『クリムゾン・ピーク』感想とイラスト クリムゾンの宮殿

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映画『クリムゾン・ピーク』ミア・ワシコウスカのイラスト(似顔絵)
「デル・トロ史上、最高に美しい映画」。確かに映像は美しい。しかしそこで繰り広げられる紅はなんだ!?この紅血こそデル・トロが描きたかった世界。デ~ンデレレッデッデ~ン♪

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作品情報

『クリムゾン・ピーク』
Crimson Peak

  • 2015年/アメリカ/119分/R15+
  • 監督:ギレルモ・デル・トロ
  • 脚本:ギレルモ・デル・トロ/マシュー・ロビンス
  • 撮影:ダン・ローストセン
  • 音楽:フェルナンド・ベラスケス
  • 出演:ミア・ワシコウスカ/トム・ヒドルストン/ジェシカ・チャステイン/チャーリー・ハナム

参考 クリムゾン・ピーク – Wikipedia

予告編動画

解説

幽霊はいつもなぞなぞみたいなことしか忠告してくれないので聞いた人間はえらく苦労しますよ、というゴシックホラーです。

監督はボクが愛する『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロ先生。主演は『マップ・トゥ・ザ・スターズ』のミア・ワシコウスカ。共演に『キングコング:髑髏島の巨神』のトム・ヒドルストン、『IT/イット THE END “それ”が見えたら終わり。』のジェシカ・チャステイン、『キング・アーサー』のチャーリー・ハナムなど。

あらすじ

20世紀初頭。10歳で母親をコレラで失ったイーディス(ミア・ワシコウスカ)は、幽霊となって現れた母から「クリムゾン・ピークに気をつけなさい」という謎の警告を受ける。

美しく成長したイーディスは、ある日イギリスからやって来た準男爵トーマス・シャープ(トム・ヒドルストン)と出会い、恋におちる。しかしそんな折、イーディスの父が不可解な死を遂げ、莫大な遺産を相続したイーディスはトーマスと結婚してイギリスで暮らすことに。

冬になると地表に露出した赤粘土が雪を赤く染める山頂の屋敷で、トーマスの姉ルシール(ジェシカ・チャステイン)を含めた3人で暮らすことになったイーディス。しかしここでも彼女の前に幽霊が現れこう告げるのであった。「クリムゾン・ピークには気をつけろ」と……。

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感想と評価/ネタバレ多少

我らが愛すべきデル・トロ先生、待望の新作。本来なら公開直後に馳せ参じたかったものの、上映館数が少なく遠出を余儀なくされたため、2週間遅れでの鑑賞となりました。まだまだここ日本ではデル・トロに対する扱いが冷淡!

ちなみにこれまた上映館数が少ない『イット・フォローズ』とのハシゴをしてきました。貴重な有給を使っての『クリムゾン・ピーク』と『イット・フォローズ』の2本立て。なんという濃ゆい1日だろうか!

デル・トロ史上、最高に美しい映画!

デル・トロ自ら「自分史上、最も美しい映画」と自画自賛しているとおり、その緻密に作り込まれた圧巻の映像美にはただただ見惚れてしまいます。

美しさと不気味さと退廃のコラボレート。監督のゴシック趣味全開である美と死と闇が同居した見事な世界観。とりわけクリムゾン・ピークの宮殿へと舞台が移動してからの凝りようは常軌を逸しております!

広大でありながら今にも崩れ落ちそうな廃墟同然の屋敷。その真ん中にポッカリと開いた穴。キャラクターの性格やそのときの心情にまで配慮した豪華絢爛な衣装の数々。どこか武骨なむき出しの機械や小道具たち。虫。そしてクリムゾン(紅)!

白と青と黒のなかにひときわ映える深紅(クリムゾン)!ゴシックホラー、もしくはゴシックロマンス的世界観を切り裂く鮮烈なる紅!実はこれこそがデル・トロの求めた主題ではなかったかとボクは思っております。

ひたすらなが~いメロドラマ

しかしそういうこだわりの美術、映像、世界観に比して、なんたる物語の貧弱さだろうか!完全なるメロドラマです。いやメロドラマが悪いってわけではないのだけど、それにしてもあまりに類型的すぎやしませんか?

