれていくというアクションコメディ映画です。
監督と脚本は『ザ・プレデター』のシェーン・ブラック。主演は『ノア 約束の舟』のラッセル・クロウと『ドライヴ』のライアン・ゴズリング。共演には『スパイダーマン:ホームカミング』のアンガーリー・ライス、『マグニフィセント・セブン』のマット・ボマーなど。
感想と評価/ネタバレ無
今月の末に『ラ・ラ・ランド』が控えるライアン・ゴズリング。ボクの涙腺は時折おかしな回線につながるようで、いろんな映画を観に行くたびに流れるこの映画の予告編ですでに滂沱の嵐となっております。年のせいか?いよいよ脳が壊れたか?なんにせよ困ったものです。
そんな阿呆の涙腺を破壊する『ラ・ラ・ランド』に被せるように公開されたのが、今回ご紹介する『ナイスガイズ!』。『ラ・ラ・ランド』のイケメンジャズピアニストとは似ても似つかぬヘッポコ私立探偵役を嬉々として演じており、彼の演技の幅がうかがえますな。
凸凹してないバディムービー
物語はとあるポルノ女優の死から始まります。彼女の叔母から「死んだはずの姪を見た!」との依頼を受けたゴズリング演じる私立探偵のマーチは捜査を開始。その過程でアメリアという若い娘の存在へと辿り着きますが、その前に立ちはだかるのが腕力専門の示談屋ヒーリー。
アメリアから「自分を付け回す変態をボコってくれ」と頼まれた、もはやジョン・グッドマンと見分けのつかないラッセル・クロウ演じるヒーリーによって、左腕をあらぬ方向へと捻じ曲げられたマーチはあっさり降参。しかし今度はヒーリー自身が何者かによって命を狙われる。
アメリアという謎の女性によってつながったふたりの男は、事態解明のために協力して彼女の行方を追いますが、やがてその裏に隠された巨大な陰謀へと巻き込まれていくというのがこの映画のだいたいのあらすじです。でもまあ忘れてくださっても一向に構わないのですけどね。
別にそこに期待していたわけではありませんが、この映画、脚本的にはかなり酷い代物です。ミステリーとしてあまりに破綻しすぎていて正直観るに堪えませんでしたね。それでは凸凹バディムービーとしてギャグへと大きく振りきれているのかといったらそちらも中途半端。
笑える部分も確かにあるのですよ。ゴズリングの間抜けなヘタレっぷりは要所要所では爆笑でした。特にヒーリーに腕をへし折られたときのあられもない悲鳴なんて最高でしたね。イケメンなんだけど妙に抜けた高い声という彼の特性が活かされた見事なコメディアンぶりです。
しかし相棒であるラッセル・クロウがいただけない。彼のことを抑えるツッコミ役でもなければ、一緒にバカをするボケ役でもないなんとも中途半端な立ち位置。唯一ほぼジョン・グッドマンと化した異形の体型だけがただならぬ違和感と存在感を放っておりましたが。
それではこの映画にツッコミ役はいないのかと申しましたら、実はいるのですね。マーチの娘であるおませな13歳のホリーが彼らのツッコミ役なわけです。この映画唯一の良心と言ってもよい彼女の存在が、ダメな大人のダメな振る舞いに的確なツッコミを入れていたのですね。
このトリオ漫才的トライアングルはなかなか良かったと思うのですけど、であるなら、やはりもっとヒーリーのキャラクターはぶっ飛んでいるべきでした。中途半端に暴力的で、中途半端に倫理的な、なんともハジけない彼の存在がこの映画の足かせになっていたように思います。
あるいは、ヒーリー抜きにした父娘バディムービーのほうが面白くなったのでは?とも思いますね。ジョン・グッドマン、もといラッセル・クロウには失礼な話ですが。オフビートになりきれない中途半端なゆるさ、意味をなさない社会派要素もいまいちでした。
挿入歌はいいぞ!歌は!
1970年代を舞台としたのも雰囲気だけで、あまり物語上で活かされているような感じはありませんでしたね。ただしソウルでファンキーな挿入歌の使い方だけは良かったですよ。オープニングで流れてくるのはテンプテーションズの全米No.1ヒット『Papa Was a Rollin’ Stone』。
残念ながら公式動画がありませんでしたので、昨年末、飲んでいた昆布茶を盛大にぶちまけるほどのタイミングで亡くなられたジョージ・マイケルのカバー版をお聴きください。シールの『Killer』とのメドレーバージョンというなかなか面白いカバーになっておりますよ。
そしてヒーリーとマーチがアメリアの行方を追って潜入したパーティで、なんとご本人(そっくりさん?)がびっくり生演奏を聴かせていたのが、アース・ウィンド・アンド・ファイアーの『Boogie Wonderland』と『September』の名曲2曲。
さらにこのパーティ会場で流れていたのが、1970年代のディスコブームの立役者であるビージーズの『Jive Talkin’』。『サタデー・ナイト・フィーバー』は少々やりすぎでしたが、こちらは大好きです。そういやこの曲もジョージ・マイケルがカバーしていたような気が?
今回紹介した曲以外にも、クール・アンド・ザ・ギャングやキッスの楽曲など当時のヒット曲が満載だったようですが、どこで流れていたのかわからない曲も多々あります。そのへんに注目してこの『ナイスガイズ!』を観るのもまた一興かもしれませんね。
『ナイスガイズ!』挿入歌リスト
- Papa Was a Rollin’ Stone – The Temptations
- Get Down On It – Kool & The Gang
- Boogie Oogie Oogie – A Taste of Honey
- September – Earth, Wind & Fire
- Couldn’t Get It Right – Climax Blues Band
- Love and Happiness – Al Green
- Dazz – Brick
- Boogie Wonderland – Earth, Wind & Fire
- Jive Talkin’ – Bee Gees
- Rock and Roll All Nite – Kiss
- Ain’t Got No Home- The Band
- Escape (The Pina Colada Song) – Rupert Holmes
- Lonely Boy – Andrew Gold
- A Horse With No Name – America
- Green Peppers – Herb Alpert & The Tijuana Brass
当時のヒット曲によって彩られたライアン・ゴズリングのヘタレっぷりを愛でる映画。物語を真面目に追い出してから大きく失速する映画ではありますが、中盤ぐらいまでは笑って観てられますので、興味のある方は暇つぶしにでもどうぞ。暇つぶし以上にはなりませんけどね。
個人的評価:4/10点
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