『サスペリア』(2018)感想とイラスト 我こそが唯一絶対のマザーなり

この記事は約16分で読めます。
映画『サスペリア』(2018)ティルダ・スウィントンのイラスト(似顔絵)

極彩色の傑作『サスペリア』を自分色へと染め上げた衒学暗黒ダンスレボリューション『ルカペリア』。もったいぶりぶった社会派にして人体超絶破壊のおかーちゃん映画を自分色に染め上げるのはあなたのお仕事。ルカがそうしたようにあなた自身も怪電波を拾うのです!

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作品情報

サスペリア

  • 原題:Suspiria
  • 製作:2018年/イタリア、アメリカ/152分/R15+
  • 監督:ルカ・グァダニーノ
  • 脚本:デヴィッド・カイガニック
  • 撮影:サヨムプー・ムックディプローム
  • 音楽:トム・ヨーク
  • 出演:ダコタ・ジョンソン/ティルダ・スウィントン/ミア・ゴス/クロエ・グレース・モレッツ/ジェシカ・ハーパー

参考 サスペリア (2018年の映画) – Wikipedia

予告編動画

解説

1977年のベルリン。憧れの世界的舞踏団“マルコス・ダンス・カンパニー”への入団が決まったスージー・バニヨン。カリスマ振付師マダム・ブランの目にも留まり、めきめき頭角を現していくスージーだったが、それは同時に舞踏団に隠された闇へと接近することを意味していた……というオカルトホラーです。

ホラーファンなら言わずと知れたダリオ・アルジェントの傑作『サスペリア』のリメイク作。監督は『胸騒ぎのシチリア』『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ。幼き彼に衝撃を与えた母国の怪作へと捧げる、渾身の自己流再構築映画というわけです。

主演はティッピ・ヘドレンを祖母に、ドン・ジョンソンとメラニー・グリフィスを両親に持つ芸能一家の娘ダコタ・ジョンソン。共演には『オルランド』の頃からのカメレオン俳優ティルダ・スウィントン、『キュア ~禁断の隔離病棟~』のミア・ゴスなど。

『キック・アス』のヒット・ガールで名高いクロエ・グレース・モレッツがほぼ誰だかわからないブヨブヨで、オリジナル『サスペリア』でスージーを演じたジェシカ・ハーパーが面白味のない役どころで出演しておりますよ(魔女をやれよ!魔女を!)。

オリジナル『サスペリア』の感想はこちら

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感想と評価/ネタバレ有

オリジナル『サスペリア』の感想の末文を、「『サスペリア』のリメイクなんてやめときゃいいのに」と身も蓋もない一文で締めくくったあたくし。観る前からこっそりディスりながらそのじつ興味津々であったあたくし。てなわけで公開初日に観てまいりましたよ。

観終わった率直な感想といたしましては、やっぱり「『サスペリア』のリメイクなんてやめときゃいいのに」でありました。悪い意味でも良い意味でもね。『サスペリア』という冠が付いている意味があるのかないのか?別になくても問題はないと思うのですけどね。

骨を取り換え胎を我がものとする

ドイツ赤軍によるテロ活動「ドイツの秋」が吹き荒れる激動の1977年西ベルリン。そんななか、世界的舞踏団“マルコス・ダンス・カンパニー”を抜け出した女性パトリシアが心理療法士クレンペラー博士のもとを訪れ、舞踏団の闇を、魔女の存在を告白して姿を消す。

時を同じくして、アメリカはオハイオからやって来て舞踏団の門を叩いたスージー・バニヨン。オーディションでカリスマ振付師マダム・ブランの目に留まった彼女はめきめき頭角を現すのだが、それは同時に舞踏団の闇へと接近することも意味していたのだった……ってのが簡単なあらすじ。

バレエ団が舞踏団(しかも暗黒!)へと変更されておりますが、アメリカ娘が怪しげな結社の門を叩き、その闇へと接近するというプロットは同様だと言えます。しかしオリジナルを知る者ならば、挙動不審なクロエちゃん演じる新生パトリシアの発言にいきなり面食らったことでしょう。

