マーベル史上記録的な不評と不入りという二冠を達成した本作。確かに後半はなんじゃいこりゃ!?でも見捨てないで。よ~く観たらそんなに悪くもないから。
作品情報
『ファンタスティック・フォー』
Fantastic Four
- 2015年/アメリカ/100分
- 監督:ジョシュ・トランク
- 原作:スタン・リー/ジャック・カービー
- 脚本:ジェレミー・スレイター/サイモン・キンバーグ/ジョシュ・トランク
- 撮影:マシュー・ジェンセン
- 音楽:マルコ・ベルトラミ/フィリップ・グラス
- 出演:マイルズ・テラー/ケイト・マーラ/マイケル・B・ジョーダン/ジェイミー・ベル/トビー・ケベル/レグ・E・キャシー
参考 ファンタスティック・フォー (2015年の映画) – Wikipedia
予告編動画
解説
およそヒーロー映画とは思えない暗黒面ばかりに執着したSFヒーロー映画です。マーベルの同名コミックスの映画化で、今回はキャストを一新してのリブート版。
監督はSF青春ドラマ『クロニクル』で一躍時の人となったジョシュ・トランク。主演は『セッション』のマイルズ・テラー。共演に『オデッセイ』のケイト・マーラ、『クリード チャンプを継ぐ男』のマイケル・Bジョーダン、『リトル・ダンサー』のジェイミー・ベル、『怪物はささやく』のトビー・ケベルなど。
あらすじ
発明オタクの少年リード・リチャーズ。彼の夢は人類初の“テレポート”に成功すること。同級生のベン・グリムの力を借りて、ついに物質転送装置の実験に成功。装置は謎の砂を持ち帰っていた。
7年後。科学ではなく手品だとしてまったく相手にされなかったこの発明に、バクスター財団のストーム博士(レグ・E・キャシー)が注目。財団の学生研究員としてスカウトされるリード(マイルズ・テラー)。彼が発明した物質転送装置は、地球のどこかではなく異次元とつながっていたというのだ。
博士の養女スー(ケイト・マーラ)、息子のジョニー(マイケル・B・ジョーダン)、この研究の第一人者であるビクター(トビー・ケベル)とともについに装置を完成させたリード。しかし財団の方針で自分たちは被験者になれないことを知らされる。
納得がいかないリードは自分たちだけで異次元への転送を決意。親友のベン(ジェイミー・ベル)を呼び寄せて、ひそかに装置を起動。ついに人類初のテレポートに成功した彼らが見たものは、想像を絶する世界であった!
感想と評価/ネタバレ無
ペラッペラすぎて記憶の片隅にすら残留していない旧『ファンタスティック・フォー』シリーズ。なのでリブート版にも興味薄でしたが、監督が『クロニクル』のジョシュ・トランクとな?がぜん興味がわいてきた。
と思ったら本国アメリカでマーベル史上記録的な不評と不入り。続いて日本でも大コケ。予告編にもまったく興味がひかれず、結果として劇場鑑賞を中止。今回のレンタルDVDでの鑑賞と相成りました。さて、どこがいけなかったんだろうかこの映画?
これはヒーロー映画ではない?
あまりの酷評ぶりに期待値が下がりに下がっていたせいか、ボクの評価はけっこう悪くない。っていうか皆さんが「退屈だ!原作の引き延ばしだ!」と騒いでおられた前半から中盤に関しては、予想に反してかなりの高評価。
漫画全般に対して興味薄なのでもちろん原作は未読。旧シリーズも忘却の彼方。ヒーローものも好きではない。そんな無知蒙昧ぶりが功を奏したのか、いわゆるヒーローものというよりかは『クロニクル』と同じSF青春ドラマとして堪能した次第。
っていうか『クロニクル』と一緒。居場所を見つけられない、不器用な若者たちの苦悩。ビッグバジェットの大作だけに『クロニクル』ほどの重さと暗さには達していないものの、普通に考えたらかなり重くて暗い。それがいい。
オタクにコミュ障にヤンキーにホワイトトラッシュ。そんな世界に順応できていない若者たちが超人的な能力を手にしたことにより、さらに追い込まれ、苦悩し、やがてその人との違いを受け入れなけばならないという試練。
このドラマがきちんと機能していたかといったら「否」なのですけど、こういう重くて暗いドラマをマーベルのヒーロー映画でやろうとした心意気は買いです。少なくともペラッペラの旧シリーズなんかよりはるかに面白い。
もしかしてホラー映画?
