『ウィンチェスターハウス』感想とイラスト 最後のアレはちゃぶ台返し?

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映画『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』ヘレン・ミレンのイラスト(似顔絵)

24時間365日、38年間にわたって続けられた終わりなき屋敷の増改築。それは呪われたウィンチェスター家を守るため。私たちが造り出した凶器によって命を落とした人々を救うため。今日も私はとんてんかん……。

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作品情報

『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』

  • 原題:Winchester
  • 製作:2018年/オーストラリア、アメリカ/99分
  • 監督:スピエリッグ兄弟
  • 脚本:トム・ヴォーン/スピエリッグ兄弟
  • 撮影:ベン・ノット
  • 音楽:ピーター・スピエリッグ
  • 出演:ヘレン・ミレン/ジェイソン・クラーク/サラ・スヌーク

参考 ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷 – Wikipedia

予告編動画

解説

銃の製造販売によって巨万の富を築いたウィンチェスター家。しかしその呪われた成功によって、何者かに怯えるように終わりのない増改築が続けられていく屋敷の恐怖を描いた実話に基づく伝記ホラーです。

監督は『ジグソウ:ソウ・レガシー』のスピエリッグ兄弟。主演はこの手のホラー映画ではめったにお目にかかれない『クィーン』のオスカー女優ヘレン・ミレン。共演には『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェイソン・クラーク、『ジェサベル』のサラ・スヌークなど。

参考 ウィンチェスター・ミステリー・ハウス – Wikipedia

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感想と評価/ネタバレ有

現在もカリフォルニア州サンノゼに実在し、貴重な観光資源としても大活躍中の北米が誇る大人気幽霊屋敷“ウィンチェスター・ミステリー・ハウス”。そんな金のなる幽霊屋敷の真実へと迫ったのが本作『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』。

いつもながらクソダサい副題は余計ですが、こんな異常な屋敷が誰によって、なんのために建てられたのかには非常に興味があります。尋常ではない労力によって続けられた異常行動には人のどんな狂気が隠されているのか?ボクはそれが知りたかったんだけどなぁ……。

びっくりどっきり幽霊退治

1906年。銃の製造販売によって巨万の富を築いたウィンチェスター家の未亡人サラ(ヘレン・ミレン)。夫と娘を相次いで亡くした彼女は、それはウィンチェスターライフルによって死んだ者たちの呪いだと考え、彼らの霊を鎮めるために24時間365日屋敷の増改築を続けていた。

そんな彼女の言動に疑問をいだいたウィンチェスター社の経営陣は、彼女から経営権を剥奪するために精神科医のエリック(ジェイソン・クラーク)を送り込む。しかしそこでエリックが見たものは、現実だとしか思えない超常現象の数々だった……というのが簡単なあらすじ。

設計の基本計画もないまま、7階にも及ぶ巨大さ、およそ160の個室、豪華な内装、そしてどこにも通じていないドアや階段などが無秩序に増改築、しかもこれが24時間365日にわたって続けられたというキチガイの所業ウィンチェスター・ミステリー・ハウス。

都合38年間にもわたってこれが続けられたという事実だけでとてつもない妄執と狂気を感じさせますが、残念ながらこの映画はその張本人サラ・ウィンチェスターの実像や心の闇へと迫るサイコスリラーではなく、ド直球のびっくりどっきりお化け屋敷映画でありました。

ウィンチェスター家にかけられた呪いは真実であり、屋敷のなかをなかばゾンビ化した幽霊が徘徊し、彼らの無念を晴らし、除霊し、対決するびっくりどっきりゴーストバスター映画。いやまあ想像とは違ったけどそれでもいい。それでもいいけどこりゃド直球すぎるわ。

ゴシックホラーとしての旨味

うしろに!突然!誰かが!いつものタイミングで!見慣れた顔で!コンニチワ!だなんて、お化け屋敷映画を撮るなら撮るでもうちょっと工夫、アイデア、意外性を盛り込んでくれないと正直きつすぎますわ。びっくりどっきりさせるだけで怖くも面白くもありゃしません。