「あの舞踏団を支配しているのは魔女よ」

え?いきなりそれバラしちゃうの!?まあオリジナル鑑賞済みの者には既知の事実ですので、いまさらそんなところで引っ張られても「知っとるわい!」であり、これは英断であって、新たな伏線であって、オリジナルへの挑戦だとも言えるでしょう。

そう、この作品はリメイクにしてリメイクにあらず。オリジナルを換骨奪胎して新たなルカ・グァダニーノ版『サスペリア』を再構築し、似て非なる神か悪魔か破壊か救済かをこの世へと産み落とした母なる映画だったのです。「だったら『サスペリア』の看板はいらねーよ」とも思いますが。

キリッと眉毛の新生スージー

まず何が違うって、とにかく何から何まで網膜を刺激する原色で彩られた極彩色の迷宮であったオリジナルに対して、本作の色は何から何まで暗く沈んだリアリズム。言うなれば行ったことないけど西ドイツ~って感じ。ここにボクらが迷い込んだ不思議の国は存在しません。

あるのは苛烈な歴史の上にあり今なお政情不安定な当時のドイツの実像。どこかわからない極彩色な不思議の国ではなく、暗い歴史の闇に縛られ分断した現実のドイツ。となるとデタラメの上にデタラメを極めたオリジナルとは異なるアプローチが求められてくるわけですな。

その最たるものが主人公スージーの改変。寝ぼけ眼で極彩色の迷宮をさまよっていたゲジゲジ眉毛の旧スージーでは本作に不適格。ゆえに求められたのは明確な意図と、意思と、目的を有するキリリと一本筋の通った凛々しい眉毛を誇る新たなスージー・バニヨン。

ホラー映画の被害者となる美少女には事件の本筋となんらかの因果がだいたいあるもの。しかし旧『サスペリア』ではありそでなさそで忘れたよんなもの!とものの見事に放り出しておりました。しかし「いや、なんかあるだろ!」といらん深読みをするのが厄介な我ら映画オタク。

旧『サスペリア』のラストでヘラヘラ笑いながらフレームアウトしていくスージーの謎行動に、なんらかの意味を嗅ぎ取ろうと鼻をフガフガヘガヘガさせていた記憶がきっとそこのあなたにもあるはず。そんな鼻フガ野郎のお仲間が本作の監督ルカ・グァダニーノだったのです。

『サスペリア』じゃないけど面白い!

アルジェントが意図していない意味を勝手に受信し、新たな『サスペリア』、というかグァダニーノのなかではより高度に完成された完全版『サスペリア』として全世界に送信してしまった電波系二次創作映画。それがリメイク版『サスペリア』なのだと思います。

ゆえに出来上がった代物は『サスペリア』にして『サスペリア』にあらず。またとんだ勘違い野郎が死屍累々のリメイク墓場へと足を踏み入れよったかい、と一部から袋叩きに遭ったりもしておりますが、「『サスペリア』やなくても面白いやんけ!」というのがまた本作のややこしいところ。

そうなんです。『サスペリア』のリメイクとしては疑問ですが、映画としてはこれがすこぶる面白いのです!同じ難解でも難解の意味が違うのです!デタラメではなくちゃんとした意味があるのです!奇想天外な殺しの美学があるのです!さらには地獄のあとに思わず泣きそうになる救いまで!

まあ意味をちゃんと追いすぎてやや衒学的になりすぎているきらいもあり、無知なボクなんかは一回観た程度では咀嚼しきれない深みと暗喩のオンパレードなのですが、そのペダンチックな上から目線もまた魅力で、バカの頭を絞りに絞って破裂させる快感があるのですよね。

そしてホラーの醍醐味といえばやはり地獄。いかに地獄を現出させるか。正直、本作には言うほどその手のシーンは多くありません。しかし序盤の遠隔必殺するめ固め(byつげ義春)には皆さん我が目を疑うことは必至。なんというキレッキレなひとりするめ固めだ!

そして、最後に満を持して現出する深紅の地獄。これまで抑えていたのはここで真っ赤っ赤へと染め上げるためだったのか!という色彩地獄。そんな地獄のなかで花開く慈悲、解放、救済。確かにこれは『サスペリア』ではない。しかし『サスペリア』ではなくても強烈に面白いじゃねーかよ!