ドラマの重さと暗さは、もちろん映像と演出にも影響しています。物質転送装置の実験によって人ではない怪物に変わってしまう。これはあきらかにクローネンバーグの傑作『ザ・フライ』を意識しています。
そんなグロゲチョハードSFホラー『ザ・フライ』にオマージュを捧げている本作。必然的に随所でホラー的演出が満載なのです。まず特筆すべきはリードのゴム人間への変異でしょう。
フリチンで手術台に固定されたリードの体。ありえないぐらいに伸びきった彼の手足。このリアルな質感と状態がすこぶる気持ち悪い。通気口の中をズリズリ這い進む姿なんてまさに怪物。そんな姿に変わってしまった彼の悲哀。たまりません。
同じく岩の怪物へと変わってしまったベンの絶望。全身が炎に包まれたジョニーの狂気。防護服と一体化し破滅の化身と化したビクター。そんなビクターが帰還した研究所で起こす血の惨劇。「ホントにG指定でいいの?」ってぐらいのホラーっぷりです。
ただ異次元の映像まで暗すぎて、いまいち何をしているのかわかりづらいという難点はありました。この異次元の描写にまったく面白味がなかったのは大きな失点ですね。
彼なりのヒーロー映画だよ
というわけで、世間での悪評に反して意外と楽しめてしまったリブート版『ファンタスティック・フォー』。この悪評の原因は想像と違うものを見せられたからではなかろうか?「こんな暗くて重たいヒーロー映画なんてヤダ!」と。
まあ確かに後半の展開はひどいのですけどね。あえてボクがここで語るまでもなく、SNSやブログで皆さま吠えに吠えていたとおりです。ここに関してはなんの異論もありません。本音を申せばボクも吠えて噛みつきたい!
しかし、ジョシュ・トランクという監督にいったい何を期待するのか?ということでしょう。彼にマーベルらしい快活なヒーロー映画が撮れるとは最初から思えない。『クロニクル』を観たらわかりそうなもんですけど、なんで彼にオファーしたのかな?
スケールは違うけど、デヴィッド・リンチに『砂の惑星』をオファーしたのと一緒。リンチの『砂の惑星』も大好きだけど、トランクの『ファンタスティック・フォー』も悪くない。これが彼なりのスーパーヒーロー映画なのだと思いますよ。
ジョシュ・トランクにはこんな失敗など気にせず、もっと小さな予算でいいから自分の撮りたい映画、やりたい世界を構築していってほしいですね。そう、もっと暗くて、重たくて、深くて、まったく楽しくないトラウマ映画を……。
個人的評価:5/10点
DVD&Blu-ray
VOD・動画配信
『ファンタスティック・フォー』が観られる動画配信サービスは
追記/祝!ラジー賞受賞
その年に公開された最低映画を決めるゴールデン・ラズベリー賞(通称ラジー賞)。このたび発表された2015年度のラジー賞において、この『ファンタスティック・フォー』は見事に最低作品賞・最低監督賞・最低リメイク盗作続編賞の3冠に輝きました!
いや~よっぽど嫌われているんですねこの映画。確かに後半は酷いですよ。皆さんおっしゃるとおり最悪ですよ。でも『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』なんかと並んで最低作品賞呼ばわりされるのには納得いかん!
中盤までの暗黒青春ホラー映画路線は良かったじゃないか!って、あ!中盤まではなまじ悪くなかっただけに、より後半の駆け足迷走スカスカぶりが際立ってしまったということか?う~ん納得。って納得しちゃいかん!
コメント
すみません…間違えてトラックバック送ってしまいました…消しておいて下さい。(恥)
リブート版が公開されていたんですね。あのお気楽ぺらっぺら作品が、そこまで重くて暗いヒーローものになるなんて…。
『リトル・ダンサー』の主演の子が、あの岩男の役を演じているのでしょうか?
なんだか色々気になってきました。
いつかこのリブート版を観た時は、改めてコメントに伺いますね~。失礼しました。
宵乃さんコメントありがとうございます!
タイトルが同じですからね、少々紛らわしかったかもしれません。ご要望どおりTBは削除しておきましたので、またこのリブート版をご覧になられましたらどうぞ再度のTBを送ってください。お待ちしております。
ジェイミー・ベルは好きな役者なんですけどね。『リトル・ダンサー』以降はなんか役に恵まれていない印象です。今回も岩男ですからね。本人の顔が映っているのは中盤までです。そっからはず~と岩男。もはや誰なのかわかりませぬ。
僕も評判があまり良くないのを聞いていたのでかなりハードルが下がった状態だったこともあってか、結構楽しんで観ました。
ジョシュ・トランクさんは若い子たちの仲間感というかそういうとこの描き方がうまいなと思います。
多分ないと思いますが、続編があるなら観てみたいかも。
らびッとさんコメントありがとうございます!
しばらくインフルエンザに罹患して伏せっておりましたので、お返事が遅れてしまって申し訳ありません。ボクは旧シリーズをまったく評価しておりませんので、この実に評判の悪いリブート版のほうがはるかに好きでしたね。それなりにジョシュ・トランクという監督の味は出ていたと思います。後半はなかったこととして(笑)。