だいたい肝心なる屋敷の造形や見せ方が弱すぎる。実在のものなのであんまり無茶はできんとは思いますが、あの程度の異常建築物ではインパクトが弱いし、それなら撮り方を工夫してもっとゴシックホラーとしての旨味を提供してほしかった。

屋敷の構造、照明、構図、長さ、タイミング、古いところでは『回転』、新しいところでは『クリムゾン・ピーク』なんかを観て勉強し直してきてよねスピエリッグブラザーズ。

ミイラ取りがミイラ男

スピエリッグ兄弟の前作『ジグソウ:ソウ・レガシー』も酷い出来でしたが、この兄弟って実はホラー映画向いてないんじゃないの?と思っちゃいますね。SFを土台としたアクションホラーやサスペンスならかたちになりますが、真正面から恐怖を描くと途端に馬脚を現す。

本作でも恐怖というよりかはドラマ部分へと視点が移動しており、霊や呪いへと立ち向かう人の勇気を過去の因縁と結びつけて描いておるのですが、正直これがそもそもの間違いかな?ゆえに視点がサラではなくエリックへと集中し、何やらトラウマ克服感動譚じみておる。

ウィンチェスター家と因縁浅からぬエリックが、その因縁ゆえに屋敷へと誘われ、自らの過去と対峙し、罪の意識から解放され、ついでにウィンチェスター家と屋敷も救っちゃう、ミイラ取りがミイラになる映画『ウィンチェスターハウス』。

お前の話なんかどうだっていいんだよ!このミイラ取りミイラ男が!と思ったのはボクだけではないと思いますが、最後の最後にちょっとだけ「あれ?」と思ったのですよね。これは確かにミイラ取りミイラ男映画ではあるが、最後のアレはなんだ?と。

狂人たちの妄想の映像化?

屋敷に現れた最強呪い男のスーパーポルターガイストによって屋敷の大半を破壊されながらも、因縁ミイラ男エリックの唐突最強アイテム「あのときの弾丸」によってからくも呪い男を退け、つかの間の平和が訪れたウィンチェスターハウスはめでたしめでたし。

そんなめでたし本編終了後に映し出される非常に簡潔な3つのテロップ。

  • 1906年に起きたサンフランシスコ地震は一帯に甚大な被害をもたらした。
  • サラ・ウィンチェスターはその後も屋敷の増改築を続け1922年に没する。
  • ウィンチェスター邸は北アメリカ有数の呪われた屋敷である。

なんてことない文章ではあるが、注目していただきたいのは最初の一文、「1906年に起きたサンフランシスコ地震は一帯に甚大な被害をもたらした」である。映画に関係あるとは思えない地震の事実をなぜ最後に付け加えなければならないのだろうか?

ここから得られる答えはただひとつ。ウィンチェスターハウス崩壊の原因は地震であり、霊や呪いなどという非科学的な現象はいっさい関係ない!本編で描かれた事象は狂人たちの妄想なのですよ皆さーーん!とかなんとか盛大なちゃぶ台返しを行っているような気が。

つまりはエリックとはサラの妄想に感化された悪い意味でのミイラ取りミイラ男だったと。ド直球びっくりどっきりお化け屋敷映画は世を忍ぶ仮の姿で、その実体は狂人たちの妄想を忠実に映像化してみせたリアリズム映画だったのだ!とかなんとか。

まあだとしても面白くないもんは面白くないので、ボクの評価はまったく変わらんのですけどね。やっぱ実話系の屋敷ホラーって難しいのかな?『悪魔の棲む家』も大概じゃったし。ってあっちもこっちもほぼ「ホラー」ではなく「ホラ」でしたな。ちゃんちゃん♪

個人的評価:3/10点

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