『ライト/オフ』感想とイラスト 元ネタだけで十分かも

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映画『ライト/オフ』ロッタ・ロステンのイラスト(似顔絵)
明滅する照明のなか、闇とともにこちらへと忍び寄る正体不明の何か。何かが何であるのかを考え始めた途端に恐怖はあらぬ方向へ。こりゃ3分足らずで十分だったかもしれませんな。

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作品情報

『ライト/オフ』
Lights Out

  • 2016年/アメリカ/81分
  • 監督:デヴィッド・F・サンドバーグ
  • 脚本:エリック・ハイセラー
  • 撮影:マーク・スパイサー
  • 音楽:ベンジャミン・フォルフィッシュ
  • 出演:テリーサ・パーマー/ガブリエル・ベイトマン/アレクサンダー・ディペルシア/マリア・ベロ

参考 Lights Out (2016) – IMDb

予告編動画

解説

明かりが消えると闇から姿を現す謎の存在に取り憑かれた家族が体験する恐怖と、呪われた運命から逃れるための決死の闘いを描いたホラー映画です。

監督は『アナベル 死霊人形の誕生』のデヴィッド・F・サンドバーグで、これが長編監督デビュー作。『ソウ』『死霊館』『インシディアス』シリーズで知られる現代のホラーレジェンド、ジェームズ・ワン製作。

主演は『ハクソー・リッジ』のテリーサ・パーマー。共演にはNetflixオリジナルの『ベンジー』で主演を張った子役のガブリエル・ベイトマン、『プリズナーズ』のマリア・ベロなど。

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感想と評価/ネタバレ有

全世界で1億5000万回も再生されたという短編ホラー動画をきっかけに、『ソウ』『死霊館』シリーズのジェームズ・ワンのプロデュースによってハリウッドデビューを飾ったシンデレラボーイ、デヴィッド・F・サンドバーグ。うん、確かにこりゃドキッとするわ。

3分に満たないこの短編動画を長編へとブラッシュアップさせたのが本作『ライト/オフ』なのですが、短編ではイカしたアイデアであっても、それが長編に耐えうるかどうかはさらなるセンスが問われるのですよね。うん、残念ながらそんなセンスはなかったようだわ。

時には起こせよムーブメント

深夜のとある会社。社長のポールは鬱病ぎみの妻ソフィーのことが心配で、従業員のエスターが目撃した異変を気に留める余裕はなかった。しかし彼が帰宅しようとすると、突然ライトが明滅し始め、暗闇のなかから現れた何者かの力によって惨殺されてしまう。

ポール亡きあと、妻ソフィーの症状はさらに悪化。暗闇でいるはずのない人物と会話している母を気遣う息子のマーティンだったが、そんな彼にも暗闇から何者かが忍び寄る。恐怖から眠れない日々が続くマーティンは、早くに家を出た姉レベッカへと助けを乞うのだったが……。

元ネタの短編動画をそのままリメイクしたようなこのオープニングシークエンスは、いきなり見せすぎなような気もしますが、なかなかの不穏さでゾクゾクしますよね。ちなみにエスターを演じたロッタ・ロステンは監督の奥さんで、短編動画の主演女優さんでもあります。

「なんでこんな太ったおばさんを?」と最初は思ったのですが、この『ライト/オフ』を観終えた今となっては、あえて彼女を主役に据えてニッチな路線をひた走っても面白かったなぁとは思います。熟女ホラー、デブセンホラーという新大陸を開拓しても面白かった。

詰まるところ、この『ライト/オフ』には元ネタの短編動画以上のアイデアが何もないのですよね。だったら太ったおばさんでニッチなマニアを開拓し、一大デブセン熟女ホラームーブメントを巻き起こすぐらいの悪夢を見てほしかった。どこも金は出さんでしょうがね。

こじつけやっつけキャラ設定

とりあえず話題になって多少の金は手にしたので、3分足らずの内容をなんとか長編用に仕立て直さねばならぬというわけで、暗闇に浮かび上がる謎の存在に“ダイアナ”というキャラクターを与えたのですが、このキャラ付けのやっつけ仕事が大きな失態を招くことに。

ダイアナは少女時代のソフィーが入院していた精神病棟の患者で、極度の光線過敏症であり、他人の頭に侵入する超能力らしきものも備えた危険な存在で、弱ったソフィーの心へと巧みに取り入り、彼女を支配、利用していた模様。しかしあるとき事件が起こるのです。

参考 光線過敏 – Wikipedia

医師による治療というか実験によって、大量の強烈な光を浴びせられたダイアナの肉体は消失してしまいます。しかし彼女は死んだのではなく、ソフィーの意識へと寄生し、なんとかその存在を維持していたのですが、それが可能なのはソフィーの心が弱っているときだけ。

だから彼女の心の支えとなる人物を力づくで排除し、自らの延命のために彼女を支配、利用し続けていたというわけ。これがブラッシュアップのためのこじつけやっつけキャラ設定なのですが、このへんの事情をポールが調べた資料によって全部説明してしまう芸のなさ。