注意

ここから下はネタバレ三昧による謎多きルカ版『サスペリア』の解説、考察を、まったく信憑性のない独自解釈でダラダラと書き綴っていますので、未見でネタバレを嫌う方、または権威による正しい解釈を求める方はどうぞお引き取りを。

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ネタバレ解説してみるよ

『サスペリア』であろうとなかろうと強烈に面白かった『ルカぺリア(ルカのサスペリア)』。ここからはそんな歴史と暗喩とおかーちゃんを内包しながら暗黒に踊り狂い骨をぽ~きぽき首をちょ~んぱっぱする衒学暗黒ダンスレボリューション『ルカペリア』の真実へと、ネタバレ全開で阿呆なりに迫ってみましょう。

ドイツを舞台としながらどこかわからない異空間にしか見えなかった旧『サスペリア』。しかし『ルカペリア』では1977年当時のドイツの実情が物語の重要なキーとして描かれております。先の大戦によるナチスの記憶、分断、ドイツ赤軍によるテロ、いわゆる「ドイツの秋」。

参考 ドイツの秋 – Wikipedia

これらを映画を観るうえでの一般教養だと言わんばかりにサラッと挿入してくるあたり、さすがの上から目線でちょっとぶん殴ってやりたくなります。でもボク同様「なんかそんなことがあったんだよね~」程度でも問題はなし。要は抑圧と分断の空気を感じられればいいのです。

ナチス・ドイツによる忌まわしき記憶。ホロコースト。敗戦。分断。罪悪感。それらはまた形を変え、ふたたびドイツに、世界に抑圧的な不穏な影を落とす。そんな現実的世界観の中央に位置しているのがもうひとつの抑圧された館、マルコス・ダンス・カンパニーなわけです。

魔女の腐敗

そんなもうひとつの抑圧された館はまさに魔女の巣窟。旧『サスペリア』における魔女とは異世界を演出するためのマクガフィンに過ぎず、そこにたいした意味は付与されていなかったと断言してもよいかと思うのですが、『ルカペリア』ではそういうわけにはいきません。

『サスペリア』では描かれていなかった真実までを見通し、実はすべてのデタラメに意味はあったのだと怪電波を受信したグァダニーノ君が、当時のドイツに魔女の館が存在した意味を見逃すはずがありません。そう、魔女の棲む館とは繰り返される抑圧と分断の象徴にほかなりません。

ナチス・ドイツによる抑圧と分断の記憶が、今もなお連綿と続いている魔女の巣窟。本来の魔女とはそういうファシズムから弾圧される自立した女性の暗喩だったとも思うのですが、それが集い、結社化し、長い時間にわたっての独裁体制が敷かれると、常にそこには腐敗が生まれる。

そこで現出するのが歴史上で繰り返される抑圧と分断。最初の彼女たちにはもっと崇高な思想や理念があったのかもしれませんが、長い年月の果てに漂ってくるのは鼻ももげそな腐敗臭。現在の彼女たちの関心事は、結社のボスであるマザー・マルコスの新たな器(身体)問題のみ。

そんな情勢に不満をいだき、マルコス派とブラン派に分かれて実は静かな内部分断も始まっておるのですが、長い年月による腐敗臭はファブリーズ程度じゃどうにもならず、集団は力を持っての抑圧を加速させ、それが内部の分断を、そして個の分断をも生み出していくのです。

スージー改変による血の雨の覚醒

そんな魔女たちによる結社はもはやナチス・ドイツと大差ない。そこで繰り返される抑圧と分断を一挙解決する血の救世主こそが、キリッと眉毛に生まれ変わった新生スージー。

実はスージーも魔女であり!しかも皆がマルコスだと信じて疑わなかった三大魔女の筆頭格「マザー・サスペリオム(嘆きの母)」その人だったのだ!

これが本作最大の改変であり、アルジェントが激怒した理由であり、『サスペリア』から『ルカペリア』へとへんげした瞬間なのです。ゆえに極彩色の迷宮で翻弄される寝ぼけ眼の年齢不詳ではなく、強い意志を感じさせるキリッと眉毛のダコタ・ジョンソンがキャスティングされたのです。

彼女の使命はただひとつ。自分の名を語る偽りのリーダーによって組織された結社がばら撒く、腐敗と、抑圧と、分断を断ち切り、血の雨を降らせることによってすべてを解放、救済するため。これを「アメリカさんがやって来て、ナチスをヒトラーをやっつけて、我らに救いをもたらさん」と解釈するのはやや安易かな?

