史上最も呪われた人形“アナベル”戦慄の誕生秘話!なんていうと衝撃の実話っぽいですが、事実を基にしているのは本家だけで分家は嘘八百なのよ。実在したのはあいつだけ。すっとぼけた狂気に彩られたあの阿呆面だけ!
作品情報
『アナベル 死霊人形の誕生』
- 原題:Annabelle: Creation
- 製作:2017年/アメリカ/110分/PG12
- 監督:デヴィッド・F・サンドバーグ
- 脚本:ゲイリー・ドーベルマン
- 撮影:マキシム・アレクサンドル
- 音楽:ベンジャミン・ウォルフィッシュ
- 出演:ステファニー・シグマン/タリタ・ベイトマン/ルールー・ウィルソン/アンソニー・ラパリア/ミランダ・オットー
予告編動画
解説
12年前に最愛の娘を亡くした人形職人夫妻。そんな悲しみから抜け出すために孤児の少女たちを自宅へと受け入れたふたりだったが、その日を境に少女たちを不気味な現象が襲い始めるという、史上最も呪われた人形アナベルの誕生秘話を描いたスピンオフシリーズ第2弾。
監督は『ライト/オフ』のデヴィッド・F・サンドバーグ。主演は『007 スペクター』のステファニー・シグマン。共演に『ヴェンジェンス』のタリタ・ベイトマン、『ウィジャ ビギニング ~呪い襲い殺す~』のルールー・ウィルソン、『レディ・ガイ』のアンソニー・ラパリア、『アイ・フランケンシュタイン』のミランダー・オットーなど。
感想と評価/ネタバレ多少
『死霊館』シリーズ全作レビュー企画第4弾。今回ご紹介するのは、第1作に登場した呪われた人形アナベルをフィーチャーしたスピンオフ企画『アナベル 死霊館の人形』の続編にしてその誕生を描く前日譚という、どっちが前で何がうしろなのかすでに前後不覚な酩酊状態。
しかも鑑賞してからこの感想を書くのにずいぶんと放置してしまったことにより、もともとおぼつかない記憶すら曖昧な始末。まあそれだけ放置していたという事実により評価は推して知るべしだとは思いますが、とりあえずはさらっと感想書きますよ、さらっと。
それが君のタイミング?
呪われてようが呪われてまいが、それを愛らしいと抱えて眠るには少々難があるルックスをしているアナベル人形の誕生秘話を描いた本作。腐っても実話をモットーとしているのは本家のみで、このスピンオフ企画は人形の存在以外は全部創作なのであしからず。
1940年代。とある人形職人が例の人形第1号を制作している場面から物語は始まります。職人にはかわいいひとり娘がおりましたが、悲惨な交通事故によって我が子を目の前で失うことに。時は流れて12年後、夫妻は沈んだ心を少しでも癒そうと自宅に孤児を招き入れるが、それがすべての恐怖の引き金となるのだった……というのが簡単なあらすじ。
夫妻の娘ビーの脳天に車が直撃する最初の惨劇はなかなかにショッキングですが、ここでの間やタイミングがヘタクソで思ったような効果をあげられていないのがこの映画のすべてを物語っているかも。地味なことだけどこういうタイミングってホント大事なのよね。
このとき死んだビーの霊があの最悪ルックスの人形に取り憑いてんじゃねーか?という怪現象で性懲りもなくビビらせてくる演出ですが、霊が!人形が!と囃し立てたところで着地点は悪魔なんでしょ?というシリーズのお決まりがバレバレなので特に怖くはありません。
恐怖演出も脅かし絶叫系なので特に新味はありません。っていうか少女たちの絶叫がけっこうな確率で耳障り。デヴィッド・F・サンドバーグって監督は短編のときはワンアイデアを絶妙のタイミングで演出していたというのに、何ゆえ長編になるとこうも雑になるのか?
最大の失態は『ライト/オフ』でもやらかしていた見せすぎ案件。悪魔の存在はシリーズの既成事実だとしても、やはりその姿は巧妙に隠すべきであり、ああもあっさりこってりしっかりした丸出し悪魔像をさらけ出されると思いっきし白けちゃうのよね。
シーツずりずりとか光の明滅とともにちびっとずつ動く案山子とか、短編動画から流用した小ネタはいいんだけど核となる大ネタがことごとくダメ。「やっぱこの人って長編向いてねーよなぁ~」と思われても致し方ありませんな。
まだまだ続くよ『死霊館』
元締めであるジェームズ・ワンはこのへんの塩梅が本当に巧みで、着地点はバレバレなんだけどそれをあの手この手でカモフラージュしながら最後にチラッと現出させるのですが、フォロワーであるジョン・R・レオネッティやデヴィッド・F・サンドバーグにはそういうわびさびが理解できないようです。
まあ前作『アナベル 死霊館の人形』へといかにつなげるかの労力は認めますが、それは単に「偉いね~ちゃんとつなげられたね~」ってだけの話で、この映画単独の評価とは別個のものです。ちゃんとつながっただけで一本の映画としては非常に中途半端な着地点です。
あと個人的に気になったのは、主役であるふたりの少女の役どころは逆のほうが良かったのでは?ということ。身体の弱い者は心も弱く、ゆえに悪魔に狙われるというのはちょいと安易すぎ。「健全なる精神は健全なる身体に宿る(誤訳)」はとんでもない嘘っぱちなんじゃから。
一見すると身体も心も弱そうなジャニスが本当の強さを有し、健康快活そうなリンダのほうが心の闇を抱えていた、ってほうが映画としては面白くなったと思うのですけどね。動かない足を引きずりながら親友のために奮闘するジャニスの姿のほうが絵になり、ラストの無力感と不気味さも際立ったと思うのですけどね。
てなところで今回のさらっとした『アナベル 死霊人形の誕生』評これにてお開き。本編の最後で次回作『死霊館のシスター』へのどうでもいい伏線がありますので、気になる方はしばし停止ボタンの我慢を。ちなみに『死霊館のシスター』は9月21日からの公開です。
個人的評価:3/10点
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