だいたいクリムゾン・ピークの宮殿へと舞台が移るまでの前フリが長い長い!映画のおよそ半分を費やして古臭いメロドラマをやっており、これが後半の伏線として大事なのだということは理解できるものの、正直ぬるすぎて眠たくなっちゃいましたわ。

ここでの見どころは、ゴシックミステリーとしての物語の起点がほぼジャッロと化していたことぐらいですな。標的に忍び寄る黒い影。皮手袋。そしてガンゴン叩きつけられるイタタタ残酷描写。

あれ?ダリオ・アルジェントの『サスペリアPART2』かいな?な~んて思っていたら後半でまさかの古風なエレベーターまで登場!でも残念ながらチョンパは自重ですよ自重。たぶん考えたはずですけどね。

クリムゾンの世界

ゴシックホラー、ゴシックミステリー、ゴシックロマンスとして非常に類型的なこの映画。映像の美しさは確かに過去最高かもしれないが、物語や恐怖描写がこんなにベタベタではたしてよいものか?

しかしそこはさすがにギレルモ・デル・トロ大先生さま。このベタベタさこそがある意味における伏線だったとも考えられます。そこで活きてくるのが前述いたしました紅(クリムゾン)なわけですな。

類型的なゴシック調を切り裂くひたすら紅い世界。慣例に反して幽霊までとにかく紅くて生々しい。そしてゴシックロマンスを突き破る深紅の鮮血ほとばしる血祭りバトル。なるほど、これがやりたかったのかデル・トロは!

正直、後半の超人的展開はツッコミどころ満載ではありますが、4人の男女が黒と白の世界で繰り広げる深紅の狂乱劇のバカバカしさはある意味痛快です!これぞクリムゾン・キング!いやさキング・クリムゾン!RED!

娯楽と芸術のはざまで

要約するとげに恐ろしきは人間の情念である、と。そういう意味では幽霊うんぬんは狂言回しにしかすぎず、雰囲気づくりとなぞなぞ出題係だったわけですな。おや?なんかデル・トロの傑作ホラー『デビルズ・バックボーン』と似てますな。

では『デビルズ・バックボーン』や『パンズ・ラビリンス』の系譜の映画なのでしょうか?この2本は最もデル・トロらしい作品だとボクは思っておるのですけど、残念ながらこの『クリムゾン・ピーク』は違うと思います。

デル・トロ監督作にはふたつの傾向があると思っていまして、パーソナルな面が色濃く反映された芸術的作品と、雇われ監督としてオタクの遊び心を爆裂させた娯楽作品。この『クリムゾン・ピーク』はちょうどその中間に位置するような気がします。

ゆえにちょっと中途半端だったというのが正直な評価でして、本当にデル・トロはこの作品をやりたかったのかな?という疑問が多少残ります。それはこの映画のエンドロールにちょっと表れているような気が。

ちょびっとネタバレ

作家志望の主人公イーディスが今回の事件を本としてまとめていたという事実が、エンドロールの最後に示されています。

幽霊が出てくる怪奇小説を書きたかったのに、編集者からはラブロマンスを書くように注文されていたイーディス。彼女が今回の奇妙な体験を通して書き上げた処女小説が、この『クリムゾン・ピーク』だったというわけです。

この意味は「カゲヒナタのレビュー」のヒナタカ氏の記事でも言及されておりますが、やはりメタフィクションだとボクも思います。

参考 『クリムゾン・ピーク』デル・トロ流の火サス劇場だった(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー) | カゲヒナタの映画レビューブログ

デル・トロ自身はこの映画をゴリゴリのゴシックホラーにしたかったはずなのに、多方面からの圧力でロマンスを前面に押し出し、それでもこらえきれずに鮮烈なる紅が爆発し、何やらとっ散らかった映画へと仕上がってしまった。

それに対する後悔と反省と言い訳の表れだったのではないか?というのはボクのゲスの勘繰りなのでしょうか?でもデル・トロはしばしばスタジオ側と方針をめぐって衝突しておりますので、あながち間違ってもいないような気が。

ところでH・P・ラヴクラフトの『狂気の山脈にて』の映画化はどうなったのでしょう?ラブロマンスもハッピーエンドもなくていいから、絶対に作ってくださいよ、デル・トロ先生!