でもね、スージー改変のネタ自体が物凄く安易だとは思うのです。本作『ルカペリア』は上から目線でもったいぶりぶった「いや~ん♡どゆこと?」演出が売りだとは思うのですが、このスージー改変だけは既定路線で、正直勘のいい人ならかなり早い段階で気づいたのでは?

そういう意味ではあのクライマックスは「ああ~やっぱりね」という、してやったり逆上から目線でニヤリとほくそ笑んだのですが、まさに満を持して降り注ぐ血の雨地獄の美しさには目を、心を奪われ、反射的に「マルコス!」と絶叫してぶしゃぁああぁとなりたい欲求にかられるドM天国。

スージー改変は確かに安易だが、スージー覚醒は変態のパラダイスだった。しかしそんなスージーもまた抑圧の犠牲者。彼女はキリスト教のなかでも前時代的な生活と徹底した平和主義を貫くメノナイトの家庭に生まれ、その普通さを異端として母から抑圧され続けていたのだ。

参考 メノナイト – Wikipedia

スージーは最初から魔女だったのだろうか?いわゆる「魔女」を作り出すのはいつも抑圧された社会ではないか。彼女もまたその犠牲者のひとりだったのかもしれない。考えてみればキリスト教の歴史も抑圧と分断の繰り返し。それが異端を、魔女を、悪魔を、神を生み出すのだ。

グレートマザー

覚醒したスージーが地獄の底から黒光りした「死」そのもののような何者かを召喚し、腐敗しきった抑圧者どもを粛清し、盛大な血の雨を降らせ、人生を蹂躙された犠牲者たちに死という名の救いを与える光景は、悪魔であり神でもありそして母のようにも映ります。

覚醒スージーがふぅあぁぁあうめりめりめりとご開陳した胸の割れ目は女性器そのもの。死を司るということはイコール生も司っているわけで、このシーンは彼女の出産を表しているのかもしれません。生と死が交錯する出産。母になる瞬間。ゆえに何やら感動的。

冒頭のテロップ、「母はあらゆる者の代わりにはなれるが、何者も母の代わりにはなれない」の意味がここで判明します。子供を抑圧という名の支配下に置く毒母をその手で亡き者にし、この世界に唯一絶対である真正マザーとして君臨する、自分と娘を同時に出産したかのような奇怪かつ感動的に美しくも残酷な名シーン。

彼女が先天的、もしくは後天的に魔女であったのかは判断がつきかねますが、この深紅のサバトによって抑圧から、呪縛から解き放たれたのは間違いありません。腐敗した魔女を、その犠牲者を、そして自分を血まみれの出産劇によって抑圧から解放した真正マザーの聖と毒。

母の二面性とえばユングのグレートマザーなんかを思い出しますが、そういえばクレンペラー博士の部屋にユングの著書が置いてありましたな。『ルカペリア』とは母なるものの聖と毒を描いたおかーちゃん映画だったのかもしれません。ゆえにアレは出産の痛みと苦しみと喜びなのだ。

もったいぶり男節全開ラスト

覚醒したスージーこと真正マザーによって行われた、粛清と出産の血の雨サバトが終焉した翌朝、マザーの許しを得て生存した教師たちは血と肉と臓物を掃除し、生徒たちはまるで何事もなかったかのように新たな朝を迎えます(でもその顔には生まれ出た証として血の跡が)。

抑圧者である毒親を成敗し、唯一絶対なる真正マザー・サスぺリオムとして新世界の頂点に君臨するスージー……ってところで本作『ルカペリア』が終わっても良かったとは思うのですが、もったいぶった衒学野郎グァダニーノはもうひとつふたつもったいぶりぶって本作を締めくくります。

本作の探偵役であり、ナチス・ドイツによるホロコーストの犠牲者として抑圧され、分断され、生涯消えない罪悪感を植えつけられたクレンペラー博士(ティルダ・スウィントン2役目)。彼が生涯抱えた「妻の行方」という罪の念に解答を与え、ある種の救いをもたらすマザー。

