『死霊館のシスター』感想とイラスト ゴシック蹴飛ばすアクションホラー

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映画『死霊館のシスター』タイッサ・ファーミガのイラスト(似顔絵)

ルーマニアの山奥で不気味にたたずむ修道院。そこで起きた謎のシスター自殺事件。暗い森から、深い闇から怪しげに漂ってくるゴシック調。そして繰り広げられるアクションホラー。アクションホラー?あれ?なんかちょっと……選択……間違ってません?

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作品情報

『死霊館のシスター』

  • 原題:The Nun
  • 製作:2018年/アメリカ/96分
  • 監督:コリン・ハーディ
  • 脚本:ゲイリー・ドーベルマン
  • 撮影:マキシム・アレクサンドル
  • 音楽:アベル・コジェニオウスキ
  • 出演:タイッサ・ファーミガ/デミアン・ビチル/ジョナ・ブロケ

参考 死霊館のシスター – Wikipedia

予告編動画

解説

1952年。ルーマニアの修道院で起きた不可解なシスター自殺事件を調査するため、バチカンから派遣された神父と見習いシスターが対決することとなる、悪魔の尼僧“ヴァラク”の恐怖を描いた大ヒットホラーシリーズ『死霊館』のスピンオフ作品です。

監督は『ザ・ハロウ/侵蝕』で注目された新鋭コリン・ハーディ。主演は本家『死霊館』で主人公ロレイン・ウォーレンを演じるヴェラ・ファーミガの実妹タイッサ・ファーミガ。共演に『エイリアン:コヴェナント』のデミアン・ビチル、『エル ELLE』のジョナ・ブロケなど。

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感想と評価/ネタバレ多少

先月から続けてきた『死霊館』シリーズ全作レビュー企画はすべてこの日のためにあった!満を持してのシリーズ最新作『死霊館のシスター』ついに登場!ロレイン夫妻を苦しめた悪魔の尼僧ヴァラク誕生秘話の恐怖を、戦慄を、今ここに熱く綴ろうではないかっ!

な~んてテンションとは程遠いんですなぁこれが。きわめて冷静であり、辛辣であり、空虚な心持ちであります。てなわけで最初に宣言しておきますが辛口です。別につとめて辛口に生きてきたわけではないが辛口です。本人には皆目自覚がありませんでしたが、他人に指摘されて初めて気づきました。俺はトリニダード・スコーピオン・ブッチ・テイラーだったのか!と。

すいません、ただ言いたかっただけです。長いのでブッチでいいです。それではスパイクロッド改めブッチによる『死霊館のシスター』自覚はないのに辛口レビュー、ぱっぱと書くのでさっさと読んでとっとと寝ろ。

キレイなレールですっ転ぶ

「衝撃的実話の映画化」をお題目としながら、オールドホラーへの敬愛と挑戦によってスタートした『死霊館』シリーズ。しかし『アナベル』から始まるスピンオフ企画はすべて完全なるフィクションであり、オールドホラーへのスタンスも回を重ねるごとに曖昧に。

そんな下降線のなか登場した最新作『死霊館のシスター』の舞台はルーマニアの山奥にひっそりとたたずむ不気味な修道院であり、主に夜であり、暗い森と深い闇であり、つまりはゴシックホラー的なニオイがプンプン漂う舞台設定とビジュアルはキマっております。

そんな修道院で起きた若きシスターの自殺。その背後に秘められた謎を調査するため、バチカンから派遣された訳ありベテランエクソシストと、「土地勘があって適任」となぜか行ったこともないルーマニア行きに指名された見習いシスターが直面する、この修道院を闇から支配する悪魔の尼僧ヴァラクの存在。

シリーズの時系列では最も古く、ロレイン夫妻を苦しめ続けてきた元凶である悪魔ヴァラク出現の瞬間にゴシック的スポットを当てた本作の成功はすでに約束されたもののようにも思えますが、キレイなレールの上で見事にすっ転ぶのだから映画とは面白い、いやさ難しい。

センスはありそなコリン・ハーディ

それではなにゆえすっ転んだのか?先述したとおり設定、ビジュアル、世界観は申し分ない。美しく不気味だ。しかしビタイチ怖くはない。なにゆえ怖くないのか?それは恐怖戦術を仕掛けるタイミングがシリーズ最弱と言ってもよいほどヘタクソなド直球だからだ。

「はーい皆さんここでオバケが出ますよ!」「わかりました先生!」てな塩梅なのだ。そこにはスカシも、ズラしも存在しない安心安全な良心経営。我々は何を出されるのか?いくらぶん取られるのか?ギリギリの緊張感を味わうためにあえてぼったくりバーへと身を投じたというのにだ。

それはゴシックホラー的世界観で物理的モンスターパニックをやってしまっている水と油にも言えること。ゴシックの旨味である心霊、呪い、怪奇ではなく、ここでもド直球なゾンビ、怪物、悪魔どもの物理的直接攻撃。ならば人間も物理で反撃するのみ。

てなわけで繰り広げられる、殴って掴んで蹴っ飛ばしてライフルぶっ放すアクションホラー化現象。にしては描写がぬるい。なんせシリーズ初のG指定だ。アクションホラー化に付随して発生するであろうあらゆる破壊に備えてレイティングは上げるべきなのに、ここで下げるとはいったいどういう了見だ?