個人的評価:6/10点

DVD&Blu-ray

VOD・動画配信

『クリムゾン・ピーク』が観られる動画配信サービスは、、。おすすめは定額見放題のdTV(2018年12月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください)。

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コメント

  1. らびッと より:

    宮崎でも2月末から2週間限定で公開されることになりました。
    予定が合えば観に行こうと思っています。
    全国的にも遅れて公開される劇場が多いみたいですね。
    本当は前売り特典のポスターが欲しかったのですが、それはまあ良しとします。
    また観てから、こちらは読ませて頂きますね。

  2. スパイクロッド より:

    らびっとさんこちらにもコメントありがとうございます!
    おお!時期はずれてしまいましたが素晴らしいことです!ぜひとも観に行ってください。けっこう好みが分かれる映画だとは思いますが、とりあえず観て損はないですよ。

  3. らびッと より:

    昨日、公開最終日に観てきました。
    レイトショーでスクリーンが空いてたのか大きい1番スクリーンでの上映という嬉しい誤算。
    それで、映画はどうだったかというと内容が思っていたよりかなり地味..。
    ヘルボーイやパンズ・ラビリンス、パシフィック・リムなどを見せられていたので流石に物足りなさを感じました。
    そこがメインではない作品だったのですが、もっと幽霊見たかったなー、もっと怖がらせてほしかったなーというのが正直な感想です。
    でも、この映像美、特に美術や衣装などの美しさは本当に見惚れるほどだったので、これを映画館で堪能できただけでも十分満足でした。

  4. スパイクロッド より:

    らびッとさんコメントありがとうございます!
    そうなんですよねぇ。過去の傑作群を想像してしまうと確かに肩透かしを喰らうかもしれません。ボクも「なんだ!?この地味で古臭いドラマは!?」と思ってしまいましたから(笑)。でも「デル・トロ史上最高に美しい映画」と形容されているとおり、映像と美術の美しさに関しては文句なしなのですよね。それとそんな美しさのなかで繰り広げられる血みどろバトル(笑)。

  5. ギレルモ・デル・トロ作品相変わらず美しいですね!
    内容はありがちなんですけど、雰囲気だ大好きです(*‘∀‘)
    『イット・フォローズ』も観に行ったんですね、未見です。来月のレンタル開始を楽しみにしています。

  6. スパイクロッド より:

    いごっそう612さんコメントありがとうございます!
    凄惨なる“紅”を覆い隠すゴシック的美しさ。どちらがデル・トロの本質かと問われれば、ボクは迷わず“紅”だと答えます。そういう意味ではデル・トロらしいようならしくないような、少々中途半端な作品だったのが残念でしたね。嫌いじゃないんですけど。転じて『イット・フォローズ』は文句なしのおすすめです!ボクも再見する予定であります。

  7. OGAWATORY より:

    こんにちは!貴重な御感想、とても参考になります!
    私も今日CRIMSON PEAKを観てみました。
    皆様が仰るように、ストーリーよりも映像美を楽しむと云った映画でしたね。
    鍵束や茶器、ドアノブの装飾など。
    美術芸術に携わる方なら、本作には沢山のヒントが散りばめられているのではないでしょうかね!?

    • スパイクロッドスパイクロッド より:

      OGAWATORYさん、コメントありがとうございます!

      「デル・トロ史上最高の美しさ!」と喧伝されていた作品ですので、やはり映像美には一見の価値があると思います。ただ凡庸なドラマを覆い隠してしまうほどのパワーは残念ながらありませんでしたよね。まあ嫌いじゃないんですけど。勢い余って血みどろに振りきれてしまうところとか(笑)。