「あなたにはもう恥も罪悪感も必要ない」として博士の記憶を消し去る彼女。これはマザーの慈悲のようであり、博士の救済のようであり、とことん残酷な仕打ちのようにも思えます。神か悪魔か聖か毒かよサスペリオム。これが何を意味するのか、正直いまのボクにはよくわかりません。

恥も罪悪感も必要ない、ついでに記憶も必要ない人間をはたして人間と呼べるのか?悪い記憶には常に良い記憶も付随しているもの。妻アンケの記憶すべてを奪われた博士にいったい何が残るというのだろう?これは救いなのか?それとも新たな罰なのか?ボクにはやっぱりわかりません。

時は流れて現代。暗鬱な雲は消え去り、暖かな陽光が降り注ぐなか、映し出されるのは旧クレンペラー家の壁に刻まれたハートのなかの「A」と「J」。つまりは妻「アンケ」と夫「ヨーゼフ」。しかし壁の角へと刻印されたこのイニシャルはお互いを確認することができず、いまだ分断されたままのようにも見えます。

そしてエンドロールの最中に挿入される意味深なスージーのカット。ここに来てもったいぶり男節が全開に!正直よくわかりません。よくわかりませんが、これがグレートマザーの映画だったとするならば、ここに我々の自立へのステップが隠されているのやもしれませんね。

どうぞあなたの『サスペリア』を

最後にひときわもったいぶりぶって観客をけむに巻くスタイル。ここに至ってようやく『ルカペリア』は『サスペリア』のリメイクとしての本分を思い出したのかもしれない。『サスペリア』とはスージーの謎のヘラヘラで終わるべき映画だというある意味大正解。

散々「『サスペリア』のリメイクとしては如何なものか?」と疑問を呈してきましたが、うん、これはこれでアリなんじゃない?こういうのもまたひとつのリメイクのかたち。同じことしたところでオリジナルが偉大すぎて超えられるわきゃないんだもんね。

アルジェントが激怒する理由もわかるけど、自分の作品を餌に拡大解釈した二次創作映画として許してあげなさいよ。衒学的もったいぶり男節は置いといて、血と肉と臓物が飛び交う骨がぽ~きぽき首がちょ~んぱっぱする暗黒ダンスレボリューションとして強烈に面白いのは事実なのだから。

とりわけ超絶クロスカッティング地獄のアングル巡りによってビシビシゴキゴキ描出される、遠隔必殺するめ固め(byつげ義春)なんて最高だったでしょう?本作の助演女優賞はその肉体を極限までするめ化したオルガことエレナ・フォキーナ嬢で間違いなし!

主演女優・男優・怪物賞はやっぱティルダ・スウィントン女史で確定。最後の3役目は公式には明かされてないけど、もうアレで間違いないっしょ!地獄の底から這い上がってくる「死」そのもの。ティルダに映画のすべてを委ねる監督の甘えっぷりが笑えます。

反省の弁

と思ってたら大外れ。ティルダの3役目はヘレナ・マルコスだった模様。っていうか本作のマルコスはグラサンかけたジャバ・ザ・ハット的安易な醜悪さで、いまいち記憶に残らなかったんだよなぁ……と見苦しい言い訳をしておきます。

参考 【ネタバレ】『サスペリア』ティルダ・スウィントン、一人三役の意味とは ─ 配役に隠された秘密、特殊メイクの裏側 – THE RIVER

ほかにも建物と交接しているかのような儀式的、生贄的、キレッキレ暗黒舞踏の怪しさ。そんな生贄ダンサーたちが穿くベージュのおパンツのまぶしさ。クロエ崩壊。全開百合劇場。博士のイチモツ。満を持して紅血へと真っ赤っ赤に染め上げられたクライマックス。

リメイクとして、上から衒学もったいぶり男として、確かに問題も多い映画だとは思うのですが、ボクは本作『ルカペリア』を『サスペリア』同様に支持します。『サスペリア』同様この『ルカペリア』も中毒性がある必殺するめ映画だったわけですし(なんせ情報量が多すぎ)。