暗闇に浮かぶ正体不明の何か。が、不気味な恐怖を誘うわけであって、その正体は困難と奔走の末にそれなりには解明されるべきですが、こんなにあっさりとなんの苦労もなく面白味のない正体を明かされては、恐怖もへったくれもあったもんじゃありません。

結局のところダイアナはゴーストなのか?実体があるのか?暗闇でしか存在できないのか?それとも光が弱点なのか?やっつけ設定は細部がザルすぎて辻褄が合いませんし、適当なキャラ付けによるお喋り、容貌のわかりやすいグロテスク化、アグレッシブさも恐怖半減。

我慢が可能ないい塩梅

ラストはこの手のホラーの常套として、家族の絆の確認と再生、つまりは子供たちを守るためにソフィーが自殺、それによってダイアナも消滅というオチなのですが、てことはやっぱりダイアナには実体がないんじゃねえの?とも思うのですが、なんだかもうよくわかりません。

ブラックライトを当てたら姿が見えるというアイデアも面白いのですが、これ幸いと光を当てたら皮膚がただれるってのもまさにザル設定の象徴で、いよいよ彼女はどういう存在なのか意味不明です。そのくせ銃で撃たれても「んなもん効かん!」ってなんなのあーた?

明滅する照明のなかで、バッ!ババッ!と瞬間移動のごとく近づいてくる真っ黒な何かという薄気味悪い恐怖への理由付けとして、あれやこれやと辻褄合わせをしているうちに矛盾だらけになっちまったって感じですね。結局のところ長編向きではなかったということかな。

ソフィーを演じたマリア・ベロの生きていることにほとほと疲れたやつれ加減と老け具合は、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』での熟女チアガールプレイとはまた違った怖さがあっただけに、彼女の狂気とダイアナがもっとシンクロしたほうが面白かったような気も。

とまあ文句ばっかり並べ立てたいわゆる酷評感想になっちまいましたが、これはこれで暇つぶしにはちょうど良いかもしれません。無理から長編とはいえ81分という短さが何より我慢できるいい塩梅。余計なエピローグもなくスパッと終わるところは好感がもてますよね。

別エンディング

と思ったら、どうやらボツになった後日談、いわゆる別エンディングが当初は存在していた模様。おそらくはエンドクレジットの途中でこれを流すつもりだったのでしょうね(別エンディングを含めた未公開シーンはDVD&Blu-rayの特典映像で視聴可能)。

事件後、晴れてマーティンの養育権が正式に認められ、恋人ポールを含めた3人での生活が始まったレベッカ。しかしその夜、暗闇で誰かと会話をしているマーティンの姿が。相手はなんとダイアナ!彼女は事件で心に傷を負ったマーティンに寄生して生き延びていたのだ!

ふたたびダイアナと対峙したレベッカは、危機一髪のところを周到に準備していたブラックライト、そして超強力ライトの一斉照射によってダイアナの肉体をしょぼいCGの炎で焼き尽くすのであった!ちゃんちゃん♪

このクソエンディングが採用されていたとしたらさらに評価は下がったことでしょうね。まあ正式に決定した続編への色気として削ったのかもしれませんが、ホントありきたりな蛇足中の蛇足です。っていうか続編作るんかい!?すでにネタ切れやのにいったいどうすんのあんた!

あ!今度こそは最愛の奥様ロッタ・ロステンを主役に撮る気なのか!?なら許す!彼女と組んだ短編ホラー動画にはどれもそれなりの魅力があるのだから、初心へと返ってやり直すのだ!(ふたりの別の短編ホラー作品が観てみたいという方は下記を参照)

参考 ponysmasher – YouTube

個人的評価:4/10点

DVD&Blu-ray

VOD・動画配信

『ライト/オフ』が観られる動画配信サービスは、TSUTAYA TV、。おすすめは月額562円とコスパ最高なうえに毎月もらえるポイントによって視聴可能なauビデオパス(2018年12月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください)。

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コメント

  1. (눈_눈) より:

    3分短編に不穏な日常ドラマパートたして15分くらいのドラマにして欲しかったなあ。80分でさえ個人的には長かったですわ。

    僕はこの手の恐怖にキャラクター性や正体はいらない派です。
    川原でしょりしょり音が鳴る原因不明さが怖いのであって、それに小豆洗いとキャラ付けしちゃったらただの間抜けな爺さんなんだもの。

    • スパイクロッドスパイクロッド より:

      (눈_눈)さん、コメントありがとうございます!

      同じく80分でも長く感じました。そして同じくこの手の恐怖にキャラクターや正体はいらない派です。ですからこの無理から長編は残念ながら面白くなかった。元ネタの短編動画からしてなんの説明もないからこそ怖く面白いというのに、なんでそんな根本原理がわからんのですかね?まあ話題になったからこの短編をとにかく長編に仕立て上げろと無理な注文をされたのかもしれませんが、もうちょっと別な方向に舵を切ってほしかったなぁ。