ゴシックホラー的世界観によるパッと見のビジュアルは悪くない。最悪な環境にたたずむ古城のような修道院。冷蔵室(?)のようなところで冷気に包まれ静かに固く座っている死体。白と黒のコントラストで一心不乱に狂い祈るシスター48。画としては悪くない。

しかしこれが動き出すと途端に怖くも面白くもなくなってしまうのだ。ビジュアリストとしてのセンスは認めるが演出家としての力量が圧倒的に足らんのだ。このシリーズのスピンオフを任されている監督はこんなんばっかりじゃが、問題はそれだけではないのである。

名前はイカついドーベルマン

『アナベル 死霊館の人形』から続くスピンオフ作品すべての脚本を担当しているゲイリー・ドーベルマン。こいつがとにかく人間を、ドラマを描くことができないのだ。『アナベル』シリーズも酷かったが本作はそれに輪をかけてキャラクターが、ドラマが貧弱である。

悪魔との因縁も、それへと立ち向かう動機も、葛藤も、信念もここにはないのだ。なんかいわくありげにこの事件の調査を命じられたベテランエクソシストと見習いシスターが、雰囲気だけは大層な修道院というかお化け屋敷で右往左往しながら結局なにも解決しないのだ。

なんというかヘッポコ悪魔祓いコンビによるドタバタ心霊探訪記って感じなら理解もできるのだが、大真面目にこれをやっているから始末に悪い。バーク神父のトラウマ話もやるならやるでちゃんと活用して解決しろ。不要な設定と必要な設定の欠如がなんぼなんでも多すぎる。

だいたい今作の主役にわざわざヴェラ・ファーミガの実妹タイッサを起用したというのに、ロレインとはなんの関係も因縁もなかったってどゆこと?普通そこは関連づけると思うんだが新手のスカシなの?フレンチーのカモフラージュなの?あのつなげ方もどうかと思うがの。

まあロレインとは一切の縁もゆかりもなかったってのは百歩譲って認めるとして、ヴァラクとも、ルーマニアとも、結局のところなんらの因縁も存在していなかったってのはさらにどゆこと?もしかして「マリア様の思し召し」ですべて解決?オールOK?あれこそ本作最大最強の噴飯案件だったと思うのですが。

てな感じでとにかくゲイリー・ドーベルマンの脚本が酷いのだ。適当すぎるのだ。バカとしか思えんのだ。ジェームズ・ワンはさっさとこいつを首にすることを検討したほうが賢明であろう。え?続投!?っていうか監督に昇格??うっそぉぉぉおん♡

まだまだ続くよシリーズは

キレイなレールを敷かれた本作『死霊館のシスター』を見事に脱線事故らせたセンスはあるけど実力不足の監督コリン・ハーディと、ちゃんと書けないならもう二度と書くな!としか思えん噴飯脚本家で名前だけは無駄にイカついゲイリー・ドーベルマン。

さっさとこいつは首にするべきだと先述しましたが、どうやら『アナベル』シリーズ第3作の監督へと昇格することが現在の既定路線のようです。ジェームズ・ワンって監督としての才能はあるけど人を見る目、プロデュース能力には若干の難ありのようですね。

いや、映画の成否とは出来不出来ではなくどれだけ当たったかによるものなので、ヒットさえすればすべて正義なのかもしれない。本作も全米で猛烈なロケットスタートをかましたようですので、有象無象を起用してのシリーズ展開はまだまだ続くのでしょう。

参考  【全米映画ランキング】「死霊館のシスター」が9月歴代2位の興収で大ヒットスタート – 映画.com

てなわけで、人生で一度も自分が辛口だとは自覚したことがない素直で清らかな心の持ち主スパイクロッド改めブッチによる『死霊館のシスター』評、これにてお開きであります。重ねて言いますがことさら辛口に書いているわけではありませんよ。素直な感情を清らかに発露しているだけでありますよって。

それでは、ぱっぱと書いたものをさっさと読んでくれたでしょうからもうとっとと寝ろ!そのまま二度と目覚めるな!

個人的評価:3/10点

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『死霊館』シリーズの感想はこちら

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ホラー
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スパイクロッド

映画を観たらとりあえず感想とイラストを書く(描く)人畜無害な釘バット。ちなみにイラストはぺんてるの筆ペン一本によるアナログ描き。

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コメント

  1. かおう より:

    はじめまして。
    コメント失礼致します。
    ホラー映画が大好きで、死霊館シリーズを愛しているのですが
    今回は何ともw
    スパイクロッドさんの記事の方が面白かったです。

    いっそ、白黒コントラストのシスターたちが、祈り、歌い、踊って、
    ミュージカルっぽくしちゃったらよかったのに。と思いました。
    ヴィジュアル感、すごくゴシックで素敵だったので、勿体ない映画でした。

    • かおうさん、コメントありがとうございます!

      ボクも本家『死霊館』シリーズは大好きなのですが、スピンオフのほうはどうにも……。ホント、白黒コントラストのシスター48が祈って歌って踊り狂うミュージカルホラーまで振りきれていたら楽しめたのですけど、真面目なのかふざけているのかどうにも中途半端な立ち位置でした。物理的なアクションホラーに振りきれるなら振りきれるでもうちょっとやりようがあったと思いますよね。