てなところで、長々ダラダラと書き綴ってきた『ルカペリア』改めリメイク版『サスペリア』の感想もこれにて終了。多分にルカ的な妄想、電波の入った独自解釈のこじつけだと思いますので、どうぞ信用しないように。ルカ同様あなた自身の『サスペリア』をどうぞ作り出してくださいな。

最後に、「ホラー映画じゃないよね~」なんて声も耳にしますが、ボクは十二分にホラーしていたと思いますよ。何より怖かったのが夜中に全力疾走で「てめぇこの野郎こっち来い!」と詰め寄ってくるババア。あんなに怖いものはない。ババアの全力疾走ほど怖いものはない。

そりゃもう詰め寄られた男は「さーせん!さーせん!ホンマさーせん!」と平に平謝り、土下座で許しを請うしかすべはありません。げに恐ろしきは全力疾走のババアなり……。

個人的評価:7/10点

DVD&Blu-ray

VOD・動画配信

『サスペリア』(2018)が定額見放題なおすすめ動画配信サービスはプライム・ビデオ(2020年2月現在。最新の配信状況はAmazonのサイトにてご確認ください)。

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ホラー映画好きにおすすめ

ホラー
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スパイクロッド

映画を観たらとりあえず感想とイラストを書く(描く)人畜無害な釘バット。ちなみにイラストはぺんてるの筆ペン一本によるアナログ描き。

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コメント

  1. 匿名 より:

    どーせ顔ブシャーするなら「マルコスサイコー!」と煽りまくって散りたいもんです(笑)

    • 匿名さん、コメントありがとうございます!

      あんな芸術的に凄惨な最期を迎えられるのならボクはもう本望です(笑)。ハイル・マルコスー!(危ない危ない)

  2. ボンドレイク より:

     いやいやあ、中々圧倒的なモノでしたね。 ラストのDeepRedなダンスレボリューション! あれは凄まじかったですよね!

     私が最初ルカペリア(笑)を観たときは ただ単に “真のマザーサスペリオムが偽のリーダー率いる魔女集団へ殴り込む”程度にしこ解釈できませんでした。 
     あとから色々解説を読んだりしてみてやっと理解できたのですが
     
     上から目線すぎてわかりにくい!

     それにしてもあの全力疾走ババアは怖かったですよね。あれはそ
    ゾワッとしました。
     

    • ボンドレイクさん、コメントありがとうございます!返信が遅くなってしまって申し訳ありません。

      『サスペリア』のリメイクです、と言われると「むむむ」となりますが、『サスペリア』を基に勝手気ままに膨らまして引き延ばして遊び呆けた『ルカペリア』です、としてなら「ブラボー!」となるなかなか評価の難しい作品でしたね。『サスペリア』の適当さにいちいち意味を付けるとこうなるのか~って感じです。それをあくまで上から目線で描いているところも、意味不明な難解さとちゃんと意味がある難解さの棲み分けがなされており、けっこうルカ・グァダニーノは計算高いお人なのかも?

      しっかしあの全力疾走ババア詰め寄り引きずり回しの刑は怖かったですよね!

  3. おーい生茶 より:

    見る気が無かったのですがババアに期待して鑑賞しました。

    僕の見たいババアじゃなかったですね。
    ババアはアップ顔が映えると思います。
    シワだらけだったり厚化粧だったり。

    本作は謎が多すぎます。
    ホラーでなくミステリー系でいまいちでした。
    ひとり変死シーンも物足りなかったですね。
    やるなら集団ババアの変死。ホラーやるならこれですよ、はい。
    クライマックスの地獄シーンもハマらなかったです。

    アルジェント監督の偉大さを再確認した点が収穫ですね。

    • おーい生茶さん、コメントありがとうございます!

      ボクはけっこうあのババアは好きでしたけどね。ホラーというかミステリー、それも解答を明確にはしないシネフィル御用達映画のような感じは確かに賛否あるでしょうが、これまたボクはけっこう好きなほうです。この頃のアルジェントは確かに偉大ですが、それとはまた違った『サスペリア』、要するに『ルカペリア』を目指したのでしょうね(だったらリメイクなんて言うなよ!とは思いますが…)。